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盛田 諒の「ほぼほぼ育児」第16回

がんばらない子育て 50年前の本に救われる

2019年08月02日 11時00分更新

文● 盛田 諒(Ryo Morita)

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 2歳児くんの保護者をしています盛田 諒ですこんにちは。猛暑続きで子どもがカゼをひきました。ちょうど出張帰りのタイミングだったので若干無理をすることになり、こっちも鼻をぐずらせることになりました。なぜ大変なときに大変なことが重なるんですかね。ハッもしや神棚のお供えを交換していないから……。

 こうして育児に疲れたとき励みになるのが松田道雄先生の「育児の百科」。月齢にしたがって育児のコツと心得をまとめた本で「がんばらない子育て」の元祖といえる内容です。1967年刊行なのですがいま読んでも通用する中身で驚きます。初めて読んだのはつい最近。「さすがに50年前じゃ医学知識は古いだろうし」と敬遠していたわたしはおろかでした。もっと早く読めばよかった。

●離乳がむずかしいというのは偏見

 「がんばらない」の一例が、育児雑誌でよく特集が組まれる離乳食。月齢にあわせた食材や調理法が紹介されて難しく見えますが、松田先生は離乳食が難しいというのは偏見だとばっさり切り捨てます。「離乳食だからといって、特別の料理をつくらねばならないと、かたくるしくかんがえることはない。育児雑誌で離乳食献立の特集号をだすので、母親は離乳食を特別なものと思ってしまうのだ」

 最近では「写真映えするかわいい離乳食」などと言ってテーブルコーディネートをするような特集も見かけます。50年前と同じことをしてるわけですね。見映えがいいほうが売れるのかもしれませんが、親の悩みも同じだけ増えます。

 先生はベビーフードにも賛成です。理由は離乳はむずかしいという偏見から解放されるため、無菌状態で作られているため、そして調理時間をほかの育児にあてられるため。ただし本来ベビーフードより、おとなの食べているものを子どもにあたえることで離乳食にするのがいいとすすめます。「でも子どもにあげられないものも多いからなあ」と思っていると、やはりばっさり切られました。

 「上手な離乳は、なるべく、おとなのためにつくったものの一部を利用していくことである。両親の食事が洋風、中華風で香辛料や油脂のはいっているものばかりというときは、両親の食生活そのものの反省が必要だ。それは高血圧と動脈硬化をつくる実験をしているようなものだ」……反省します。

●夫は主夫にならなければならぬ

 また新しいと驚かされたのは父親についての一節。「父親になった人に」は、赤ちゃんが生まれた人にコピーしてさしあげたいくらいです。

 「君は年々200人の母親が子殺しをすることを知っているか。彼女たちは簡単に『育児ノイローゼ』といわれるが、実は核家族時代の犠牲なのだ。育児という重労働を、ひとりでいままでの家事のほかにやらなければならないのだから、女の一生でいちばん骨の折れる時代だ。(略)子殺しをした母親のおおくが、育児に協力しない夫をもっていた」

 その上で「骨の折れる育児には君も力を貸さねばならぬ。子どもがあらわれなかったころの亭主関白はつづけられない」と、男性の家庭参加をうながします。さらに会社を産休などで休むことについてもふれ、「時代がかわったという認識をまずもたないといけない。出産で男が仕事を休むなどとはという古い世代の軽蔑に耐えるには、この認識が必要だ」といいます。

 「若い夫婦だけで家庭をつくっていて、一方がうごけなくなったら、残っているほうが手伝うしかない。出産のために妻を病院に送りこむ仕事がすんだら、夫は主夫にならなければならぬ。日常生活のあるじには、労力も知力もいることを、そこであらためて知るだろう」

 さすがに男性育休にはふれていませんがここまでいわれているのは驚きでした。母親だけが家事育児をしょいこんでがんばる必要はないというわけです。

 わたし自身は2年前、2ヵ月間の育休を取得した数少ない人間の一人です。当時の男性育休取得率はわずか3%程度でした。平成29年度にはやっと5.14%まで上昇し、永田町では男性育休義務化の動きも出てきています。50年ごしでようやく社会が少しずつ動きはじめたのかもしれないと感じます。

●よけいな情報に混乱させられない

 共働きについても記載が多く、わが家のような共働き家庭も声援をもらえます。

 「共ばたらきが、子どもにとって有害なのではない。はたらくことに自信をもたないで、家にいたほうがいいのではなかろうかという疑惑の態度で、子どもをそだてることがよくないのだ。共ばたらき家庭でも父親と母親とが力をあわせて、保母さんと協力してやっていけば、子どもは立派にそだつ」

 一方で、どんなに短くても家族だんらんの時間をもたなければならないという記載にはどきりとさせられるところもありました。

 「親が家庭に仕事をもってかえってきて、子どもを早くねかすことばかりかんがえていては、いけない。たとえ短い時間でも、みんながそろって楽しめば、子どもは親とのつながりを失わない。自分は両親に心から愛されているという自信が、子どもを保育園でさみしがらせず、自立へのはげましとなる」

 とはいえ、これだけ必ずおぼえておけば、あとはへんに考えすぎたり、やりすぎたりしないでよいという、あたたかいメッセージが本全体にこもっています。雑誌やネットの情報は、不安をあおったり、これが流行だとはやしたてて注目を集めようとすることも多いですが、「育児の百科」に書かれるように、本質はとてもシンプルなものなのだと思います。よけいな情報に混乱させられないことも「がんばらない育児」の大きな部分なのかもしれません。盛田 諒でした。





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