合体型スマホは未来を先取りすぎていた
ROG Phone IIの発表会で台湾に行った際、台北電脳街「八徳路」にあるITショップの処分セールで、ASUSの「PadFone mini」の新品未開封品を発見して買ってしまいました。発表は2013年末で今から約5年半も前の製品です。スペックはCPUがSnapdragon 400、通信方式も3Gのみと時代を感じさせます。価格は約1万3000円でした。
今やZenFoneシリーズがASUSのスマートフォンの顔となっていますが、ZenFone登場前には合体式Android端末として「スマホ+タブレット」となるPadFone、また「タブレット+キーボード」のTransformerシリーズを展開していました。大手メーカーが市場で存在感を示す中、合体式で風穴を開けようとしたのです。
PadFoneはスマートフォン本体と、それを合体させるタブレットのベースステーションのセットで性能を発揮します。しかし、両者を合わせると価格はそれなりになってしまいますし、いつ使うかわからない大型のタブレット部分を常にかばんに入れて持ち運ぶのも面倒なもの。スマートフォンとタブレットを別々に買うよりは安かったのでしょうが、そこまでして2つのサイズの画面を持ち運ぶ必要性のある人は少なかったと思われます。
PadFoneは当初、タブレット側が10型クラスで登場しましたが、今回入手したPadFone miniはミニとつけられたように、スマートフォンは4.3型、タブレットは7型となります。これくらいの大きさならば小さいバッグの中に入れておくことも無理ではないでしょう。買ったモデルはピンク色で女性をターゲットにしたものでした。
4.3型のスマートフォンは当時としては一般的な大きさで、普段使いするには十分。片手でもラクに持てる大きさです。とはいえ、解像度が800×480ドットではちょっと大きいウェブページを表示するのに実力不足。また、動画を見たいときなどは不満が出そうです。そこでタブレットスタイルへの変形の意味が出てくるわけです。
タブレットステーションの背面にPadFoneを装着すると、7型(1280×720ドット)ディスプレーのタブレットとして使えるわけです。この大きさなら電子書籍を読むのも快適ですし、ちょっとしたオフィス作業をこなすこともできるでしょう。公私どちらでも便利に使えるタブレットに変身するわけです。
PadFoneが優れていたのは、両者を合体する際に切り替えスイッチなどは不要でそのまま画面が切り替わること。気軽に抜き差ししてディスプレーサイズを変更できます。また、スマートフォンのバッテリーサイズは1500mAhとやや少ないのですが、タブレット側には2200mAhの大容量バッテリーも搭載されているため、合計3700mAhとなります。これなら1日使い続けることもできるでしょう。
こんなに便利な製品ですが、当時のスマートフォンサービスを考えると、今ほど「なんでもスマホでできる」時代ではありませんでした。通信回線も3Gのみ対応では動画を見るにはやや遅く(当時は通信料金も高めでした)、せっかくのハードウェアを生かし切れる状況ではなかったのです。電子書籍を読むならこのころから1万円程度でアマゾンの「Kindle」がありましたから、「iPhone + Kindle」という組み合わせのほうが便利だったかもしれません。
さらには2014年6月、COMPUTEX TAIPEI 2014で「ZenFone 5」(2014年モデル)が発表されると、ZenFoneブームが世界中に巻き起こります。ZenFoneのヒットを受けASUSのAndroid端末はタブレットも「Zen」の名前を付けたZenPadに変更されました。そのあおりでスマートフォンとタブレットの合いの子となるPadFoneは静かに消えていったのです。日本では4.7型スマートフォン+10.1型タブレットステーションの「PadFone 2」が発売されましたが、8万円近い価格で購入する層は少なかったでしょう。
この連載の記事
- 第780回
スマホ
AQUOS R9 proのカメラ周りをドレスアップ! フィルター装着で広がるスマホの楽しみ方 - 第729回
スマホ
激薄折りたたみ「Galaxy Z Fold Special Edition」のケース3種類を試す - 第728回
スマホ
Xiaomi 14Tにフィルター装着できるMagSafeケース、香港の予約特典に登場 - 第727回
スマホ
Galaxyの2025年モデルがいよいよ登場「Galaxy A16 5G」が販売開始 - 第726回
スマホ
1700万円のシャオミ製スーパースポーツEV「SU7 Ultra」を広州モーターショーで見た - 第725回
スマホ
この冬一番の注目スマホ、超薄型折りたたみの「心系天下W25」がサムスンから登場 - 第724回
スマホ
駅名ごとGalaxy! クアラルンプールの「Samsung Galaxy駅」がスゴすぎた! - 第723回
スマホ
レトロデザインが可愛すぎる!? Nokiaケータイ風リュックの良さを知ってほしい! - 第722回
スマホ
iPhone 16発売直後の深セン、中国でも中古買い取りショップと転売が盛況 - 第721回
スマホ
日本と変わらぬ熱気がスゴイ! 中国・深セン版「ポタフェス」に行った
この記事の編集者は以下の記事もオススメしています
-
スマホ
山根博士の海外モバイル通信 -
ASCII倶楽部
スマホメーカー栄枯盛衰~山根博士の携帯大辞典<目次>