カメラグランプリ2019の審査結果が発表となり、グランプリ=大賞を受賞したのが、パナソニックの「LUMIX S1R」なのだ.つまり、2018年度に発売となった全カメラの中で、プロカメラマンやカメラ雑誌編集者が投票を行って、ガチの合計点数勝負で1位になったのだ.
昨年までの流れとしては、2015がEOS 7D II、2016がソニーα7R II、2017がオリンパスOM-D E-M1IIそして昨年がソニーα9ということで、今年のS1R受賞によって4年連続で「ミラーレス一眼」が1位という時代がやってきた.
初号機がグランプリって
どんだけ力入ってるんですか??
この流れをみてわかるとおり、過去の大賞カメラはどれもゆるぎない基盤を構築したシリーズの最新モデルであり、2世代目のモデルが多いのもそのためである.
がしか~し、今回のS1Rはシリーズとしては初号機だ.パナソニックはもちろん世界で初めてマイクロフォーサーズの「ミラーレス一眼」を発売したメーカーであり、なのでミラーレスの親玉ではあるのだが、こと「フルサイズ」については初めてのカメラであり、レンズもまだ3本しかないシステムが大賞をとったのがスゴいのである.
ちなみに今回のカメラグランプリは大混戦だった.ニコン「Z」にキヤノンの「EOS R」という、こちらはすでにフルサイズの一眼レフメーカーとしては2大巨頭だが、ことミラーレスに関しては初めてのシリーズだったわけで、パナソニックを入れた3メーカーのまさに三つ巴の闘いだったのである.
かくして、「ASCIIおカメラ部」の部長にして、40年間あらゆるカメラを買い続けてきた私は、S1Rを購入した.最近は、旅行も仕事もブツ撮りも、コンパクトカメラとスマホで済ませていたオレが、フルサイズ・ミラーレス一眼に刺激されてしまったのだ.
これぞカメラ好きのための1台
さわったら買わずにいられいない
LUMIX Sシリーズは、もちろん発表会や体験会で説明やタッチアンドトライはしていたのだが、ようやく3月後半にセットを借りて、パワーレビュアーの岡田カメラマンといっしょに撮りまくったのである.
編集部で箱を見たときのオドロキはまず箱から始まる.大きい.大きすぎる.フツー、最上位の一眼レフであっても、カメラの箱というものはせいぜい20センチ立方くらいである.S1Rの箱は36×23×16センチもある.いったいなにごとなのかと.
開けてみてわかったのだが、標準ズームの24-105ミリまで入った箱だったのだ.それにしても大きいのである.大きなツヅラを欲しがるのはダメなおじいさんと決まっているのだが、大きいことはいいことなのである.なんといっても「買ってやったぞ」感の高まりをさらに押し上げてくれるのだ.
グリップ感にうっとり
EVFに惚れた
自分は、古くはキヤノンのNew F1にグリップストロボで取材をはじめ、T90からEOS、そしてGRやIXY、CONTAXはAXからN1、T、G1に645も買った.デジタルはカシオから始まりソニーのR1を2台買ったり、α7デジタルからα900、NEX5、LUMIXはLC1、LX全機種、GとGHを交互になめつつ、TX2とXperiaで取材という流れである.こうして書くと、結局コンタックスとライカのレンズに弱いというポイントが浮き彫りになっている.
そんな自分が、おちついて編集部でS1Rを手にした感想は「ひさしぶりのカメラの実感」である.まさにこれぞカメラを手にしたというキモチだ.もちろん、レンズと合わせて1.6キロというズッシリ感もあるが、グリップをにぎった感覚が、おおカメラっていいよね~なのである.やはりカメラは手触りが命なのである.
そしてファインダーの視度調節をして(みんなちゃんとやろうね)から、改めてのぞいたEVFの明るさと画像のキレのよさにびびる.あまり数字で感覚を変えたくないのだが、576万画素の有機ELでレートは120Hzでアイポイント21ミリの威力なのである.やはりカメラはファインダーが命なのである.
カメラ好きならぜったいこの
シャッター音に泣く
そして、シャッターを押したときの「サウンド」がまたいいのだ.失礼ながらαやEOSとは一線を画すというか次元が違う.ニコン様の最上位モデルの感動に近い.
シャッター音そのものは静かで、手に伝わるショックもソフトで、「なにかとてもよく制御された機械を触る快感」という感じなのである.これは、ぜひ静かな場所で試していただきたい.カメラ量販店ではダメで、ルミックスの銀座ショールーム(って静かだっけ?)で聞いて感じて欲しいのだ.やはりカメラはシャッター音が命なのである.
さらに連写も速くてキモチがいい.自分はブラケットで露出を3枚バラして撮る習性があるのだが、メカシャッターで秒9コマという速度だと、3枚のブラケット撮影は0.3秒で終了する.とてもキモチがいい.やはりカメラは連写が命なのである.
このハイレートの連写と動画保存を支えているのが「XQDカード」である.このメディアはニコンのZも採用しているのだが、使ってみてビツクリしました.速いんです.PCに取り込む時の速さはビビリました.特にS1Rのような画素数の多いカメラでは静止画野郎も必須です.できたらバス直結のXQDスロットのあるモバイルノートPCをどこかつくっていただきたいくらいですね.クリエイター向けPCとかうたっているメーカーさんはぜひお願いします.
私はこの標準ズームの性能で
買うことを決定しました
さて、ミラーレスでもミラーありでも一眼といえばレンズ交換が醍醐味なのだ.パナソニックが発売しているSシリーズ用のレンズは3本だが、「天下のライカLマウント」を採用しているので,まずはライカが発売しているレンズが加わる.もちろんそのまま装着していそのままAEAFで撮影できる.
さらに、このLマウント仲間に加わったのがシグマなのも頼もしい.既存のART系レンズはすべてLマウントにて発売を決定ずみだし、カメラも出すと明言している.とりあえずはマウントアダプターが出ているので、キヤノンやシグマのレンズを持っている人はアダプターで楽しめる.
さて、自分はというと、パナソニックからS1Rを借りたときに主に24-105ミリを付けていたのだか、このレンズがまたいいのだ.
もちろんフルサイズでビキビキの写真が撮れるのはアタリマエなのだが、開放がF4なのにボケがとってもキレイなのである.そのうえ、焦点距離にかかわらず最短撮影距離が30センチなのが最大の魅力なのだ.
自分が最近、取材や旅行やお料理撮りをコンパクトカメラで実施していたのはこのマクロ能力がある.フツーの一眼の交換レンズだと標準(または広角)ズームでは寄りが足りないのだ.マクロレンズを持ち歩いて交換するのも面倒なのでいきおいコンパクトカメラとなっていた.
24-105ミリの最短30センチというのは、もちろんカメラの撮像面からの距離なので、レンズ前としては約15センチ、レンズフードを付けていたら、その前12センチまで寄れる.それも広角端24ミリだけではなく105ミリでも寄れるので、「最大撮影倍率」は0.5倍となる.つまり72×48ミリ四方まで被写体に寄れるのだ.レンズの名称にMACROがつく由縁であり、我々取材班および料理をアップで撮りたい班としては、非常に便利なレンズなのである.24-105ミリF4レンズとして最強.もはやこのレンズの使い勝手によってS1Rご購入におよんだといっても過言ではない使いやすさなのである..
使い始めてさらに買って良かった感が
256倍増加したのだった
というわけで購入してから1カ月たつのだが、きちんとしたカメラで写真を撮るのはやはり楽しいのである.
基本機能としてはAFが速くて、まったくストレスがない.無音でススッと合焦するのはニクいのである.
もうひとつ感心するのが手ブレ補正の効きだ.もちろんいまどきスマホにもコンパクトカメラにも入っている機能だが、S1Rのボディ内と、レンズ内のデュアル手ブレ補正は24-105ミリのどの焦点距離でもビンビンに効いてくれるのだ.
自分は基本的に絞り優先(Aモード)で撮るのだが、ISOを100~400で固定にしていると当然シャッター速度は遅くなることがある.ヒトケタ分の1秒とか表示されると「ダメかな~」と思いつつ、撮って拡大してみてもブレテナ~~イ.強いのである.仕事で取材のときにはISOもオートにしておけば、低速シャッターにならずに感度をあげてくれるので失敗なしである.
最近発見したのが、S1Rのファインダー横の「V.MODE」という小さなボタン.コレを押すとファインダーの倍率が変わるのだ.つまりファインダー表示全体が3段階で遠くなったり近くなったりするのだ.自分のようなメガネ族で、動きのあるものを撮るとか、四隅までキッチリと気を配りたい人は「遠」にするといいのである.これはとってもニクい機能で、やはり最初からマニュアル読まないとですよね~、はははは.
旅行や出張先で便利なのが、本体のみで、もはやおなじみのタイプCのUSB端子で充電できること.いまやスマホもモバイルノートもモバイルバッテリーもタイプCで充電するのが基本であるからして、出張や海外旅行時に、あれこれケーブルや「さきっぽ」をザクザクと持っていく必要がないんです.最悪、1台のACアダプター+タイプCケーブルで困らないのである.
さらにステキなのはこの方法で充電しながら撮影や再生ができることである.バッテリー残量を気にすることなくタイムラプスもできるのだ.
最近の高級なおカメラはみんなファンクションキーにいろいろな機能を割り当てて使いやすいカメラに仕立てていくのだが、自分はなにかと面倒なのでなかなかやらない.
そんな中、S1Rはレンズ側の右側にもFnボタンが2つあることを発見して、押してみてとっても便利で常用している.この位置のボタンって、むかしなつかし「絞り込みボタン」ですよね.このスイッチを押すと絞り効果のON/OFFができます.さらに、シャッタースピード効果のON/OFFもできるんですよ.フツー使ってるのかもしれないがおじさんはとっても感心して使いまくっていますよええ.
それからスマホ連携もやってみました.最新の「LUMIX Sync」を愛機のXperiaくんにインストールして、起動して、カメラ側のBluetoothの設定を実行するだけでした.1文字も入力なし.簡単すぎですね.これでリモート撮影もできるし、撮影ファイルのスマホへの自動転送もできるんですから、世の中すすんでいます.
Bluetooth Low Energyで接続されて、通常はおたがいに電力を消費しない状態なんですが、いざファイルを転送となるときちんとWiFiでつながって、画像1枚が4秒ほどで飛んできました.なんか楽ちんすぎですね.
今こそやってみたい
カメラで写真を撮る快感
ちょっと重いのがナニなんですが、やはり「ちゃんとしたカメラ」で写真を撮るのはアタマを使うし、楽しいし、シャッターを押したときの快感はまだ続いていて、買ってよかったですよはい.
そして、まだまだ試すべき機能は山積です.三脚に乗せて「ハイレゾモード」もやらないといけないし「HLGフォト」もまだ試していないし、フルサイズ素子による「4K60Pムービー」も撮らないといけませんし、6K/4Kフォトの秒60コマ撮影でなにかを止めてみないといけないです.
もちろん頂点のカメラですから、いいお値段ではありますが、使用感も写りも最高レベルのカメラで写真を撮れる幸せと、最新デジタル機能が満載ですから、とっても満足しています.いま、買っていいカメラのイチオシですよもちろんです.