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著者に聞く『ダークウェブ・アンダーグラウンド』木澤佐登志さん:

ダークウェブよりヤバい「普通のウェブ」

2019年03月26日 09時00分更新

文● 盛田 諒(Ryo Morita)

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■そしてトランプ大統領が生まれた

── ドナルド・トランプ大統領の支持層である「オルタナ右翼」にも、多くの新反動主義者がいるそうですが、オルタナ右翼とはどんな人々ですか。

 オルタナ右翼にもいろんな潮流があるので一概に言えませんが、同時発生的に色んなところから出てきた考えで、主にリベラルやポリコレに対する反発心から出てきたところが大きいです。リベラルやポリコレを「自由に対する抑圧」のようにとらえられているところがあって。「ゲーマーゲート論争」※2に象徴されるように、言論の自由の立場からラディカルフェミニストの表現規制に反対するところで駆動してきたところもありますし。

※2 ゲーマーゲート騒動:2014年、女性ゲーム開発者がネットで中傷されたことから始まった騒動。性差別の視点でも注目を集めた

── オルタナ右翼の人々が排他的な思想をもちながら、自分たちが同じ白人から排除されたら反発するという部分には矛盾も感じます。

 排除されているからこそ白人というアイデンティティにしがみつくのかもしれません。ヨーロッパ発祥のアイデンティタリアニズムという、自分たちの人種や民族や文化を守るという白人ナショナリスト運動があります。それはもとをたどれば1980年代にリベラル左派がやっていたアイデンティティポリティクスの裏返とも言えます。黒人や同性愛者などのマイノリティがアイデンティティを主張する運動でしたが、いまや白人が白人であると主張するようになった状況です。

 これについて、マーク・リラという政治思想学者は「左派のアイデンティティポリティクスの失敗がオルタナ右翼やドナルド・トランプを生んだ」と言っていますね。それぞれのアイデンティティを主張することで生まれたのは、連帯ではなく分断だけだった。リベラル左派は結局普遍的な価値観を生み出すことができなかったんだと。

── 民主主義的な考え方、リベラルな考え方を否定するドナルド・トランプは新反動主義とオルタナ右翼にとって理想的な政治家だったんでしょうか。

 (トランプ支持層の)Qアノンという人々は「ディープステート」と言い、企業や腐敗したネットワークがトランプを失脚させようとしているという陰謀論をとなえて、トランプは一人で陰謀に立ち向かっているヒーローだと言っています。トランプ大統領は「大聖堂(民主主義のこと)」や「腐敗したネットワーク」を打破してくれるヒーローみたいなものとして映ったんじゃないでしょうか。

── 新反動主義やオルタナ右翼は、正統な考え方からはずれた異端です。異端に支持される人間が大統領になれたのはなぜなんでしょう。

 リベラルやポリコレによる閉塞感、アメリカの没落が考えられます。アメリカが世界の中でプレゼンスを発揮できなくなって二流国家におちいっているという危機感が反映されたのかなと。ピーター・ティールはなぜトランプを支持しているか聞かれたとき「たしかにトランプは反動的で懐古的なところがあるが多くの人たちには未来へのビジョンがあった過去に戻りたいという思いがある」と言っています。

 ピーター・ティールの名言に「ぼくたちは空飛ぶクルマがほしかったのに、手に入ったのは140文字だった」というものがあります。アメリカはかつてアポロ計画で月に行き、やがては空飛ぶクルマを発明するはずだったのに、手に入れたのは手のひらに収まる小型端末とツイッターだけ。そういう「失われた未来」を取り戻すという欲望がドナルド・トランプに結実しているところがあるのかなと思います。

── IT企業が巨大化するにつれてインターネットが息苦しくなり、メーカーをはじめとする多くの企業が没落し、社会から排除されたような不満や不安を感じる人たちの前にドナルド・トランプが登場したというわけですね。

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