スポーツ事業への投資は、事業環境の変化によって様々な可能性が生まれ、2020年東京オリンピック・パラリンピックも控えてスポーツ事業への投資が加速しつつある。放送・通信といった技術インフラの変化が、スポーツ事業の形を変えつつあることも理由の一つだが、さらに視野を広げると、これまでは”メジャー”ではなかった競技も含め、様々な可能性が見え始めている。その中にはコンピューターゲームを用いた対戦、チーム競技「eSports」も視野に入っている。
一方でスポーツを中心とする事業環境は、国ごとに事情が異なっていることが多い。日本社会におけるスポーツ事業の形を、筑波大学体育系准教授・高橋義雄氏に話を伺いながら、日本におけるスポーツ事業の現状、課題を探りながら、今後3回にわたり、どのような可能性が広がっているのかを俯瞰していくことにしたい。
「イベント主義」が日本のスポーツ産業における最大の問題
高橋氏は日本のスポーツ産業における最大の問題は「継続性」の低さに尽きると話す。
「『どんなスポーツが有望か』という以前に、産業として発展するか否かは、その競技の楽しみ方、参加する歓びを知っている人がどれだけいるか? に関わってきます。より競技に対してのめり込むほど、その魅力は理解できるものです。ところが日本の場合、何らかのイベントへの出場・入賞・優勝を狙って競技に参加しても、イベントが終わるとそこで競技をやめてしまう場合が多いことです」
たとえば野球の場合、リトルリーグ、あるいは地元の少年野球チームから中学の野球部か硬式のシニアリーグ・ボーイズなどのクラブチームへと進む道があるが、どんな経緯で競技を始めた場合でも、球児なら誰もが憧れる甲子園を目指して高校の野球部に入る。引退すると、次はプロ野球、社会人野球、大学野球を選択することになるが、多くの選手は「甲子園を目指す」というイベント後に野球を辞めることが多い。
これは他の競技にも見られることで、学校単位での部活動でテニスを始めたものの、一部の有望な選手以外は部活動というイベントを超えた先では活動を継続しない選手が多いという。
無論、すべての選手が一流になれるわけでも、プロになれるわけでもないが、競技をアマチュアで楽しみながら継続する比率が低いようでは、スポーツ産業として発展する基盤が弱い。
「学校単位での活動、応援に閉じた「現役学生とOB」というコミュニティではなく、競技が好きな人、気の合う人たちが気軽に集まってスポーツを楽しめる環境を整えることが、スポーツの事業化をする上での大きなポイントです」