多拠点のリモート管理もゲストWi-Fiのキャプティブポータルも「無料」で実現? その実力を知る
TP-Linkの業務用製品は、快適な無線LAN環境をコスパ良く作れる
2018年10月30日 08時00分更新
クラウドとモバイルアプリで、管理者不在の無線LAN環境をリモート監視/管理
Omadaソフトウェアコントローラーが常に起動していなくても、EAP側は自律的に動作する。小規模な無線LAN環境を使いたいだけであれば、設定変更や稼働状況の監視のときだけコントローラーを立ち上げればよい。
ただし、クラウドサービス(後述)やモバイルアプリ経由で外出先や遠隔地から状態監視や設定変更、リブートを行ったり、ゲストWi-Fi向けの高度な機能(キャプティブポータル、後述)を使用したり、異常発生時にアラートメールを自動送信させたりしたい場合には、LAN内でOmadaソフトウェアコントローラーを常に起動しておく必要がある。
特に、IT管理者のいない支社/ブランチオフィスや多数の店舗に無線LAN環境を設置する場合、本社のIT管理者がリモートから管理操作をできるようにしたいはずだ。しかし、そうした現場でPCとソフトウェアを常に立ち上げておくのは難しいだろう。そもそもPCすらない現場もあるかもしれない。
そこでTP-Linkでは、超小型の“Omadaコントローラー専用サーバー”である「OmadaクラウドコントローラーOC200」も提供している。PoE(またはMicro USB)での給電となっており、電源に接続すれば自動的にコントローラーが起動し、WebブラウザからアクセスすればOmadaソフトウェアコントローラーとまったく同じ機能が使える。この小さなボックスをLANに接続しておくだけなので、支社や店舗に設置、運用するのにも手間がかからない。
さらに「Omada Cloud」というクラウドサービスにユーザー登録し、OC200(またはOmadaソフトウェアコントローラー)の設定画面でクラウド機能をオンにすれば、外出先からでもインターネット経由でコントローラーの画面にアクセスできるようになる。このOmada Cloudの登録や利用も無料だ。
Omada Cloudにログインすると、多数の拠点/店舗に設置したOmadaコントローラーが一覧表示され、ここからワンクリックでそれぞれの管理画面を表示できる。
もうひとつ、Omadaコントローラーがクラウドに接続されていれば、モバイルアプリのOmada App(iOS/Android対応)からのアクセスも可能になる。このアプリでも、無線LAN環境の接続クライアントやトラフィック量の監視から、個々のEAPの設定内容の確認や変更、ファームウェアアップデート、リブートといった基本操作ができる。日常的な無線LAN環境の監視や管理作業は、管理者がどこにいてもこのアプリだけで十分に行えるだろう。そしてもちろん、このアプリも無料だ。
ゲストWi-Fiも簡単設置、キャプティブポータルでFacebook認証やSMS認証も
一般家庭ではなく、オフィスや店舗の無線LAN環境で特有のニーズというものもある。代表的なものとしては「ゲストWi-Fiの設置」が挙げられるだろう。従業員向けの業務用ネットワークとは別に、来客向けのゲストWi-Fiを設置したいというニーズは多いはずだ。
すでに触れたとおり、EAP245はマルチSSIDやタグVLANの機能を備えており、VLAN対応のスイッチ(JetStreamならばイージースマート以上のモデル)やルーターと組み合わせれば、業務用Wi-Fiとは隔離されたゲストWi-Fiを用意することができる。この場合は、シンプルに来客専用のSSIDとパスワードを提供するかたちになる。
ただし、Omadaコントローラーが稼働している環境ならば、より簡単かつ安全にゲストWi-Fiを提供できる「キャプティブポータル(簡易ログイン)」機能も利用できる。キャプティブポータルとは、クライアント端末がゲストWi-Fiに接続すると最初に表示される画面で、Omadaの場合はバウチャー認証やFacebook認証、SMS認証など、豊富な認証方式が利用できる。
バウチャー認証は、個々の来客に対し、一定の時間/通信量だけゲストWi-Fiを利用できるバウチャーコード(チケット)を発行する方式だ。接続時のキャプティブポータルでコードを入力するとゲストWi-Fiが利用可能になり、あらかじめ設定した時間/通信量を超えるとコードが無効になる(利用できなくなる)。たとえばセミナールームで社外向けセミナーを開催する際、参加者にバウチャーコードを配り、一時的にゲストWi-Fiの利用を許可するといった場面で便利だろう。
店舗や商業施設、宿泊施設の場合は、ゲストWi-Fi接続時にFacebookでチェックインをしてもらう「Facebook Wi-Fi」認証が良いだろう。チェックインしてもらうことで、そのユーザーのFacebookタイムラインに店舗や施設の情報が流れ、宣伝になるからだ。ちなみに、ゲストWi-Fiへログインする前に、ユーザーのクライアント端末の画面に一定時間、広告画像を表示できる機能も備えている。これも店舗などで有効活用できるだろう。
キャンパスや工場全域を無線LANでカバー、遠距離間伝送にも使える「CPE510」
TP-Linkでは屋外設置用の耐候型無線LAN製品もラインアップしている。ここまで紹介してきたOmadaシリーズにも屋外設置用AP(EAP225-Outdoor)はあるが、ここで紹介する「CPE510」はさらに広大なエリア、具体的にはキャンパスやグラウンド、工場、ゴルフ場、農場などの一帯を無線LANでカバーできる製品となる。
CPE510の基本スペックは、5GHz帯シングルバンド(802.11a/n)で2×2MIMO、スループットは最大300Mbps(理論値)である。内蔵の2×2デュアル偏波指向性MIMOアンテナによって、遠距離まで電波を届けることを可能にしており、同モデルの場合は見通し2.5キロメートル以上がカバーエリアとなっている。非常に特徴的な製品にもかかわらず、参考価格(税込)は1万3300円と入手しやすい価格帯だ。
一般的な無線LAN APとして屋外の広いエリアをカバーできるので、たとえばキャンパス全体をWi-Fiエリアにしたい、工場などで広い範囲に多数の無線LAN監視カメラを設置したいといった場合に導入されているという。
さらに、無線LAN APとしてだけでなく、クライアントやブリッジ、リピーター、APルーターなどのモード切り替えもできる。たとえば、APモードとクライアントモードに設定した2台のCPE510を、ケーブルで結ぶことのできない数百~数キロメートル離れた2地点で向かい合わせに設置して、その間をネットワーク接続するという使い方もできる。工場などで離れた建屋にもネットワークを延長したい、といった場合に便利だろう。
なお、こうした用途では電波強度の測定などが必須になるが、CPEシリーズには集中管理ソフトウェア「Pharos Control」が付属しており、測定作業も簡単にできるようになっている。
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以上、今回はTP-Linkの業務用無線LAN製品について、その全体像を概観してきた。SMB向けで必要十分なパフォーマンスと管理機能を、家庭向け製品とさほど変わらない手頃な価格帯で実現していることがおわかりいただけただろうか。インタフェースや操作体系もこなれており、初めて触る製品にもかかわらずマニュアルをほとんど参照することなくセットアップできた点も評価している。
またTP-Linkでは、SMB向け製品に対して故障時の無償交換を行う「5年保証」を提供している。今回紹介したEAP245やT1500G-10MPSなどもその対象であり、より安心して利用できるだろう。
今や無線LAN環境は、小さなオフィスでも店舗でも、あるいは宿泊施設などでも「あって当たり前」の時代になっている。さらに言えば、そのネットワークが「快適」に使えなければ、従業員や顧客からクレームが出るような時代だ。一方でIT管理者としても、ネットワークを「快適」に運用したいだろう。TP-Linkの業務用無線LAN製品でワンランク上の快適さを、ユーザーも管理者も味わっていただきたい。