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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第473回

Turingのダイ写真で考えるGeForce RTXシリーズの構造 NVIDIA GPUロードマップ

2018年08月27日 12時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/) 編集●北村/ASCII.jp

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GeForce GTX 2080は
Tiとは違うダイを採用か?

 さて、問題はメインストリーム向けのGeForce GTX 2080である。これについては、同じくTU102を使うのか、それとももっとシェーダーを削減したダイなのか? という話題が飛び交っているが、筆者は別ダイ説を推したい。

 というのは、クラスターを4つに減らし、かつ1クラスターあたり23SMとすると、ちょうど2944CUDAコア(4×23×32=2944)になるからだ。

 これにあわせてテクスチャーユニットは192ユニット(4×48)、ROPは80ユニット(256bit=32bit×8)としている。GeForce GTX 2080Tiもそうだが、なぜクラスターあたり24SMにしないかといえば、歩留まりの改善だろう。754mm2ものダイだから、当然多少は欠陥が出て当たり前である。

 運よく欠陥がないダイはQuadroに、若干欠陥があるダイはGeForceに、と選別するのはごく自然な方針だし、その場合に24SMをフルに使うのは都合が悪い。22~23SM程度に留めておき、冗長コアで欠陥をカバーすることで歩留まりを上げると考えるべきだろう。

 ところでなぜTU102ではなく別のダイ(これまでの命名法に則ればTU104になる)と思うかと思えば、さすがにTU102のダイは大きすぎで、原価が上がりすぎである。メインストリーム向けということを考えれば、ダイサイズをもう少し減らさないと厳しいものがある。

 また、さらに下のGeForce RTX 2070を作ることを考えると、TU102のままでは厳しいと考えられる。ラフな試算だが、上図の構成のTU104は530mm2前後で製造できるはずだ。GP104の320mm2弱に比べるとだいぶ大型化しているが、RT Coreを突っ込みつつさらにCUDAの数を増やしている(のにプロセスは変わらない)のだから、これは致し方ないだろう。

 したがって、同じTU104を使うと予想されるGeForce RTX 2070の構成は下図のようになる。各クラスターごとに24SMのフル構成にする代わりに、1クラスターを丸々無効化すると想像され、これに応じて2次キャッシュも3MBに削減(4MBのうち1MB分を無効化)すると思われる。メモリーバスは192bitに減らされるが、クラスターが1個減ってるからちょうど帯域的にはマッチするだろう。

 ちなみにNVLinkに関しては、NVIDIAがHotChipsで出した論文を見る限りTesla V100は6対のNVLink I/Fを持っているそうで、おそらくはTU102(Quadro RTX)も同じように6対のI/Fを持っていると考えられる。これはNVSwitchとの接続との互換性を取ると思われるためだ。

今年のHotChipsで説明されたNVSwitchの利用例。V100同士を3対づつでつなぐこともできるし、NVSwitchと6対でつなぐ(もしくは3つのNVSwitchと2対づつで繋ぐ)といったバリエーションがある

 ただGeForce RTX 2080Tiは多くて3対程度だろう。4Way SLIを実現するにしても、各々が3対のLinkがあれば足りるからで、残りの3対は無効化されていると思われる。

 TU104の場合は、物理的に3対分に減らされているだろう。そしてGeForce RTX 2070ではNVLinkそのものが無効化されているが、これは技術的というよりはマーケティング的な問題であろうと筆者は考えている。

 さて、こうなるとより下のグレードのダイも当然あると思われる。要するにTU106にあたるもので、クラスターの数を2個、2次キャッシュは2MBまで減らした(そしてNVLinkは搭載しない)もので、メモリーもこのあたりになると安価なGDDR5を使うケースもあるだろう。

 ただ、これが年内に出てくるかどうかは微妙なところだろう。Turingアーキテクチャーはレイトレーシングを利用するのが前提で、その場合には性能を発揮できるが、逆にレイトレーシングを必要としない古いゲームや負荷の軽いゲームでは、RT Coreは単なるお荷物となってしまう形だ(さらに言えばTensor Coreも使われない)。

 NVIDIAは8月22日(米国時間)に“GeForce RTX: A Beast for Today’s Games - and Tomorrow’s”というブログエントリーを公開し、この中でGeForce GTX 1080 vs GeForce GTX 2080の性能比較を行なったがDLSSを使わないとおおむね3割~5割程度のフレームレート改善にとどまっている。

DLSSはDeep Learning Super-Samplingの略で、アンチエイリアスをDeep Learningベースで行なう(=Tensor Coreで処理をする)ことでSMの負荷を減らし、結果として描画性能を引き上げる技術

 もちろんここにあるような負荷の高いゲームには効果がありそうだが、TU106のターゲットはメインストリームの下の方で、解像度も2K、HDRもなしといったあたりだろう。こうしたユーザーがレイトレーシングを必要とするのはまだ少し先であり、このあたりは様子を見ながらという感じではないかと思われる。したがって一応ロードマップ図には今年末としてTU106を入れてあるが、来年になっても不思議ではないだろう。

2016年~2018年のNVIDIA GPUロードマップ

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