ソニー製品はほとんどない
ソニー企業の永野社長は「偶発的な音楽との出会いを実現したり、食事やショッピングのついでにローラースケートを楽しんだりできる。また、待ち合わせの場所に使ってもらったり、休憩場所に使ってもらったりできる。銀座には無料で座れる場所が少ない。買い物の途中に休憩してもらい、銀座の街を回遊してもらうための拠点としても利用してほしい」とする。
一方で、ソニー製品がほとんど置かれていないのも銀座ソニーパークの特徴だ。「ソニーの製品を通じて、ソニーらしさを感じてもらうだけでなく、銀座ソニーパークという場所からも、ソニーらしさを感じてもらいたい。ブランディングという観点からの新たな挑戦にもなる」と意気込む。
「公園」という要素を持たせるために、銀座ソニーパークでは「余白」にこだわったという。
「公園の特徴は緑があること、そして散歩をしたり、自由にくつろいだりできる余白があること。ソニーパークは余白を中心にして、周りに店舗などを配置する空間を実現している」という。
広い公園のなかにカフェなどが点在するイメージを、銀座ソニーパークは再現している。
変わり続ける公園
先に触れたように、銀座ソニーパークには6店舗があるが、これらをテナントとは呼ばずに、パートナーと呼んでいる。
「テナントとして出店してもらうのではなく、一緒に公園を作り上げるパートナーと考えている」(永野社長)というのが理由だ。
実はソニーでは、銀座ソニーパークを「プラットフォーム」と位置づけている。これは、PlayStationやスマホ、あるいはテレビなどを「プラットフォーム」と呼ぶのと同じ考え方である。
永野社長は「銀座ソニーパークは、ソニーの新たなプラットフォーム。PlayStationやスマホというプラットフォームの上でアプリが動作するのと同じように、銀座ソニーパークの上で、楽しく、便利で、おもしろいものをパートナーとともに提供する」と語る。
PlayStationでは、ソニーがプラットフォームを提供して、その上でソニーだけでなく、サードパーティーがゲームソフトやコンテンツを提供。多くの人が楽しめる環境が実現している。
PlayStationやスマホと同様に、プラットフォームの役割を果たすのが、銀座ソニーパークということになる。
「銀座ソニーパークは、オープンの日を頂点に衰退していくのではなく、オープンの日から進化を遂げる場にしたい」と永野社長。銀座ソニーパークに設置された施設は期間限定のものも多く、「変わり続ける公園」を目指すという。
2020年秋には閉鎖
公園という観点では、都市機能との隣接にもこだわった。
地上の数寄屋橋交差点、地下2階の東京メトロのコンコース、地下3階の西銀座パーキングとも境目を作らない構造にしており、これも公園としての考え方をベースにしている。
「銀座ソニーパークから見ると、数寄屋橋交差点も公園の一部に見える。逆に、数寄屋橋交差点から見ると、銀座ソニーパークも交差点の一部に見える。これがおもしろい。数寄屋橋交差点と銀座ソニーパークがシームレスにつながっている」とする。
永野社長は地上エリアが、銀座ソニーパークのなかで、最も好きな場所だと明かしてくれた。
「見上げると空が見える。前も空いているし、上も空いている。こんな体験は銀座ではできない。ぜひ、みなさんも銀座の青い空を見て、この解放感を味わってほしい」。
オープンに先駆けて開催された報道関係者向け内覧会で、永野社長が最初に発したのが「みなさんに銀座の青い空を見てほしい」という言葉だった。残念ながらこの日は、関東上陸を目前に控えた台風13号の影響で、雨が降っていた。だが、雨の日にも関わらず「青空」を訴えたほど、永野社長がこだわった部分であり、ソニーパークにとって象徴的な場所になる。
だが銀座ソニーパークは、東京オリンピック/パラリンピックが終了する2020年秋には閉鎖する予定だ。そして2022年を目標に、新しいソニービルを竣工する予定だ。
「銀座ソニーパークプロジェクトは、公園がゴールではなく、ひとつの通過点でしかない。公園のままにしてほしいという声が多ければ建てないという選択肢もある。そして、銀座の街のルールである高さ56メートルのなかで、どんなビルを建てるのかということも決まっていない。みなさんの声を聞きながら、公園をどう進化させていくのかを考えたい」とする。
新たなビルを建てる場合にも、基本的には公園を上に伸ばしていくという発想になるという。横に広げていくのが一般的な公園であるのに対して、縦の公園というのもソニーらしい発想だ。
ソニーがつくると公園はこうなる。それを一度体験してみてはどうか。
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