ニーズが変わった海外で強みを発揮できる
米沢事業場のノウハウを活用することで、日本市場向けレノボ製品の初期品質は30%も改善し、群馬事業場のノウハウを活用したことで、レノボアジア地区全体での修理パーツ品質が60%も改善するという成果があがっている。
だが秘密兵器は、それだけに留まらない。製品の観点からも生かそうとしている。
たとえば、NECPCの最軽量PC「LAVIE Hybrid ZERO」を北米市場に展開したり、すでにグローバルに展開しているレノボ・ジャパンのThinkPad X1 CarbonをはじめとするThinkPadシリーズの販売を、より加速したりといったことも視野に入れている。
「LAVIE Hybrid ZEROは、北米で開催されたCESで賞を総なめにした実績からも証明されるように、米国でも高い評価を得ている。ThinkPadシリーズも、さらにグローバルで展開できる余地がある」とする。
そして、いまこそ秘密兵器を活用できるタイミングが訪れているとも指摘する。
「日本は製品やサービスに高い品質を要求する、こだわりを持ったユーザーが多い市場であり、NECPCは長年に渡って要求に応えてきた。一方で、海外市場ではそこまでのこだわりが求められず、低コストであることが重視されてきたが、ここ数年、日本以外の市場でも、製品やサービスの品質を重視する傾向が出てきている。つまり、NECPCがやってきたワールドクラスの品質は、こうした海外のニーズの変化に対して最も適したポジションにあり、他社にはない、ユニークな位置づけを担うことができる。こうしたタイミングが訪れているからこそ、秘密兵器としてNECPCの特徴を生かすことができる」。
レノボグループでは、昨年から「カスタマーセントリック(顧客中心)」という方針を明確に打ち出しているが、NECPCが持つノウハウをグローバルに活用することは、この方針にも合致する。
「だからこそ、NECPCが持つノウハウを世界に展開していきたい」と、ベネット社長は語る。
世界展開を視野に
さらに、米沢事業場では次のイノベーションに向けた研究開発をするR&D組織として「NT&Iチーム」を発足している。
「NT&Iチームは、意味のあるイノベーションを実現する新たなモノづくりに挑戦してもらう組織。米沢、群馬、大和のチームの力を活用して、イノベーションを継続したいと考えており、そこから創出するイノベーションにも期待してほしい」とする。
ベネット社長はカナダ国籍を持つが、高校時代に1年間、横浜商科大学高等学校に留学。2004年にカナダトロント大学大学院卒後、早稲田大学日本語教育センターで日本語を習得したり、学習院女子大で日本の古典文学を学んだりといったユニークな経歴を持つ。さらに、文部科学省国際交流員として香川県に勤務。日本AMDに入社し、10年間にわたって、グローバルおよび地域のセールスにおける要職を歴任。バイスプレジデントとしてアジアパシフィックおよび日本の成長を牽引してきた経験を持つ。
日本語も堪能で、妻は日本人。「古典では、古今和歌集と土佐日記が好きだ」と語る。
そして「私のゴールは、業界リーダーとしての責任をはたし、世界と日本の架け橋となり、世界から日本へ、日本から世界へと展開することにある。日本で展開していることを、どうやって世界に展開するか。それを考えていきたい」とする。
NECPCとレノボ・ジャパンが日本で培った強みを、グローバル戦略にどう反映させるのか。日本を熟知するベネット社長のこれからの手腕が注目される。
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