このページの本文へ

上野優華の“e☆音”探し〜イヤホン・へッドホン〜 第8回

音の仕組みを体験

上野優華「音の生まれる場所」を体験、オーディオテクニカ本社 (3/5)

2018年08月03日 17時00分更新

文● ASCII

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

小さな本体に無線の技術をぎゅっと凝縮

 次にオーディオテクニカも最近力を入れているワイヤレスイヤホン。その中から音質の評判が高く人気の「ATH-DSR5BT」を中心にお話を伺いました。

上野優華 (イヤホンのカタログを見ながら)かわいい~。わたし、ピンクを考えた人は天才だと思っているんですよね。

國分 先ほどはヘッドホンでしたが、イヤホンにも基本的に同じ構造のドライバーユニットが入っています。実はこのイヤホン「ATH-DSR5BT」には弊社独自の特徴があります。まずドライバー自体は小さいのですが、構造は先ほど見ていただいたヘッドホンと同じなんですね。ただし、一般的なヘッドホンが1個のドライバーユニットを使うところを、2つを向かい合わせにした上で密閉している点が独自技術になっています。

上野優華 本当だ。でも向き合わせるとマグネットが反発しあって飛んで行ってしまいますね! ……ついつい、遊んだしまいます(笑)。初歩的な質問になるのですが、ここから音が出るのに密閉してしまってもいいんですか?

國分 向かい合わせで密閉していますが、片側のドライバーの背面に穴が開いていまして、そこから音が出る仕組みになっています。

上野優華 向かい合わせにすると何がいいのですか?

國分 ドライバーユニットは輪切りにすると前後が非対称な形をしています。つまり「前に行く力」と「後ろに行く力」が厳密にはイコールではない。これが音のひずみにもつながるのです。それをなくすために、引くときも押す力を使って鳴らしたらどうかと考えました。ちなみに上野さん、ノコギリを使ったことがありますか?

上野優華 あります!

國分 ノコギリは基本引いたときに切れて、押すときには切れません。その動きはムダと言えばムダです。でも二人で持つノコギリもある。これを使えば押しているときも、引いているときも切れます。そういうイメージです(笑)

上野優華 なるほど(笑)

國分 両方から持つノコギリと同じように、プッシュプルドライバー(プッシュは押す、プルは引く)は、押すときにも引くときにも音が出ます。だから効率がすごくいいんです。弊社では、イヤホン向けにそういうドライバーも開発しています。イヤホン向けのドライバーとしては直径13㎜のものもあるのですが、ATH-DSR5BTの場合は、直径9.8mmと8.8㎜のドライバーを使用しています。

上野優華 こんな小さなもので鳴らしているんですね。

國分 ヘッドホンよりもずっと小さいですが、より耳に近くなるので、十分なんです。

ATH-DSR5BTはこんな音、実際に聴いてみた

上野優華 これまでは、中身について考えたことはありませんでしたが、説明を聞いた後だとありがたみを感じますね。まず本体ですが、これだけの部品が入っているのに、すごく軽い! 音を聴きながら、きっと中で「振動板が震えているのだろうな」なんて想像をしてしまいます。この企画では、ふだんいろいろなイヤホンを聞かせてもらっていますが、オーディオテクニカの製品は、ボーカルがよく抜ける感じとか、自分の歌がよりよく聞こえてくる感じがしました。歌う立場からの気持ちとしては、リスナーに一番届けたいと思っているところなので。嬉しいです!

 オーディオテクニカでは、レコーディングするアーティストやエンジニアの考えを素直に生かすことを目指して製品を開発しているとのこと。デジタルの信号を扱う、Bluetoothイヤホンであれば、イコライザーを使った調整も可能だが、開発思想としてそれに頼らずアコースティックのチューニングにこだわっているという。

カテゴリートップへ

この連載の記事

秋の「鉄板ヘッドフォン」購入ガイド

ピックアップ