故障の少なさは、TCO削減につながる
その一方で国内のパソコンは、品質は高そうだが、価格がデメリットだと言われることが多い。それは一面では間違っていないが、必ずしもそうとは言えない。なぜなら企業導入を考えた場合に重要なのは、TCO(トータルコスト)であり初期導入コストではないからだ。
品質や信頼性が高く、4年、5年というPCのライフサイクルを無故障で乗り切れれば、ハードそのものを入れ替えるコストが抑えられるだけでなく、修理依頼による作業時間の損失といった人的なコスト、機会損失も防げる。トータルコストで考えれば、初期投資が多少高くても結果として元が取れる計算になるだろう。
また数値化が難しい部分だが、仮に故障した場合でも、日本国内でサポートしてくれたほうが納期も早く、意思疎通で齟齬が出にくいという面があるだろう。このあたりはカタログスペックなどでは推し量れないが、ベンダーの質が最も如実に出る部分ともいえる。
ここも日本企業の事情を熟知した、日本メーカーのPCを選ぶ理由の1つになるはずだ。VAIOの場合、オンサイトサービスも行なっているが、センドバックする場合でも安曇野工場に送られてすべて日本で対応する。熟練の技術営業部隊が取り組んでくれるので安心感が高い。また、海外へ輸送することもないので、その分の時間も短くて済むというメリットもある。
キッティングサービスの充実がポイント
導入の決め手の1つとして、導入支援サービスを挙げる企業も多い。今やイメージのカスタマイズは必須だし、手数の足りないIT部門の負担を軽減するため、納品されてすぐ使用者に渡せる体制になっていることが求められる。
企業がマシンを導入する際は、BTOのようなレベルではなく、より高度で柔軟性の高いカスタマイズやサポートが必要になってくる。そのあたりの柔軟性は、海外メーカーではなかなか話が進まなかったり、対応させるためにはロット数が膨大だったりして、かなり難しいようだ。実際導入事例を取材していると「日本メーカーは親身になって対応してくれる」と話す担当者に出会う機会が多い。
最近取材した事例では、シンクライアントの導入を考えている企業があった。一般に販売されているマシンでは対応できないため、専用に生産してもらう必要がある。前回株式会社JSOLの事例を紹介したが、海外メーカーはコストを考えると有利ではあるけど、こうした融通に合わせてもらえる柔軟性が乏しいため、日本メーカーにお願いせざるを得ないようだ。
VAIOの場合、従来シンクライアントで利用されてきた「Windows Embedded OS」に代わり、「Windows 10 IoT Enterprise」での対応をサポート。ハードウェアの製造工程は変わらず、キッティングにより中身の部分を変更するだけのため、柔軟な対応が可能となりメーカーの要望に応えられる体制を整えている。VAIOはJSOLとの取り組みで、ある意味新しい事例を作ったと言えるが、こうした対応は、国内生産であり、国内サポートだからこそできることである。
キッティングは、なにもシンクライアントのためのものだけではない。企業がマシンを導入するにあたり、面倒な初期設定をマシンに精通しているメーカーが直に作業してくれるため、安心かつ情シスの負担を大幅に軽減してくれるものだ。マシン導入支援をSIerやキッティング専門業者に委託している場合は、企業用にカスタマイズする上で何度かメーカーとやり取りするケースがある。そのため、メーカーが直に作業するよりも大幅に納品の時間がかかってしまう。
また、メーカーに導入時のキッティングを任せておくと、たとえば最初に導入したマシンと同じ状態のものを、あとから購入したいといったことも対応可能となる。OSをカスタマイズして企業が使うアプリケーションを組み込んだ状態のイメージを作成できるのもメーカーならではなので、企業にとってはメーカーがキッティング対応してくれるところを選ぶのが必然になってきている。
VAIOも法人向けに力を入れたときに、いちばん注力しているのがこのキッティングサービスだ。ソニー時代はコンシューマー系に強いイメージが強く、VAIOに変わってからも最初のころはそのイメージを引きずっていた。それを払拭するためにも法人営業とともに法人対応の要となるキッティングサービスを作り上げてきたのだ。すでに導入企業の7割がこのキッティングサービスを利用しているといい、エンドユーザーと直接コミュニケーシを取ることで、ミスも減り、納品までのスピードも変わってくる。企業にとってはメリットしか見当たらない。
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