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ソニーが世界最大の音楽出版社に EMI Music Publishingを連結子会社化

2018年05月22日 13時20分更新

文● 大河原克行

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 ソニーは5月22日、経営方針説明会を開催。2018年4月1日に社長兼CEOに就任した吉田憲一郎氏が登壇した。

 会見のなかで、EMI Music Publishingを運営するDH Publishingについて、ムバダラインインベストメントカンパニー主導のコンソーシアムが保有する約60%の持ち分すべてを、ソニーの完全子会社であるSony Corporation of Americaが取得することに言及。「これによってソニーは、世界最大の音楽出版企業になる。当社の成長の布石になる」とした。

 さらにプレイステーションに関しては、「ゲーム&ネットワークサービス分野は売上高で1兆円を、月間アクティブユーザー数は8000万人を超え、プレイステーションネットワークは、世界有数のネットワークサービスとなった」とし、「サブスクリプションサービスであるPS Plus会員数のさらなる拡大のほか、PS VR、PS Now、PS Video、PS Musicなどの商品、サービスを利用してもらい、プレイステーションネットワークへの訪問頻度と利用時間を増やし、ユーザーエンゲージメントを増やしていくことが成長戦略の基本になる」とした。

営業利益目標は明かさず

 また2020年度を最終年度とする3ヵ年の中期経営計画「第3次中期経営計画」を発表。2020年度までの3年間の営業キャッシュフローで2兆円以上(金融分野を除く)、2020年度までに連結株主資本利益率(ROE)10%以上を継続するとことを掲げた。また、設備投資は3年間累計で約1兆円とし、イメージセンターを中心に設備投資をすると明らかにした。

 売上高や営業利益目標については明確にはしなかったが、2020年度のセグメント別営業利益目標を公表。ゲーム&ネットワークサービス分野では1300~1700億円、音楽分野は1100~1300億円、映画分野は580~680億円、ホームエンタテイメント分野は750~1050億円、イメージング・フロダクツ&ソリューション分野は850~1050億円、モバイルコミュニケーション分野が200~300億円、半導体分野は1600~2000億円とした。

 また、ソニーブランドのエレクトロニクス製品であるブランデッドハードウェアでは、1800~2400億円を目指すとのこと。

「感動」と「人に近づく」がキーワード

吉田社長兼CEO

 ソニーの吉田氏は「営業利益目標を出さなかったのは、経営の長期視点を大事にしたいと考えたため。3年後の営業利益目標を出すことは大切だが、3年後の営業利益目標を目指した経営になる可能性がある。そこで、累計キャッシュフローを指標に据えた」とした。

 ソニーは、2017年度に過去最高の営業利益となる7349億円を達成しているが、2020年度には、最大で8080億円の営業利益を目指すことになる。

 また吉田氏は「『感動』と『人に近づく』をキーワードに、エレクトロニクス、エンタテインメント、金融の3つの事業領域において、持続的に社会価値と高収益の創出を目指す」とし、「利益成長よりも、リカーリング比率を高めることで、利益の質を改善することを目指す」と述べた。

 さらに「今後の課題は、コンテンツIP、DTCサービス、半導体IPへの継続投資、AI×ロボティクスおよび医療領域への投資になる」とし、「ユーザーに近いDTC(Direct to Consumer)サービスと、クリエイターに近い音楽、映像、アニメ、ゲームといったコンテンツIPを強化し、それぞれに共通の感動体験や、関心を共有する人々のコミュニティーであるCommunity of Interestを創り出す」「映像と音を極める技術を用いて、ユーザーとクリエイターをつなぐソニーブランドのエレクトロニクス(ブランデッドハードウェア)を、安定的に高いレベルのキャッシュフローを創出する事業とし、持続的なキャッシュカウ事業にする」「人が生きる現実世界を向き、感動をもたらすコンテンツの創造に欠かせないCMOSイメージセンサーの領域で、イメージング用途での世界ナンバーワンを維持し、センシング用途でも世界ナンバーワンを目指す」とした。

 吉田氏は新たな中期経営計画を「第3次中期経営計画」と命名し、前任の平井一夫社長が取り組んできた、2つの中期経営計画の「次」という意味を持たせている。

 吉田氏は「私の色はあまり出ていない。『感動』というヒジョンも変わらない。ただ、『感動』を突き詰めることを目指したのが、今回の中期経営計画である。感動を作る人と感動する人を近づけるものになる」と述べ、平井会長がこれまで取り組んできた成長戦略の延長戦上であること、改めて強調した。

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