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業界人の《ことば》から 第280回

営業利益3400億円増のソニー、それでも社長が心配するワケ

2018年01月25日 09時00分更新

文● 大河原克行、編集●ASCII.jp

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今回のことば

 「社内では、なんとなく『ビクトリーラップ』の状態になっている。ここまでがんばってきた経営陣や社員が、気を緩めることが最大の課題」(ソニー・平井一夫社長)

 ソニーは、2017年度(2018年3月期)に、営業利益で過去最高となる6300億円の目標を掲げている。

営業利益目標を上方修正

 ソニーでは、2015年度をスタートとする第2次中期経営計画(2015年度~2017年度)を推進。当初は、1997年度以来となる20年ぶりの高い利益水準となる連結営業利益5000億円を目標としていたが、2017年10月31日に発表した2017年度上期業績発表の席上、前年比2.2倍となる6300億円へと営業利益目標を上方修正し、過去最高を更新する計画を打ち出した。

平井一夫社長は、「2017年末の年末商戦は、かなり好調な実績で終えることができた」と話す

 その手応え感は、好調な形で終わった年末商戦を経て、より確実なものになったといえるだろう。コンシューマエレクトロニクス事業の成長が目標達成の「十分条件」。年末商戦の結果は重要な指標のひとつだ。

 ソニーの平井一夫社長は、「2017年末の年末商戦は、かなり好調な実績で終えることができた」と前置きし、「年末商戦は、テレビ、オーディオ、デジタルイメージングも好調であり、いい手応えがあった。α9やα7R Ⅲも貢献し、カメラ用レンズ群の一部では商品の供給が若干遅れるといったこともあったが、ここでも手応えがある」とする。

 ソニーは、ここ数年、テレビ事業をはじめとするコンシューマーエレクトロニクスの再生を重点課題に位置づけ、「規模を追わず、違いを追う」という方針で、安定的な収益貢献を優先してきた。

 「コンシューマーエレクトロニクス事業は、業績面では苦しい時期もあったが、現在は当社の足もとの業績を下支えする安定感が戻ってきた」と平井社長は自己評価する。

 また、ゲーム&ネットワークサービス分野の収益拡大も寄与。プレイステーション4は、累計で7360万台以上を出荷し、プレイステーションVRも200万台を突破。プレイステーションネットワークの成長も堅調だという。

 モバイル向けイメージセンサー事業の復活や、音楽、金融分野での継続的な収益貢献に加え、課題となっていた映画分野では、2017年には、「スパイダーマン:ホームカミング」、「The Emoji Movie」、「ベイビー・ドライバー」、「ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル」、「ブレードランナー2049」といったヒットがあり、収益貢献への道筋がつきはじめている。

黒字化を優先したスマホも好調

 そして、最大の課題事業となっていたスマホを中心としたモバイル・コミュニケーション分野は、コストを下げ、収益性をあげていく取り組みを加速しており、成果を出しつつある。

 「スマホビジネスは、数年前からシェアや台数を追求するよりも、まずは黒字化することを優先してきた。そこにおいては秘策ない」としながら、「求められる機能を搭載するとともに、いかにコストダウンをするのか。品質を高め、不良による返品率をいかに下げるのか、人件費を下げるにはどうするかといった取り組みを行なってきた」とする。

 ソニーが厳しい状況にあるスマホビジネスから撤退しないのは、足元のスマートフォンビジネスの成長を見ているのではなく、将来のコミュニケーションビジネスの視点から、このビジネスを捉えているからだ。

 平井社長は冗談混じりに、「人間同士がテレパシーでコミュニケーションができるようになるまでは、遠隔での対話の実現には、なんらかのデバイスとネットワークが必要になる」と語りながら、「かつては、その手段として、フィーチャーフォンがあり、それがいまはスマホに変わってきた。今後、スマホからなにかに変わるというパラダイムシフトが起こるだろう。

 それがウェアラブルになるのかどうかはわからないが、次のパラダイムシフトをソニーが作っていきたい。そのためには、業界のなかにおいて、常にプレーヤーとして存在し、スマホビジネスを続けていることが必要。ソニーの将来のビジネスポートフォリオという戦略的観点から、スマホ事業を捉え、コミュニケーションビジネスとして重視していくことになる」とする。

 過去最高の営業利益達成を視野に入れるなかで、モバイル・コミュニケーション分野は、将来への布石として、事業を継続することになる。

気を緩めることが最大の課題

 だが、平井社長は、営業利益6300億円の達成に向けて懸念事項があるという。

 それは、「まだ年度が終わっているわけではないのに、社内では、なんとなく『ビクトリーラップ』の状態になっている」という点だ。

 「ここまでがんばってきた私を含めた経営陣や社員が、気を緩めることが最大の課題である。これが、いまの正直な気持ちである」とし、「苦しかった3年前、4年前、5年前を思い出してほしい。危機感を持たないと、あの苦しかった時期に逆戻りすることになるということを社内に言い続けている。もっと危機感を持たなくてはいけない」と手綱を締める。

 そして、6300億円の過去最高の営業利益の達成についても、こう自己分析する。

 「営業利益は、前年実績に比べて3400億円上昇するが、熊本地震による一時費用の影響を除くと1200億円程度の上昇でしかない。しかも、そのうちの半分が為替による上昇となる。為替を除いた本当の実力では650億円の増加でしかない。素晴らしい業績のように見えるが、実は内容は違う。だから、もっとがんばる必要があるということを社員に伝えている」とする。

 さらに、「コンシューマービジネスは、第4四半期には在庫調整など様々な要素が絡むため、6300億円の達成に向けては年末商戦の結果に加えて、それ以降の在庫コントロールをどうするのかということが重要になる」とし、「3月31日まで緊張感を持って当たってもらいたいというのが社員へのメッセージ」だと繰り返す。

 また、「仮に、6300億円という数字を達成したとしても、4月1日からはゼロリセットで、さらに同じ利益水準を目指してやっていく必要がある。常に緊張感を持って経営にあたり、社員全員でがんばらなくてはいけないと思っている」とも語る。

 CES 2018の会場では、自動車メーカーなどの展示が増えるなかで、電機メーカーのB to Bシフトの動きがより鮮明になった。ソニーも車載向けイメージセンサーを展示するといった動きをみせたが、平井社長はあくまでも、コンシューマービジネスを主軸とする姿勢を強調してみせた。

「これは素晴らしいね」と言ってもらえるようなデザイン、たたずまい、機能を持った商品を、一般消費者に届けることを重要視すると話す

 「ソニーは、お客様に直接お届けするコンシューマー製品を、いかに強くしていくかがDNAであり、一番得意としているところである。これからも、コンシューマー分野には積極的に投資をしていかなくてはならない」とし、「ソニーはいつの時代であっても、お客様の一番近いところで『これは素晴らしいね』」と言ってもらえるようなデザイン、たたずまい、機能を持った商品をお届けする。これは変わることがない。コンシューマービジネスを大事にしていくことが、私の強い意志である」とコメントした。

 コンシューマビジネスの回復によって、ソニーは、過去最高の営業利益の達成に挑むことになる。その復活の姿は、まさにソニーらしい復活だといっていい。

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