3月末、GoogleがOracleとのJava APIをめぐる訴訟で敗訴した。3回戦目となる今回の訴訟の論点は、Oracleが保有するJavaの著作権について。具体的にはJava APIの無断利用はフェアユースに該当するかどうかだ。Androidで年間210億ドル(約2兆2500億円)の利益を得るというGoogleに対し、Oracleは損害賠償金として88億ドル(約9500億円)を求めている。
2010年から始まった8年越しのバトル
Google敗訴はメディアに大きく報じられたとは言いがたい。なにせ、OracleがGoogleを提訴したのは2010年。この裁判は8年も費やされてきているのだ。それでもこの訴訟は今後のソフトウェア業界にとって示唆するものが大きいし、Androidの成り立ちを知るうえでも役に立つ。
ご存知のように、JavaはSun Microsystemsで開発された技術だ。OracleはSunを2010年1月に手中に収め、同年8月にGoogleに挑戦状を突きつけた。問題はGoogleが急成長させつつあったAndroidだ。
Androidでは、Javaの仮想マシンではなく、Dalvikという仮想マシンを用意し、そこにはJava APIを含むが、しかし認定を取得せずに使っているというのがOracleの主張だ。詳しくは、新野氏のPublickeyの記事を参照いただきたい(http://www.publickey1.jp/blog/16/googleoraclejava_apiitjjug.html)。ちなみに、AndoidでのGoogleの行為については、Oracleに買収される以前のSunも懸念を表明していた。
Oracleが当初主張したのは、特許侵害、著作権侵害、ライセンス違反(AndroidはApache Licese 2.0を採用している)などだ。2012年の判決では、特許については侵害とは認められず、Java APIは著作権保護の対象ではないとなった。その後の控訴審でJava APIの著作権が認められたことから、論点はAndroidによるJava APIの利用が”フェアユース”であるかどうかになった。
一度は、Java APIはフェアユースの範囲内という解釈になったが(2016年)、今回の控訴裁ではこれがひっくり返った。つまり、Oracleを支持してフェアユースに該当せずという判決なのだ。
iPhoneに先行されたことによる焦りがあった?
それともAndroidに対する嫉妬?
ここまでについては新しい内容ではないが、この訴訟からは、モバイルで覇権を取るという当時のGoogleの明確な意思がよく見えてくる。
Androidはよく知られているように、Googleが2005年にAndroid社を買収したことで手に入れたモバイル向けOSだ。仕掛け人はAndy Rubin氏らである。Rubin氏はその後9年間、GoogleでAndroidの開発を率いたのちに退職している。
そのRubin氏は、「Sunが自分たちと協業したくないのなら、これまでの作業を捨ててMicrosoftの共通言語ランタイムとC#を使うか、Javaを使い自分たちの判断を弁護するかのどちらかになるだろう」といった内容のメモを残していたことが訴訟中に明らかになった。
Oracle側はこれらを指摘しながら、GoogleはモバイルOSを構築しなければと焦っていたと主張している。Bloombergでは、「Googleの主な収入源である検索はモバイル端末向けには最適化されておらず、”存続の危機”に直面していた」というOracleの主張を紹介している。
これもよく知られるように、2007年にAppleが初代iPhoneを発表。Googleは10ヵ月後の11月に「Open Handset Alliance」を立ち上げた。その後のAndroidの成功は周知の通りだ。
なお、”焦り”を指摘されたGoogleは、Oracleは”嫉妬”なのだとやり返した模様。「Oracleは、無料で幅広い人気を持つモバイルデバイス向けのOSを開発できなかったから、単に嫉妬している」と言い返したとのことだ。

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