デジタル変革目指す企業とスタートアップらをつなぐ「Businesss Innovators Network」
国内企業との共同イノベーションを促進、SAPがコミュニティ始動
2018年03月16日 07時00分更新
SAPジャパンは2018年3月15日、ビジネスのデジタルトランスフォーメーションを志向する国内企業との共同イノベーション(Co-Innovation)を促進するコミュニティ組織、「Business Innovators Network」を日本で始動した。変革を志向する企業とSAPだけでなく、スタートアップや学術機関、VC/アクセラレーターといった多様なステークホルダーを交えた、オープンなエコシステムの構築を目指す。
同日の記者説明会では、SAPシリコンバレーの責任者が米国における共同イノベーションエコシステムの取り組みを紹介したほか、今回のコミュニティ参画企業の一社であるコマツからも代表がゲスト出席し、期待を語った。
イノベーション実現のための手法と知見を国内企業に提供する
今回SAPジャパンがスタートしたBusiness Innovators Networkは、変革を志向する国内企業のリーダーと、多様なステークホルダーの間をつなぐことで、国内企業におけるデジタルトランスフォーメーションの促進を狙う組織。SAPジャパン VPの大我猛氏は、このコミュニティは「目的を持ったイノベーション(Innovation with Purpose)」をオープンに推進していくものであり、「日本発信による企業イノベーションを具現化していく」と語る。同日、第1回目となるコミュニティの会合が開催されたという。
賛同企業として公表されたのは、大手企業ではコマツやフィリップス、またスタートアップではSORACOMやSAPが支援するシリコンバレー企業、さらにコマツとSAP、NTTドコモら4社が立ち上げた建設現場向けIoTプラットフォームサービスのLANDLOG(ランドログ)などの名前が並ぶ。そのほか、スタートアップ支援の国内外VC/アクセラレーター、大学研究機関も参加するという。
Business Inovators Networkについて大我氏は、こうした参加主体のそれぞれが持つエコシステム、コミュニティどうしをつないでいく「Community of Community」として機能していくと説明した。これにより早期の規模拡大を実現し、「あえて数値目標は設けていないが、数千人規模にはなると考えている」(大我氏)。また変革、イノベーションに取り組む企業であれば、業種を問わず参加を呼びかけたいと語る。
同コミュニティを通じてSAPから提供するのは、デザインシンキングなど、同社がシリコンバレーやグローバルで実践してきたイノベーションのための手法と知見だ。大我氏は、リーダーの発想を刺激する「Inspire」、アイデアを練り上げる「Ideate」、ビジネスの座組を作り上げる「Develop」のそれぞれで無償/有償のプログラムを提供すると同時に、これら一連のプログラムを一定期間に行うこともできると説明した。
もちろん必要に応じてSAPのソリューションも提供するが、SAPジャパン 代表取締役会長の内田士郎氏は、今回の取り組みはソリューション提供が主眼ではないことを強調した。
「通常のITベンダーは(あらかじめ決められた)ソリューションを提供するが、SAPはむしろ、まず顧客と一緒になって『社会の課題』を発見し、どういうかたちで解決していくかに重きを置きたいと考えている。もちろんその中でSAPのテクノロジーがお役に立てればいいが、それ以上に『課題を見つけて、それを解決する』ことが、今回のいちばんの狙いだ」(内田氏)
「ドイツ企業のSAPでできたのだから、日本企業にもできるはず」
SAP Silicon Valley マネージングディレクターのサム・イェン氏は、SAPがシリコンバレーで展開しているさまざまな共同イノベーション、インキュベーションの施策を紹介した。
SAPはシリコンバレーに6つの拠点を持ち、その中心となるSAP Labsシリコンバレー(パロアルト)では、そこを訪れる顧客との共同イノベーションを推進している。ちなみに、日本からは昨年257社、1600名以上の企業顧客が訪問しており、その75%はIT部門以外の所属で、社長/役員クラスも多いという。
共同創業者のハッソー・プラットナー(Hasso Plattner)氏によるスタンフォード大学でのデザインシンキング講座(d.school)をはじめ、IoTデバイスのプロトタイプなどを開発できる「d-shop」、スタートアップのインキュベーションを行う「SAP.io」、また今回スタートしたコミュニティの原型となる、デザインシンキングで顧客と共にソリューションを考える「SAP AppHaus」や「SAP Innovation Network」も展開している。そのほか、スタートアップへの投資や支援も積極的だ。
イェン氏は、今回のコミュニティ立ち上げによって「これまでSAPがシリコンバレーでやってきたこと、学んできたことをさらに発展させることができるだろう」と期待を示した。
また大我氏は、SAP自身が「SAP HANA」ビジネス立ち上げに際して、SAP本体とは切り離された“出島”(プラットナー氏による独立組織)からスタートしたことを挙げ、そこからSAPでは、イノベーションには「3つのP」が必要であることを学んだと紹介した。
「“3つのP”とは、同質の人々から抜け出すPeople、デザインシンキングなどの共通言語、フレームワークとなるProcess、そして(物理的に)場所を分け、創造性を高める環境を提供するPlaceのこと」(大我氏)
まとめの中でイェン氏は、SAPがシリコンバレーの企業ではなくドイツ企業であり、日本企業はドイツ企業と似た性格を持つことから、日本企業でも必ずイノベーションは起こせるはずだと、あらためて強調した。
「組織ヒエラルキー、プロセス指向など、ドイツ企業は日本企業と似た性格を持つ。(ドイツ企業の)SAPにできたのだから、日本企業でもイノベーションが起こせるだろうと希望を持っている」(イェン氏)