ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第444回
業界に痕跡を残して消えたメーカー メモリーの需要で急成長を遂げたAlliance Semiconductor
2018年02月05日 12時00分更新
1ヵ月ほど間が空いたが、久しぶりに「業界に痕跡を残して消えたメーカー」である。そろそろ主要なメーカーは一巡した感がある。とはいえ、いくつかややマイナーなメーカーが残っているので、これらを取り上げていきたい。
今回紹介するのはAlliance Semiconductorである。厳密に言うと、なくなったわけではないのだが、Alliance Semiconductorそのものは消えたとしてもいいだろう。
画像の出典は、“Internet Archive”
メモリーの専門家である兄弟が起業
創業は1985年で、創業者はN.Damodar Reddy氏とC.N.Reddy氏の2人。前者が兄、後者が弟である。ちなみに2人の年齢差は17歳なので、他にも兄弟か姉妹がいるかもしれないが、そこまでは追跡できなかった。
2人はAlliance Semiconductorを創業する前に、Modular Semiconductor, Inc.という会社を経営しており(Reddy兄がCEO兼社長、Reddy弟がSVP, Engineering and Operation)、Modular Semiconductorの閉鎖後にAlliance Semiconductorを立ち上げた格好だ。
Modular Semiconductorを始める前に、Reddy兄はHoneywell子会社のSynertek, Inc.でCMOS関連技術のマネージャーを、その前はMotorola子会社のFour Phase SystemsやFairchild Semiconductor、RCA Technology CenterなどでDRAMを中心に幅広い半導体製品を扱っていた。
一方Reddy弟はCypressのSRAMラインのマネージャーを、その前はTIのDRAM開発マネージャー、さらにその前はNational Semiconductorのデザインエンジニアを務めており、SRAM/DRAM関連で10以上の特許を持っている。
要するに兄弟そろって半導体業界におり、兄が独立するというので弟がついてきた、という形に見える。こうしたバックボーンを持つ2人が興した会社なので、当然製品はメモリー関連ということになる。
とはいえ、1985年の創業から1990年あたりまでの動向についてはよくわからない。この時期はおそらくファンドなどから資金調達をしながら製品の品揃えを増やしつつ、エンジニアの陣容を強化するといったことを地道にやっていたものと思われる。
同社が特筆すべきは、メモリーを扱っていながらファブレス、つまり製造は別の会社に委託するモデルを採っていたことだ。昨今では珍しくないが、80年代といえばまだ自社で工場を持つことが競争力につながるという時代だったため、その意味では時代の先取りをしていたということか。
同社が本格的に成長し始めるのは90年代に入ってからである。特にPC市場の急速な成長に向けて、高速なDRAM/SRAMのラインナップを強化するとともに、途中からNANDフラッシュメモリーもラインナップに追加することで、急速に業績を伸ばすことになった。
1993年には新規株式公開にも成功しており、さらに同年中にさらに2回の株式公募も行なって資本を充実させ、これを製品展開に振り向けるという、理想的な展開となった。同社の1993~1996年の業績を有価証券報告書から抜き出すと以下のようになる。
| Alliance Semiconductor 1993年~1996年の業績 | ||||||
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1993年 | 1994年 | 1995年 | 1996年 | |||
| 売上 | 2223万ドル | 5457万ドル | 1億1933万ドル | 2億 110万ドル | ||
| 営業利益 | 172万ドル | 1355万ドル | 3632万ドル | 1107万ドル | ||
| 純利益 | 197万ドル | 868万ドル | 2389万ドル | 1072万ドル | ||
売上は倍々ゲームで伸びているのがわかる。1996年に粗利や営業利益が落ちているのは、さまざまな契約や新事業への参入が主な理由であるが、言ってみればこの時期が一番輝いていた、としていいだろう。
ちなみにDRAMはもちろんPC向けのメインメモリー用であるが、SRAMはというとPentium II/IIIの2次キャッシュなどに結構な量が採用された。それ以前は、Socket 7向けの2次/3次キャッシュ用である。
Pentium IIそのものは1997年から出荷開始されたわけで、同社からインテルへの納入は1996年に開始されている。これが1996年の売上の底上げにかなり貢献したそうだ。

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