日本語化スタッフもおり、日本市場へのフォーカスは大きい
政府や大企業はなぜBoxを導入するのか?Box Japanに聞いてみた
2017年12月27日 11時00分更新
ここまで連続3回で「Box」の活用法を紹介したが、今回は締めの回ということで、Box Japan セールスエンジニアリング部 シニア・マネジャー 西 秀夫氏にいろいろとインタビューしてみた。
グローバルに展開するBoxの中で存在感を持っている日本支社
「Box」は2005年にアーロン・レヴィCEOがアメリカで設立。現在はイギリスやカナダ、オーストラリアなどグローバルに展開している。3番目にオープンした日本では、2013年8月からBoxジャパンとしてスタートしている。代表取締役社長は古市克典氏で、現在4年目となる。
Boxは世界7万6000社以上に採用され、フォーチュン500の中で65%の企業が利用しているほどの人気を集めている。AirbnbやGEといったグローバル企業をはじめ、日本国内ではJALや資生堂、東急電鉄といったそうそうたる面々が採用している。売り上げの規模も成長率も順調のようで、「外資系の日本支社としては、売上比率が高く、グローバルの中でもフォーカスが当たっています。日本語化のスタッフも日本にいて、これだけの規模でチームが日本にいる外資系企業は少ないと思います」と西氏。
Boxはさまざまなイベントを行なっているが、10月には世界最大となる「BoxWorks」をサンフランシスコで開催した。このイベントに次ぐ規模で行なわれるのが「Box World Tour Tokyo」で、今年は6月9日に開催された。日本がアメリカに次ぐ規模ということから、マーケットとして重視されていることがわかる。
Boxは通常、クラウドストレージサービスとして紹介されることが多いし、本連載でもその単語を使っている。しかし、インタビューの冒頭でBox側としては、自分たちのことを「コンテンツマネジメントプラットフォーム」と定義づけていると明言された。
「コンテンツを中心にコミュニケーションを加速させる、というのが我々のミッションです。ストレージの容量を無制限にしているのには意味があります。企業のコンテンツをBoxにすべて集めることで、さまざまなシステムと連携できるようになります。フロントエンドは今まで使っていたサービス、たとえばkintoneでも、コンテンツの保存先はBoxにできるのです」(西氏)
たとえば、移動中にBox内のコンテンツを見て申請に許可を出したり、資料の修正指示を出したりできる。ファイルをダウンロードして修正、アップロードするという手間なしにプレビューできるので、手間も省ける。また、企業のM&Aを進める際、ネットワーク統合にはこれまで2~3ヵ月かかっていたが、Boxで必要なファイルを即共有するといった使われ方が増えているそう。インフラも強固で、ファイル履歴を取っているので、管理者権限を持っているユーザーが退社する際にデータもログも削除して復活不能にしてしまう、と言うこともできないとのこと。
「Box Capture」というスマホアプリで撮影した写真を直接Boxに保存することで、シームレスなデータ共有もできる。たとえば、工場を持っている石油会社では、従来ベテランと新人が一緒に出向き、どうしようと話していたそう。それが今では、新人が1人で行って写真を撮り、ベテランはBox上でコメントを付けられるようになり、労働時間の短縮と知の共有を同時に実現できた。
便利そうだなというのはわかるだろうが、大企業にとって重要なビジネスの情報をクラウドに置くというのは不安に感じるところ。その点、西氏は「アメリカ政府も使っているということで安心していただけるのではないかなと思っています」と胸を張る。
LOB(事業部門)を起点としてBoxの全社導入が進む
「Boxの販売をする際、IT部門の方とLOBの方が同席することが多くなってきています。ITの方だけだと、判断が付かないことが多くなっているのです」(西氏)
たとえば、企業が使っているファイルサーバーに外部の共有者を呼ぶ場合、LOBからIT部門に申請が行くが、IT部門にはその相手が正しいかどうかを判断することはできないという。Boxであれば、特定のフォルダーに関しては、プロジェクトマネージャに権限を渡してしまい、管理を任せてしまえる。IT部門はその箱(フォルダーとアクセス権限)を用意し、プロジェクトマネージャーに責任をある程度渡せるようになるのだ。もちろん、Boxはきっちりログを取れるので、誰が何をしたのかというのは調べればわかるようになっている。
「イメージとしては、箱の責任とドキュメントオーナーという考え方が定着し始めたのかなと思います」(西氏)
Boxの導入に関して相談をしてくるのは、やはりLOBが多いという。そこからIT部門に話が行き、IT部門と話すと、だったら全社導入した方が効率良さそうだという話になるケースが多いそう。
国内での契約が多いのはEnterpriseプランとのこと。1万ユーザー以上の規模で導入する企業も多く、販売は基本的にパートナーを介している。Boxのウェブサイトから契約すること可能だが、支払いはクレジットカードのみだし、ボリュームディスカウントもできない。そもそも、アメリカのセールスチームに引き渡されるだけなので、企業として契約するなら販売パートナー経由で契約することになるだろう。
Businessプランだと外部ユーザーとデータを共有する際にお金が発生してしまう点がネックになる。販売パートナーが扱うプランにはBusinessプランに外部ユーザーも追加なしで利用できるオプションが付いたBusiness Plusプランも用意されている。しかし、さらにセキュリティー設定が充実しているEnterpriseプランが選ばれているそうだ。
Business Plusプラン以上のユーザー向けに「Box Relay」というオプションも登場した。IT部門がテンプレートを作って、LOB側に渡すという、ワークフロー作成機能だ。たとえば、ここでファイルをアップロードして誰かの承認を得て、その後コメントを入れるといったステップだけ決めるものだ。
「現在は、IT部門がビジネスの全要件定義をするのは難しくなっているので、テンプレートのような機能を用意しました」(西氏)
政府の重要データも預けられるセキュリティー要件をクリア
クラウドサービスはおしなべて強固なセキュリティーを謳っているものだが、Boxの力のいれ具合は半端ではない。政府やグローバル企業がデータを安心して保存、運用できるような体制を整えているのだ。
わかりやすいのが規格だろう。情報資産を守るためのセキュリティー規格である「ISO 27001」や医療情報を扱うプラットフォーム規格「HIPPA」「HITECH」など多数の規格に対応している。「FedRAMP」というあまり知られていない規格もサポート。これは、アメリカ連邦政府が、クラウドサービスを選定するための基準で、マイクロソフトのような超大手しか取得していないそう。これも政府に採用されているBoxの信用度を表しているといえる。
「ISO 27018」にも対応しており、ユーザーが保存しているデータにはBoxはアクセスせず、もし公開しなければならない際も必ず連絡するというフローになっている。導入前の企業からは、よくアメリカ政府がデータを覗くのでは? と聞かれるそうだが、その点も安心だという。
さらに、データを保存するサーバーの物理的な位置を気にするケースもあるという。たとえば、個人情報保護法が厳しいヨーロッパでは、GDPRという規則によりデータをEU圏内に置いておく必要がある。日本でも医療や防衛に関する情報は国内に保存しなければいけないし、そうでなくてもやっぱりデータは国内に保存しておきたい、という企業が多いらしい。そこで「Box Zone」というオプションサービスを用意。アメリカを始め、カナダ、ドイツ、日本、オーストラリア、シンガポールといった地域を選べるようになっている。もちろん、処理(プロセッシング)はアメリカで行なわれている。
Boxは普段からユーザーのデータに直接アクセスできるような状態にはなっていないのだが、政府関係や国家機密を扱うGEのような大企業では、暗号化に使う鍵管理自体もユーザー側で管理する機能「Box KEYSAFE」も用意している。
ほかにも、Boxは当然通信経路やアップロードされたファイルすべてを暗号化してデータを保護している。その上で、VPN(Virtual Private Network)を張りたいという企業もあるそうで、それにも対応できるという。
Boxは積極的に新機能の開発も続けており、2017年10月に開催された「BoxWorks 2017」では「Box Skills」が発表された。
「文章は検索が簡単ですが、動画や音声、写真などはファイル名とかでしか検索できません。これをAIと連携させて、誰が話しているとか、どういうことを話しているとか、文字として起こしてあげましょうという機能です」(西氏)
「Box Skills」は2018年に登場予定とのこと。
ビジネスクラウドサービスの中でBoxが急成長し、現在も好調だというのは知っていたが、今回まる1ヵ月間レビューし、担当者にインタビューしたことでその理由を体感できた。とにかくどんな大規模な組織でも安心して利用できるように万全を期しており、その信頼性は中小企業にも刺さると言うこと。そして、実際導入・運用コストがそれほど高くないというのも魅力的だ。新機能の追加も楽しみだが、今後も鉄壁のセキュリティーで企業のデータを守り続けてくれることだろう。
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