KAGRAに入るまで
KAGRAは旧神岡鉱山内に約3000mの真空ダクト×2と中央実験室、および2つの末端実験室があり、施設には専用のトンネル「かぐら」を通って入っていく。山中に施設があるのは、用地確保もあるが、地震による影響のほか、風や波などによって励起される地面の振動の影響を減らす目的もあり、旧神岡鉱山内の振動は地上の1/100ほどなのだという。地上で震度3の地震が起きたとしても、施設内では震度1以下といった具合である。
すべてが集約している
中央実験室
まずは中央実験室から見ていこう。中央実験室にはレーザー光源があるほか、レーザー周波数の安定化装置、レーザー光誘導鏡、ビームスプリッター、アーム端部用の鏡、鏡用の防振装置がある。
ダクト以外はクリーンルーム内に設置されている。写真で見てもわかるが、厳密なクリーンルームは限られており、大半は、ISO Class4から5程度の簡易的な構造のクリーンルームだ。
また、中央実験室には地上施設から乾燥空気が送風されているほか、約300台のクリーンブース用フィルターファンユニットによる発熱により、室温約26度、湿度約65%で釣り合っている。
レーザー光源は波長1064nm、出力は将来的には180Wを見込んでいるが、現在は2W程度で運用しており、レーザー室は他のクリーンルームよりもレベルが上のISO Class 1となっている。
ここから発振されたレーザーは、レーザー予備安定化装置に向かい、レーザー光線の形状を真円に近づけられ、レーザー径拡張装置などで直径約6cmにまで拡大されて、ビームスプリッター(合成石英、直径37cm、厚さ8cm)に向かう。
ビームスプリッターはL字の交差点にあり、入射されたレーザー光を2方向に分ける仕組みだ。XアームとYアームに送られたレーザー光は、末端にある鏡で折り返し、レーザー光強度増幅部でまた強度を高めて、再びアーム側に送られる。
従来のレーザー干渉計は、そこで終わりなのだが、重力波はレーザーの走行距離が長いほど、観測しやすくなるため、ビームスプリッター付近に鏡を置いて、アームごとに500回の往復をさせて、距離を稼いでいる。それから末端である高感度化光検出部で干渉縞を検出する、といったのが中央実験室の役目だ。