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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第433回

業界に痕跡を残して消えたメーカー 買収で事業を拡大し自社株買収で沈んだミニコンメーカーPrime

2017年11月13日 12時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/) 編集●北村/ASCII.jp

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 今回紹介するPrime Computerはこれまでに2回、名前が出てきている。1回目はBob Rau博士のCydromeで、同社のCydra 5向けに資金提供していたのがPrime Computerだった。

 2回目は連載425回で、John William Poduska Sr.博士がApollo Computerの前に創業した会社、という位置付けだ。

Multicsを開発したメンバーが
低価格なミニコンピューターを製造

 話は1964年代に遡る。GEとBell研究所、MIT(マサチューセッツ工科大学)はまったく新しい、Multicsと呼ばれるOSの開発を始める。UNIXとの対比(Multics開発の過程で得られた反省を元に、機能のシンプルな実装を目指してUNIXは作られた)としてその名前は知られている。

 ちなみに誤解されている節もあるが、Multicsそのものの開発はBell研究所こそプロジェクトから脱落したものの、MITとGEで引き続き行なわれ、最終的にHoneywellやGEのマシンに搭載されることになった。

 William Poduska博士ら数名はまさにこのMulticsプロジェクトに関わって働いていた。プロジェクトが終了した1970年台の初期に彼らは相次いでMITを離れるが、そうしたメンバーが集まって作られたのがPrime Computerである。

 創業は1972年で、創業メンバーはRobert Baron氏(CEO)、Sidney Halligan氏(営業担当副社長)、James Campbell氏(マーケティングディレクター)、Joseph Cashen氏(ハードウェアエンジニアリング担当副社長)、Robert Berkowitz氏(製造担当副社長)、William Poduska氏(ソフトウェアエンジニアリング担当副社長)、John Carter氏(人事担当ディレクター)の7人である。

 1970年代前半というのは、従来のIBMやCDCといった大型なコンピューターが幅を利かせていた市場に、DECやData Generalといったメーカーが16bitの低価格マシンで斬り込みをかけ始めた時代である。

 この市場にPrime Computerは、まず最初は16bitのPrime 200というマシンで参入した。ちなみにPrime 200、アドレスは32bit、データは16bitというやや変則的な構成で、これもあって32bitマシンとする向きもあるが、Prime Computerが出した資料そのものに“The PRIME 200 is a fully parallel, 100% rnicroprogrammed, 16-bit computer.”とあるので、16bitマシンとしたいと思う。

Prime 200のブロック構成。メモリーは8KWord(16KByte)単位で最大64KBまで実装可能。アクセス時間750ナノ秒のMOS Memoryが搭載された

 性能そのものはそれほど高くなかった(0.1MIPS程度と言われている)が、フルプログラマブルの命令セット(すべての命令が64bitのマイクロコードで格納されている)、64レベルのプライオリティー付き割り込み管理、FPUの搭載など、当時としては先進的な機能も搭載されていた。

マイクロコードの構成。上の画像でプロセッサーの右にこのマイクロコードのストアー領域があるのがわかる

 ただ、Prime 200の場合はそのハードウェアよりもソフトウェアがメインだった。下の画像がPrime 200のモットーである。そのOSはPrimosと呼ばれていたが、当然ながらこれはMulticsの影響を強く受けるものであった。

Prime 200のモットー。あくまでもハードウェアはソフトウェアに従属するもので、ソフトウェア環境そのものが同社の販売物である、と明確に断じているあたりが潔い

 もちろんMulticsそのものではなく、開発陣(主にPoduska博士)は彼らなりにMulticsの利点と欠点を見極め、その結果としてPrimosを生み出している。部分的にはUNIXのような面も持っていたが、同じくMulticsの反省から生まれたUNIXとはいろいろ異なる部分もあった。

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