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どんなワークロードでもAWSの半額以内で提供できる

なぜAWSを使う必要があるのか? エリソンCTO、Oracle DB 18cを語る

2017年10月04日 07時00分更新

文● 大河原克行

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米オラクルは、2017年10月1日~5日(現地時間)、カリフォルニア州サンフランシスコのモスコーニセンターで、Oracle Open World 2017を開催している。米オラクルのラリー・エリソン(Larry Ellison)経営執行役会長兼CTOが登壇した初日の基調講演で主題となったのは、2017年12月に発売する自律型データベース「Oracle Database 18c」。「世界初」を謳うセルフドライビング(自律型)データベース「Oracle 18c Autonomous Database」の紹介に多くの時間を割きながら、エリソン氏は「なぜAWSを使う必要があるのか」と終始AWSを牽制し続けた。

全世界で6万人が参加する今年のOracle Open World

 「Your Tomorrow,Today」をテーマに開催した今回のOracle Open World 2017には、全世界から6万人が参加し、1800万以上のネット視聴を予定している。会期中には2311のセッションが行なわれるとともに、523の新たな技術が公開される予定だという。また、併設される展示会場には、今回から「THE ORACLE OPENWORLD EXCHANGE」という名称が付けられ、500人が収容できるORACLE AREANAを設置。そこでセッションなどを開催するといった新たな取り組みも行なっている。

 さらに、今回のOracle Open World 2017では、5000社のデベロッパーが参加する「Java One 2017」や、オラクルが買収したネットスイートが開催するプライベートイベントの「Suite Connect」も併催されている。

 会場は今年もサンフランシスコのモスコーニセンター。オラクルでは、サンフランシスコ市への経済効果は1億9400万ドルと試算しており、同イベントの影響力の高さを示している。日本からは約400人のパートナー企業および顧客企業が参加しており、日本オラクルからも、フランク・オーバーマイヤー(Frank Obemeier) CEOをはじめ、多くの社員が参加している。

 Oracle Open Worldは、日曜日夕方に行なわれる米オラクルのラリー・エリソン(Larry Ellison)経営執行役会長兼CTOによる基調講演で幕を開けるのが恒例であり、今年も同様に、日曜日の10月1日午後5時から、基調講演(オープニングキーノート)が行なわれた。

自動化でデータベースプロフェッショナルの仕事は増える

 「Oracle Autonomous Database and Highly Automated Cyber Security」をタイトルで講演したエリソン氏は、Oracle Database 18cについて「自律した運用により、可用性は99.995%に達する。これは1年間に、30分間のダウンタイムで済むことにつながる。また、自動的にチューニングを行なうため、コンピュータリソースを柔軟に、効率的に使うことができる。必要なときに16プロセッサに拡大したり、クエリが終わると8プロセッサに自動的に戻すことができる」などとアピールした。

米オラクルのラリー・エリソン経営執行役会長兼CTO

 今回のOracle Database 18cでは機械学習を大きく取り入れている。エリソン氏は、「自律型の環境を実現するには、機械学習が重要であり、オラクルはそこにも取り組んでいる。人が介在しないということはヒューマンエラーがなくなることにもつながる。あまり認めたくないが、飛行機を操縦する場合に、私が操縦するよりも、機械が操縦した方がエラーがなくて済む。これと同じだ。そして、データは社内から盗まれることが多いが、人が介在しないということは、盗む機会を与えないともいえる。これによって、自律した環境でありながら、データを盗まれず、安定した運用が可能になる」などとした。

 自動化することで、データベースプロフェッショナルの仕事を奪ってしまうのではないかという懸念もあるが、「逆にもっと仕事が増えるだろう。たとえば、自動化すれば、パッチやバックアップなどは任すことができ、データベースデザインやデータアナテリティクスなどに時間を割くことができるようになる。また、ポリシーの設定やディザスタリカバリーの設定などにも取り組むことができる。データにセキュリティを持たせることにも力を注ぐことができる」と述べた。

 また、エリソン氏は「サイバーセキュリティで大切なのは、データを盗まれないことである。そうした観点から考えると、自律型データベースであるOracle Autonomous Databaseにデータを格納することが最適である」と説明。オラクルでは自律型データベースと自律したセキュリティを、いっしょに機能するように開発を進めているとのこと。また、プロビジョニングやパッチの適用、アップデートやチューニングも自動で行なうため、人手が介さないで利用できるという。

AWSに比べて半額以内のコストになることを契約書に明記する

 「AWSに比べて、Oracle 18c Autonomous Databaseのパフォーマンスは圧倒的に高く、しかもコストは半分以下にできる。なぜAWSを使う必要があるのか」とアピールするエリソン会長兼CTO。昨年と同様、AWSに対する「口撃」は、今年も留まるところを知らなかった。

 「Amazon Elastic Compute Cloud(EC2)は、名前とは違って、実際には柔軟性がない。AWSはElasticではない。AWSは、自動的にプロセッサの数を増やすことはできない。ワークロードにあわせて変化させることはできない。一度システムをシャットダウンして、ハードウェアを割り当て、データをコピーして、新たなもので利用することになる。そしてアップデートもパッチも、チューニングも、すべてマニュアルである。オラクルこそが、Elasticなクラウドサービスを提供している」と語る。

 エリソン氏は、Oracle Autonomous Cloud Databaseと、AWSでOracle DB、Redshiftを稼働させた場合を比較し、コストパフォーマンスにも言及。「Oracle Autonomous Cloud Databaseは、ワークロードは何であろうとも、AWSで稼働させた場合に比べて、半額以内のコストで提供できる。これをOracle Autonomous Cloud Databaseの契約書のなかに明記することにする」などと説明。

AWSで稼働させた場合に比べて、半額以内のコストであることを保証するという

 「Autonomous Databaseは、Exadataでも稼働し、オンプレミスでも、Oracle Cloudでも利用できる。先週、新たなライセンス体系として、BYOL(Bring Your Own License)を発表したが、これはすべてのPaaSに適用できるもので、Autonomous Databaseでも、これを活用することで大幅にコストを下げることができる」と述べた。

 また「AWSの契約書には、『セクション60』と呼ばれる表記部分があるが、ここでは可用性の保証の例外について示している。除外となるのは、コンピュートやストレージを追加している時や、AWSの計画的なメインテナンス時間、パッチを当てる時間、アップデートしている時間、ソフトウェアのバグが発生したとき、地域に停電が発生したときも例外としている。除外ばかりである」と指摘した。

AWSの契約書の可用性の保証の例外

Amazonはオラクルの最大手ユーザーであり、昨年は6000万ドルを使っている

 エリソン会長兼CTOは、後半の約25分を使って、6つのデモストレーションを行った。これらはすべて、先に触れたように、Oracle Autonomous Cloud Databaseと、AWSでOracle Databaseを動かした場合、AWSでRedshiftを動かした場合との比較となった。ここでは、金融業界でのアナリティクス、マーケットリサーチにおけるアナリティクス、保険業界でのアナリティクス、小売業でのアナリティクスといった異なる顧客の事例を用いて比較した。

 最初の比較は、Oracle DBをOracle CloudとAWSで動作させた時である。金融業界でのアナリティクスでは、ワークロードが完了するまでに、AWSでは255秒、利用料金は0.23ドルであったのに対して、Oracle Cloudでは34秒、0.04ドルで済んだことなど、次々とその差を見せつけた。

Oracle CloudとAWSのコスト比較

 さらに、Oracle Autonomous Cloud Databaseと、AWSでRedshiftを動作させた時には、さらに差が広がるとし、同じく金融業界でのアナリティクスでは、AWSの環境では247秒、0.27ドルかかることなどを示した。「パフォーマンスを得るために、安い費用を支払うという矛盾した状況が生まれることになる。AWSは、価格は9~15倍になる。私は契約書のなかにAWSの半額にすると書くことを宣言したが、半額でも余裕である。十分約束できる。また、自律化しているため、人件費も不要になる。それにも関わらず、どうしてAWSを使う必要があるのか。実際に試して比較してほしい」(エリソン氏)。

 最後にエリソン氏は、「Amazonは、オラクルの最大手ユーザーであり、昨年は6000万ドルを使っている。この金額は毎年増えている。SAPも同様で、Success Factorなどの3つの主要なサービスのすべてにオラクルの技術を活用している。競合他社は、オラクルの技術が優れていることやコストが安いことを理解している証だ」との持論を展開し、基調講演を締めくくった。

 なお、Oracle Database 18cは、「Autonomous Data Warehouse Cloud Service」が2017年12月に、「Autonomous OLTP Database Cloud Service」を2018年6月にラウンチされる。その他、「Autonomous Express Database Cloud Service」および「Autonomous NoSQL Database Cloud Service」も、2018年に開始するという。

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