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空気をきれいにして良質な睡眠を:

日本は睡眠不足で約15兆円の経済損失がある

2017年07月12日 07時00分更新

文● 盛田 諒(Ryo Morita)

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 空気清浄機ブルーエア販売代理店セールス・オンデマンドが11日、睡眠の専門家・三橋美穂さんを講師に招いた勉強会「今、なぜ睡眠が注目されるのか 『空気の質』は『睡眠の質』」を開催した。「睡眠負債」などという怖いワードも話題になっている折り、知見を共有したい。

睡眠の専門家 三橋美穂さん

睡眠不足は経済損失に

 睡眠時間は日本人の欲しいものNo.1だ。博報堂生活総合研究所発表「2017年に力を入れたいこと」第1位は「睡眠・休息」(82.6%)。同研究所の「生活定点調査」によれば、「増やしたい時間」は昨年初めて「睡眠時間」が「趣味にかける時間」を上回った。

 厚労省「国民健康・栄養調査」によれば、日本人の平均睡眠時間は2015年時点で「6時間未満」が4割。三橋さんによれば6時間未満というのは「非常に短い」。6時間を切ると脳機能が低下して日中の活動に支障をきたすため、健康のためには7時間前後がよいという。

 『睡眠とメンタルヘルス』(ゆまに書房)によれば、睡眠時間は夏がとくに短い。夏は夜明けが早く、蒸し暑く寝苦しい。睡眠時間が短く、睡眠の質も悪化するのが夏だという。

 良い睡眠がとれないと次のような悪影響があるという。

■睡眠不足の悪影響
・集中力が下がる
・記憶力が落ちる
・ミスが増える
・事故が増える
・疲労感が増える
・病気のリスクが上がる
・幸福感が下がる
・肌あれ・くすみ
・老化が進む

 このほか、食欲ホルモンも増えるため太りやすくなってしまう、カップルは寝不足になるとケンカしやすいという研究もあるという。睡眠不足がつづくと脳がうつ症状に近い状態になることもあるそうだ。おそろしい。

 睡眠不足は経済損失にもつながるという。米ランド研究所(RAND Corporation)によれば、日本の睡眠不足による経済損失は1380億ドル(約15兆円)、GDP比では先進国ワースト1位の2.92%。睡眠不足が産業事故につながるものとして損失額を見積もっているそうだ。

三橋さん作成資料より


良い睡眠には良い寝室

 眠りのしくみはどうなっているのか。

 眠りの深さには4段階あり、1段階目が「レム睡眠」、2~4段階目が「ノンレム睡眠」、3~4段階目の深い眠りが「除波睡眠」と呼ばれている。レム睡眠は夢を見ながら記憶を整理する眠り、除波睡眠は大脳を休めて成長ホルモンの分泌を促す深い眠りだという。

 三橋さんによれば、良い睡眠は「深い除波睡眠に入り、長く時間をとれている」。逆に悪い睡眠は「寝つきが悪く、眠りが浅く、何度もめざめて、レム睡眠が短い」。どうすれば良い睡眠がとれるのか。条件は5つあるという。

■良い睡眠の条件
1. 体内時計が整っていること
2. 疲れがたまっていること
3. 体温のメリハリがあること
4. リラックスしていること
5. 寝室が快適であること

 1の体内時計は、毎朝同じ時刻に起きてリセットしなおすのが大事だという。休日に遅くまで寝るなど不規則な睡眠をとっていると時差ボケ状態になってしまうそうだ。

 2の疲れは、適度な疲労感があると疲れに比例して眠気も強くなっていくという。夕方以降にうたた寝をしてしまうことに注意が必要になるそうだ。ありがちな話らしい。

 3の体温は、寝る前にちょっと上げておくと良いというもの。寝る1~2時間前にお風呂に入っておくと良いそうだ。

 5の寝室は、内訳でいうと「寝具」「温度・湿度」「光・音」「パジャマ」などがあり、知られていないのが「空気」だという。

 独立行政法人建築研究所村上周三理事長の「住まいと人体」によれば、人が体にとりこむ物質の8割は空気で、うち6割は室内の空気だ。中でも寝室の空気は汚れていることが多いと三橋さんはいう。

■寝室の空気の汚れ
・外気の汚れ
・寝具の衣類、綿ぼこり
・ダニの死骸、糞
・カビ(北向が多い)

 寝室の空気が汚いと睡眠にどう影響するか。

 呼吸が浅くなり、緊張がとけなくなり、酸素量が減ってしまう。吸い込んだ異物の除去にエネルギーを使ってしまい、細胞の修復に回らなくなる。結果、疲れがとれにくくなり、睡眠の質が低下してしまうのだという。

 ちなみにブルーエアの空気清浄機にも音や光に配慮した夜間運転モードがある。空気の供給量は毎分2.8立方メートルで、他社の同モードと比べても約2~3倍にあたるという。同社のアプリ「Blueair Friend」は空気清浄機と連携し、夜間の運転速度やLEDの明るさを曜日・時間単位で設定できるようになっている。

ブルーエアの空気清浄機


睡眠は精神主義の象徴

 いまなぜ睡眠が注目されるのか。

 三橋さんによれば、今までは物質的な豊かさや幸せを求め、昼の活動に力を注いできた。しかし光が光として輝くには闇が必要であり、闇が濃いほどに光の輝きは増すものである。光と闇は2つで1つの関係であり、見えないものへの意識が人生の質を高めるという。

 「見えないものを意識することが睡眠の質を高め、ひいては人生の質につながる」というのが三橋さんの持論だ。行きすぎた物質主義に精神主義へのゆり戻しが来ているという考えはおもしろい。今日はいつもより早めに眠りたい。睡眠前のスマホもやめておこう。




書いた人──盛田 諒(Ryo Morita)

1983年生まれ、家事が趣味。0歳児の父をやっています。Facebookでおたより募集中

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