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テレワーク・デイを前に「スマートデバイスの業務利用動向」調査報告を発表

ヴイエムウェア社長、自社の実例も交え“柔軟な働き方”を語る

2017年07月05日 07時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

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 ヴイエムウェアは7月4日、今月24日の「テレワーク・デイ」実施を前に、「ビジネスにおけるスマートデバイスの利用動向」アンケート調査結果を発表した。記者説明会には同社社長のジョン・ロバートソン氏に加え、国のテレワーク推進施策に提言を行う田澤由利氏らが出席し、調査結果の報告や分析に加えて、これまでヴイエムウェア自身がどのように“柔軟な働き方”を実現してきたかが紹介された。

(左から)ゲスト登壇したテレワークマネジメント 代表取締役の田澤由利氏、ヴイエムウェア 代表取締役社長のジョン・ロバートソン氏、同 マーケティング本部 チーフストラテジスト プロダクト&ソリューション-EUC/IoTの本田豊氏

“テレワーク”のテーマに合わせ、記者説明会は東京・大手町のコワーキングスペース「SPACES 大手町ビル」で開催された

「スマートデバイスのフル活用」や「経営者/社員双方の意識改革」が課題

 今回発表されたのは、今年4月、業務上でスマートデバイス(スマートフォン、タブレット)を利用している国内のビジネスパーソン約500人(管理職/118人、一般社員/401人)を対象に行われたインターネット調査の結果。ヴイエムウェアでは、この結果を「調査レポート ビジネスにおけるスマートデバイスの利用動向」として公開している(PDFへのリンクは本文末)。

 調査結果に基づき、ヴイエムウェアでは、テレワーク推進に向けた課題として「スマートデバイスのフル活用」と「個人契約デバイス利用のリスク低減」「経営者/社員双方の意識改革」の3点を指摘している。

調査結果の主なポイント

 業務でのスマートデバイスの利用用途に関する調査結果では、「通話」(79.2%)が圧倒的に多く、以下「メッセージングアプリ(LINE/SNSなど)」(45.7%)、「スケジュール管理」(42.6%)と続く。一方で「OfficeなどPCでも使用するアプリ」(19.3%)や「会社支給のモバイル用業務アプリ(Salesforceなど)」(12.5%)などは低い利用度にとどまっている。

 同社 チーフストラテジストの本田豊氏は、この結果について「旧来の(携帯電話時代の)使い方とほとんど変わらない」「スマートデバイスのメリットを業務に十分活用できていない」と指摘。その背景には「セキュリティ上の懸念」や「業務システムのモバイル対応の遅れ」「業務プロセス改善の遅れ」などがあるのではないか、と語った。

調査結果「スマートデバイスの業務上の用途」。スマートデバイスならではの高度な機能の活用度が低い

 業務で使用しているスマートデバイスの契約形態については、「会社支給の端末」(40.8%)よりも「個人契約した端末」(58.8%)のほうが多い結果となった。これについて本田氏は、なしくずし的に個人端末が利用されているケースも多いのではないかと述べ、そのような場合にはセキュリティ/管理レベルにばらつきがあり、リスクの高い状態になっている可能性があると指摘した。

 ちなみに、業務利用するスマートデバイスにMDM/EMMのようなモバイル管理ツールが「何も入っていない」(52%)という回答が、「導入されている」(28%)を大きく上回っている。

調査結果「使用しているスマートデバイスの契約形態」。個人契約の端末が約6割で、セキュリティ対策や管理が行き届いていない可能性がある

 テレワークや在宅勤務が、政府が進める「働き方改革」に「貢献する」(54.5%)と考える回答者は多いものの、実際に自社でテレワークや在宅勤務を「導入したい/させたい」(46.6%)回答者は半数を割り、およそ4人に1人は「導入したくない/させたくない」(25.4%)としている。「導入したくない」理由については「持ち帰り残業が増える」(59.1%)が過半数となり、経営者側だけでなく従業員側の意識改革も同時に必要だと、ヴイエムウェアでは指摘している。

 本田氏は、テレワーク導入が「正直進んでいない」と現状を表現し、その大きな理由を上記のように説明した一方で、それでも少しずつポジティブな動きは出てきているとまとめた。

 「3年前の調査では『ノートPCの社外持ち出し禁止』が70%を占めていたが、現在は60%程度(の企業)で許可されるようになっている。テレワークをめぐる状況、考え方はかなり変わってきている」(本田氏)

「会社に長時間いて『頑張った』というのは、お客さんの満足度とは関係がない」

 ヴイエムウェア日本法人社長のジョン・ロバートソン氏は、「柔軟な働き方」のために同社が取り組んでいることを紹介した。「VMware Horizon」や「VMware Airwatch」などのソリューション群の提供を通じて、場所やデバイスを問わず、すべての業務アプリケーションを利用可能にする「デジタルワークスペース」環境の実現を提唱する同社では、社員が柔軟に働ける「文化」を大切にしているという。

場所やデバイスを問わず、すべての業務アプリケーションを利用可能にする「デジタルワークスペース」環境を提唱している

 その施策のひとつが「Work@Anywhere」だ。社内のフリーアドレス化に始まり、カフェテリア風でオープンな雰囲気のミーティングスペースの設置、さらにはオフィス以外での勤務も可能にするルールなど、働き方の自由度を高める取り組みを続けてきた。有給休暇も積極的に取得するようトップダウンで促しており、自身も毎年2週間半の夏休みを取って故郷のカナダに帰国しているという。

 ロバートソン氏自身は、大学卒業後すぐに東京で働き始め「日本のサラリーマン文化で育った」(同氏)。その後、シンガポールのVMware ASEANオフィスに赴任したことで、日本の企業文化の良い面、悪い面がわかったという。日本のサラリーマン文化は「チームワークや顧客へのサポートは最高」である一方、働き方の効率性は低い。シンガポールでは、ASEAN各国間のやり取りはすべてリモートミーティング(Web会議/電話会議)を使うなど、ITツールを徹底的に活用して効率的な働き方が実践されており、成果もきちんと出ていた。

 「(日本のサラリーマンが)会社に長時間いただけで『頑張りました』というのは、お客さんの満足度とは関係がない。たとえば、毎日夕方に会社へ戻って報告するのをやめれば、もう1社別のお客さんと会えるかもしれない。お客さんの満足度も、社員自身の満足度も、そして仕事の効率も上がる」(ロバートソン氏)

 ロバートソン氏は、柔軟な働き方や安全なテレワークを可能にするITツールはすでに何年も前から存在しており、それを実現できないのは「技術ではなく(企業や社員の)文化の問題」だと繰り返し強調した。

“柔軟な働き方”にすでに技術面での障壁はなく、一歩踏み出してほしいとロバートソン氏は訴えた

 また、ゲストとして登壇したテレワークマネジメントの田澤由利氏は、今回の調査結果でテレワークを「導入したくない/させたくない」がおよそ25%を占めたことについて、「むしろ少ないくらいだと思った」と述べ、その理由について次のように語った。

 「理由としては、それが可能であることを『知らない』ということが大きいと思う。ふだんやっている仕事が、自宅でも安全にテレワークでできるということすら知らないという層がまだまだ多いのが実態。また、孤独になるのでは、サボっていると思われるのでは、といった不安が働く側にもある。そういう考えが違うんだということを、企業側も環境整備などを通じて従業員に伝えてほしい」(田澤氏)

田澤氏は、働き方改革の目的は「経済成長」であり、長時間労働の是正はトリガーにすぎないと説明。柔軟な働き方を可能にするテレワークは、経済成長のための大きな鍵を握ると語った

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