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いま聴きたいオーディオ! 最新ポータブル&ハイエンド事情を知る 第9回

予算があるなら間違いなく買い!! Hugo2は現行USB DACの最適解のひとつだ (3/3)

2017年04月27日 13時00分更新

文● きゅう 編集●ASCII

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約3年の進化によって、最先端のスペックを手に入れた

 性能面では世代を重ねることで当然のように進化を遂げている。まずUSB接続時に再生可能なフォーマットがPCMの場合768kHz/32bitまで、DSDの場合最大22.4MHzまでのネイティブ再生に対応する。入力端子はMicor-USBのほか、同軸(3.5mm)/光デジタル入力を持つ。USB Audio Class 2.0対応機器だが、Windows 10 Creators Updateの標準ドライバーではうまく動作しなかった。そのためWindows環境では、Chord専用のドライバーをインストールする必要がある。FPGA(Xilinx Atrix-7)などハード面ではMojoと共通する部分が多く、ドライバー自体はMojoと共通化されているようだ。

 Hugoが登場したのは2014年だが、そこからHugo2が出るまでの3年間にChordは、より小型の「Mojo」、Hugoより一回り大きなデスクトップ機「Hugo TT」、そして価格162万円のフラッグシップ機「DAVE」などをリリースしている。

 技術的な詳細は発表会レポートのほうを参照してほしいが、世代を重ねることで、FPGA上に組んだデジタルフィルター処理の精度が向上し、より緻密な再生が可能となった。

 大きなところでは、Chordが独自にプログラミングしたデジタルフィルター(WTAフィルター)のタップ数がHugoの2万6000から、約5万タップのほぼ倍に増えた点が挙げられる。内部的には256fs(最大12.2MHz)と相当に高い精度が得られる。またDSD再生時の高周波ノイズが大きく改善されている。

 「DAVEを除けば最も高いパフォーマンスを持つ製品」とChordは言う。DAVEはハイエンド機種ということもあり、約16万4000タップの処理となっている。単純な数字の比較では、さすがに及ばないのだが、価格差も6~7倍あるので、考えようによってはお買い得かもしれない。DAVEの圧倒的なパフォーマンスを手に入れるにはかなりの財力が必要だが、Hugo2なら何とか手が届きそうだ(国内での販売価格は未公開だが、20万円台になる見込み)。そういう意味でも注目したい製品だ。

 またヘッドフォンアンプ機能に関しても、高出力かつ低インピーダンス負荷となっており、幅広いヘッドフォンに余裕をもって対応できる。広いダイナミックレンジ(126dB Awt)、低い歪み率(0.0001%、3V、300Ω)、低い出力インピーダンス(0.025Ω)など、スペック値も極めて良好である。

 数字を羅列してもイマイチ伝わりにくい部分ではあるのだが、驚異的な性能を持つと言っていいと思う。

ヘッドフォン再生でも据え置き設置でも快適に使える

 バッテリー内蔵のポータブル機であるHugo2だが、もちろん据え置きでの利用も可能だ。LINE出力には音量調節機能が付いているため、スピーカー駆動のためにプリアンプは必要ない。例えば大型のフロア型スピーカーと、それを駆動するためのコンパクトなパワーアンプを用意し、その上流にこのHugo2を据えるといった使い方ができてスマートだ。再生機器はパソコンでもいいが、より手軽にスマホやハイレゾプレーヤーのUSB出力を使う手もある。

 自宅の単品コンポと組み合わせてみたが、フルサイズのSACDプレーヤーと比較しても全く遜色ないクオリティーという印象だった。

送り出しにAK380、Hugo2、HD800

 ヘッドフォンにつないで実際の音を聴いてみる。手元にあったAstell&Kernの「AK380」と比較しても解像感の高さ、質感の滑らかさなどに違いがあると感じる。

 AK380はAKMのハイエンドDACチップ「AK4490」を左右独立で搭載。さらに高精度クロックの採用などもあり、登場時点では際立った解像感の高さ、音の明瞭さに圧倒された記憶がある。その価値は今もそんなに色褪せてはいない。一方のHugo2はというと、際立った解像感や音の明瞭感がある一方で、単にクリアーであるわけではない。ざらつきなく滑らかな質感で、いい意味でごく自然に各音が立っている印象がある。市販のDAC ICでは出せない音というのも納得だ。

 ドライブ能力の高さについても言及しておこう。今回はインピーダンスが18Ωのインイヤー「Michelle」から、300Ωとハイインピーダンスなヘッドフォン「HD800」までいくつか試してみたが、音量面で不足を感じることはない。逆に不用意に音量を高くして、イヤフォンのドライバーが壊れてしまうぐらいの高出力とのことで、再生時にはきちんと音量を確かめたいところだ。

 300Ωで94mWという高い出力レベルは、HD800でも余裕という感じだが、一般的なポータブルヘッドフォンの再生のドライブ能力にも如実に影響があるという印象。Hugoよりもさらに、高いクオリティーでのヘッドフォン再生ができる点を革新した。

 デジタルフィルターの切替に関しては、標準が「白」でボタンを押すと、設定が変化する。デフォルトが最もシャープかつ高解像度でHugo2らしい設定となるが、個人的には赤で表現された「Mojo HF+」が好印象だった。特性としては「High Frequency roll off」となっており、比較的マイルドでゆったりとした感じの再生音だ。HD800での試聴では高域の抜け感などに確実な差があったが、音のキャラクターが劇的に変化するという種類のものではない。また、Michellを使った比較ではそれほど大きな差を感じなかった。

 このフィルター切り替え機能は、まず2段階(16fs/256fs)で構成されているWTAフィルターの段数を1段にするか2段にするか、次にHFフィルターを使って高域を減衰させるかどうかの組み合わせとなる。赤の表示では16fsでHFフィルターありの設定で、Mojoのサウンドに近い傾向になるようだ。個人的には高域の抜け感に差があるように感じた。

 クロスフィード(X-PHD)はHugoにも搭載されていた機能のようだ。ヘッドフォンの定位を調整する機能だが、こちらもそれほど劇的な効果はない印象だ。左右それぞれのチャンネルで発せられている信号を逆側にも少し入れることで、自然な空間表現にする考え方だが、お遊び的な要素かもしれないが、逆に言うと音がこもったり、薄くなったりといった悪影響も少ないので積極的に使ってもいいかと思う。

 PCMのハイレゾアルバムを中心に試聴を進めたところ、本体はそれなりに熱を持つ。手に持つとほんのりと汗ばむ程度で、体感上は40℃前後だろうか……。Mojoと同じFPGAを使用しつつ、その性能をフルに引き出すアルゴリズムに変更しているということなので、そのあたりが結果に影響しているのかもしれない。

明るく明瞭な音色感、滑らかな質感が好ましい

 以上、Hugo2のインプレッションを簡単にお届けしてきた。短時間ではあったが楽曲に関しては松田聖子の「赤いスイートピー」などアナログ録音をハイレゾ化した音源、昨年リリースされた宇多田ヒカルの「道」(Fantome)、RADWIMPSの「なんでもないや」、そしてシューマンの交響曲第2番などいろいろと聴いてみたが、声や弦・金管のハリ感がある一方で、響きのナチュラルさ、質感の滑らかさなどが印象的だった。

 ドライブ能力の高さから高級ヘッドフォンの潜在能力が存分に引き出せる印象があるが、据え置き利用でもそこらの単品システムを上回る高音質である。ミニマムで音のいいスピーカー再生システムの核にするのもいいと思う。今回、自宅の真空管アンプとも組み合わせてみたが、チャーミングな音を聴かせてくれた。

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