【後編】『この世界の片隅に』片渕須直監督インタビュー
片隅からの大逆転劇~Twitter・異例の新聞記事・地方の劇場で高齢者にも届いた
2017年05月28日 18時00分更新
〈前編はこちら〉
親子三代で鑑賞する光景も。高齢者にまで届いた理由は?
映画のヒットの仕方に変化が起きている。かつては映画のヒットには、宣伝と映画館というリソースを大規模に展開することが不可欠だった。ところが、近年は、口コミで徐々に評判が広がり、それに応じて上映規模を拡大しロングラン上映になっていくケースも多い。『ガールズ&パンツァー 劇場版』『KING OF PRISM by PrettyRhythm』『聲の形』など、アニメジャンルにおいては特に顕著だ。提供側があらかじめ充分なリソースを用意するのが“トップダウン型”だとすれば、観客側からの反応で徐々に拡大していくのは“ボトムアップ型”だと言える。
『この世界の片隅に』も、観客からの発信が顕著だ。プロジェクトは監督と数十名のファンから始まり、上映館数も63館というスタートだった。
それがなぜ上映館数累計300館超、観客動員はおよそ200万人、興行収入25億円突破という異例のヒットに結びついたのだろうか。謎を解く鍵の1つは“SNSを好むネットユーザーと高齢者層”。一見して関連性がない両者に何が起こったのだろうか。
片渕須直監督:プロフィール
アニメーション映画監督。1960年生まれ。日大芸術学部映画学科在学中から宮崎駿監督作品『名探偵ホームズ』に脚本家として参加。『魔女の宅急便』(89/宮崎駿監督)では演出補を務めた。TVシリーズ『名犬ラッシー』(96)で監督デビュー。その後、長編『アリーテ姫』(01)を監督。TVシリーズ『BLACK LAGOON』(06)の監督・シリーズ構成・脚本。2009年には昭和30年代の山口県防府市に暮らす少女・新子の物語を描いた『マイマイ新子と千年の魔法』を監督。口コミで評判が広がり、異例のロングラン上映とアンコール上映を達成した。またNHKの復興支援ソング『花は咲く』のアニメ版(13/キャラクターデザイン:こうの史代)の監督も務めている。
昭和20年、広島・呉。
わたしは ここで 生きている。
『この世界の片隅に』 ものがたり
18歳のすずさんに、突然縁談がもちあがる。
良いも悪いも決められないまま話は進み、1944(昭和19)年2月、すずさんは呉へとお嫁にやって来る。呉はそのころ日本海軍の一大拠点で、軍港の街として栄え、世界最大の戦艦と謳われた「大和」も呉を母港としていた。
見知らぬ土地で、海軍勤務の文官・北條周作の妻となったすずさんの日々が始まった。
夫の両親は優しく、義姉の径子は厳しく、その娘の晴美はおっとりしてかわいらしい。隣保班の知多さん、刈谷さん、堂本さんも個性的だ。
配給物資がだんだん減っていく中でも、すずさんは工夫を凝らして食卓をにぎわせ、衣服を作り直し、時には好きな絵を描き、毎日のくらしを積み重ねていく。
ある時、道に迷い遊郭に迷い込んだすずさんは、遊郭の女性のリンと出会う。
またある時は、重巡洋艦「青葉」の水兵となった小学校の同級生・水原哲が現れ、すずさんも夫の周作も複雑な想いを抱える。
1945(昭和20)年3月。呉は、空を埋め尽くすほどの数の艦載機による空襲にさらされ、すずさんが大切にしていたものが失われていく。それでも毎日は続く。
そして、昭和20年の夏がやってくる――。
スタッフ
原作:こうの史代『この世界の片隅に』(双葉社刊)/音楽:コトリンゴ/監督・脚本:片渕須直/企画:丸山正雄/監督補・画面構成:浦谷千恵/キャラクターデザイン・作画監督:松原秀典/美術監督:林孝輔/色彩設計:坂本いづみ/動画検査:大島明子/撮影監督:熊澤祐哉/編集:木村佳史子/音響効果:柴崎憲治/録音調整:小原吉男/プロデューサー:真木太郎/製作統括:GENCO/アニメーション制作:MAPPA/配給:東京テアトル/後援:呉市・広島市/助成:文化庁 文化庁文化芸術振興費補助金/製作:「この世界の片隅に」製作委員会
キャスト
のん 細谷佳正 稲葉菜月 尾身美詞 小野大輔 潘めぐみ 岩井七世 牛山茂 新谷真弓/澁谷天外(特別出演)
ロングラン上映中!
公式サイト http://konosekai.jp/ Twitter @konosekai_movie
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