
今回のことば
「製品を発売してから約20年を経過して、ようやく本当の創業期がやってきた。これまで、ずっと助走していたような感じ」(サイボウズの青野慶久社長)
サイボウズは、2017年度の事業方針を発表。「エコシステムの強化」、「海外事業への積極投資」、「新規事業への取り組み」を重点方針に掲げた。
このなかで、サイボウズの青野 慶久社長が時間を割いて説明したのが、「海外事業への積極投資」である。海外事業は青野社長にとって長年の課題であったが、ようやくその手応えを感じはじめているようだ。
海外事業への確かなKintone導入実績
そのひとつが中国に進出する日系企業700社への導入実績。「当初は上海に拠点を持つ日系企業が対象であったが、深セン、香港、蘇州にも展開し、面展開がはじまっている。先行した大企業向けグループウェアのGaroonで500社、アプリ構築プラットフォームのKintoneが200社の導入実績となっているが、直近ではGaroonとKintoneが半々」だという。
また東南アジアのバンコク、シンガポール、クアラルンプール、ジャカルタ、ホーチミン、ハノイ、マニラ、ヤンゴンといった主要都市では、パートナーとの連携によって日系企業およそ150社への導入実績を誇る。
オーストラリアでは、現地の複数企業と共同出資した販売会社「Kintone Australia Pty Ltd」を2016年9月に設立。今後オーストラリアに進出している日系企業に対して、Kintoneの導入を図るという。
そして、青野社長にとって重要な市場となるのが米国での展開だ。
Kintoneは米国の新たな潮流に乗れる
「米国市場での実績は1年前には約30社といっていたが、現在約100社への導入実績がある。米国では日系企業だけでなく、米国の現地企業への導入も始まっている」と手応えを感じはじめているようだ。
米国での主軸となるプロダクトはKintoneになるが、ここではふたつの観点から手応えを示す。
ひとつは、ガートナーのマジッククアドラントのaPaaS(application platform as a service)部門において、初めてKintoneが掲載されたことだ。
ポジションは「ニッチプレーヤー」であり、掲載された16社中ポジションはもっともひくい。だが、青野社長はこれを前向きにとらえる。
「全世界の16社のなかに、唯一の日本企業としてサイボウズが掲載された。図面の上ではあと10数cmで世界一になれる」と、ジョークを交えながらこれからが勝負との姿勢をみせる。
もうひとつは、米国における新たな潮流として「Low-code development」が注目されはじめていることだ。一部専門誌では、エンタープライズコンピューティングにおける2017年の最大のトレンドと位置づけられている。
これは、Kintoneが含まれる領域だ。Kintoneは開発の知識がなくても、直感的な操作で業務アプリを作成できるのが特徴のクラウドサービス。この流れは、Kintoneにとっても、追い風になると判断しているのだ。
「サイボウズは、Low-code developmentの盛り上がりに間に合うように米国に進出でき、勝負できる環境にいる。日本代表としてがんばりたい」と、サイボウズの青野社長は語る。
現在、kintoneの導入実績は5500社以上。Low-code developmentの動きは日本に波及すると考えており、米国での実績を蓄積しながら新たな波に乗る考えだ。
一方で、日本における事業強化にも余念がない。

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