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山根博士の海外モバイル通信 第330回

無料SIMの限界は!? 訪日外国人向け「WAmazing」を使ってみた

2017年02月24日 17時00分更新

文● 山根康宏 編集●ゆうこば

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 海外からの旅行者などが無料でゲットできるプリペイドSIMのサービスが2017年2月から始まりました。

 まずは、おもに台湾と香港からの旅行者をターゲットにしています。対応端末はiPhone、受け取りは成田空港にある無人SIMを利用するため、空港ですぐにSIMをゲットできるというわけです。

 香港が対象に入っていることで、香港在住の筆者がさっそくこのサービスを使ってみました。とはいえ、筆者のメイン機はAndroidスマホ。また、そもそも日本人が利用できるのでしょうか?

 無料SIMサービス「WAmazing」の専用アプリは、SIMの予約と受け取りだけでなく、日本での観光案内やタクシー呼び出しサービスを利用できます。

 AppStoreからダウンロードできますが、日本のストアにはありません。筆者は香港のAppStoreも普段使っていますが、そちらからは問題なく落とすことができました。

WAmazingのアプリを香港のAppStoreからダウンロード

 インストール後は言語を選べますが、英語や中国語だけではなく、日本語にも対応しています。利用にはメールアドレスとパスワードの設定、日本到着予定日やクレジットカードを登録します。

 カードはプリペイドSIMの残高追加時などに必要となり、登録必須です。登録後はアプリからSIMの受け取り申し込みを行ないます。

 申し込み完了後、約4時間でQRコードが届きます。これが日本でSIMを受け取るときに必要となるのです。

アプリは日本語対応。申請後4時間でQRコードが届く

 日本到着後は、成田空港のターミナル1にある無人受け取り機に向かいます。受け取り機のカメラ部分に、アプリに表示されるQRコードをかざして認証されると、受け取りボタンが点灯します。

 売り切れになっているボタン以外を押せば、SIMが取り出し口に出てきます。なお、案内の言語は繁体字中国語のみ。そもそも日本人はターゲットではありませんし、台湾や香港在住の日本人ならこの程度の中文は理解できるでしょう。

成田空港にあるSIMの受け取り機

バーコードを読み取らせて認識させる

ボタンを押せば自動販売機のように、SIMが出てくる

 さて、SIMを入れる前に、APN入りの構成プロファイルを入れておく必要があります。これもアプリからワンタッチで可能。

 プロファイル名に「SORACOM Air APN」とあるように、どうやら回線はSORACOMを利用しているようです。また、APNのダウンロードにはデータ通信が必要なので、成田空港の無料Wi-Fiを使いました。

 プロファイルを入れた後は、パッケージからSIMを取り出してiPhoneにセット。アプリを立ち上げれば、これで無事に使えるようになります。

 無料で利用できるのは500MB(8日間)。無料でこれだけ使えるのは太っ腹なサービスと言えます。なお、追加データは500MB/999円、1GB/1499円、1.5GB/1999円。いずれも追加すると有効期限が5日間延長されます。

パッケージにはSIMとSIMピンが入っている

プロファイルを見るとSORACOMの回線を使っている

 ところで、一番気になるのは回線速度ですね。スピードを測ってみると、上下ともに500kbps程度。回線はLTEですが、このあたりの速度に規制されているようです。

 まあ、SNSを使う程度なら十分でしょうし、なんといっても無料です。速度が必要ならばMVNOが出しているプリペイドSIMを買えば済むことです。

無料500MBのあとは、有償でデータを追加可能。通信速度は500kbps前後

 あとはアプリで観光案内を見たり、現在地などからタクシーを呼び出したりすることができますが、このあたりの機能は海外からの観光客向けのもの。

 ここで試してみたいことは、説明にない使い道でしょう。ということで、気になる点を試してみました。

1.テザリングはできるのか?

 SIMを入れた端末だけでしか使えないのはもったいないですよね。iPhoneのインターネット共有をオンにして、ほかのスマートフォンから接続をしてみました。

 結果は、問題なく接続可能。テザリングに対応しているようです。ノートPCを接続しても利用できたので、ちょっとした仕事をするときにも使えそうです。

テザリング対応。速度は遅いが他の端末からもデータ通信できる

2.Android端末で使えるのか?

 こちらが一番気になるところ。おそらく現状はアプリの対応の関係から、まずはiPhoneのみに対応していると思われます。

 そこで、SIMをAndroidに入れ、APNは無論公開されていないので、何パターンか推定してトライ。そのうちのひとつで、アンテナマーク横に「4G」の表示がされ、無事接続できました。

 まあ、端末によって使えるとか使えないなんて制限をかけているのは日本くらいで、ほかの国では「SIMを入れてAPNを設定すればどの端末でもつながる」のが当たり前なのですけどね。

Android端末に入れてAPNを手動でセット、問題なく通信できた

 なお、データをどれくらい利用したのかはアプリで確認できます。一度iPhoneからSIMを抜いてAndroid機で使い、再びiPhoneに戻してデータ利用分を確認したところ、ちゃんとAndroidで使った相当分が減っていました。

 いずれはAndroid用アプリも出てくるでしょうが、現状ではAndroidで使ったときはデータ量を厳密に管理ができないので、必要時はiPhoneにSIMを入れ替えて確認する必要があります。

アプリからデータ利用残量が確認できる。左のスクリーンショットは、SIMを入れて使い始め直後の表示

 数年前までは海外からの渡航客が買えるプリペイドSIMもほとんど無く、Wi-Fi環境も外国人にとって使いにくい国、それが日本でした。

 しかし、いまや500MBとはいえ、無料で利用できるSIMが空港で配布される時代になったとは、いい国になったものです。たとえば、買い物をすると無料データがもらえる、スーパーの会員向け無料SIMとか、ぜひ日本在住者でも利用できる無料SIMの配布をどこかの企業にやってほしいものです。

山根康宏さんのオフィシャルサイト

訂正とお詫び:記事初出時、サービス名の「WAmazing」が「WAmaging」となっておりました。お詫びして、訂正いたします。(2017年2月25日)

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