いつでもどこでも仕事ができるテレワークを推進する日本マイクロソフト。2011年からモバイルワークの設備や在宅勤務制度を自社に導入し、2014年からは業界各社を巻き込んだ「テレワーク週間」を実施するなど、かねてからテクノロジーを活用したワークスタイル改革に取り組んできた。
2017年からは、「働き方改革の第2章」(同社 コーポレートコミュニケーション本部 本部長 岡部一志氏)として、Office 365の利用動向データとAI(人工知能)を活用したワークスタイル変革を進めていくという。具体的には、Office 365の「MyAnalytics」という機能を使って社員一人ひとりの業務を分析し、無駄な仕事を排除することで労働時間の短縮を図る。
MyAnalytics(旧Delve Analytics)は、Office 365のExchange Onlineを経由した社員のメール利用動向、Outlookに登録された会議の内容を分析し、業務の改善提案をするサービスだ。Office 365の法人向けライセンスの最上位版「E5」の機能として提供されている(「E1」「E3」にもアドオン可能)。
たとえば、「メールの開封率と開封されるまでの時間」などを分析・可視化して、夜間に送ったメールの開封率が低い傾向がみられた場合には「緊急性のないメールは翌朝まで保存しておきましょう」といった改善提案を表示する。また、会議については時間、同席者、会議中の内職(メール処理)の動向を分析し、「30%の会議が~さんと一緒でした。分担することで、両方の予定に余裕ができます」のようなメッセージを表示する。
現在提供中のMyAnalyticsは、分析対象サービスがOffice 365のExchange Online(メール、スケジューラ)のみ、分析範囲は個人単位での利用データに限定される。2017年春頃に予定されている次期アップデートで、グループ単位での分析に対応する予定だ。
さらに2017年夏には、ユーザーの事業優先順位に沿った改善提案が出せるカスタマイズや、他社システムのデータの取り込みが可能な拡張版「Workplace Analytics」のリリースを計画している。「Workplace Analyticsは、Graph EngineのAPIと連携できるシステムであればデータの取り込みが可能。SAPやOracleなどの業務システムの利用動向と、Office 365の利用動向を合わせて分析することもできる」(同社 Officeマーケティング本部 輪島文氏)。
データ分析基盤の大部分はOSS
ところで、Office 365のMyAnalyticsだが、そのデータ分析基盤の大部分がAzure上のOSSで構築されている。
MyAnalyticsでは、Office 365上でやりとりされた膨大な量のコミュニケーションデータをOSSのメッセージハブ「Apache Kafka」で受け取り、「Apache Spark」でストリーム処理やバッチ処理を行い、そのデータを「Apache Cassandra」に保存している。さらに、UIには「Apache Zeppelin」を使っているそうだ。
日本マイクロソフトの働き方改革「第2章」は、Office 365に蓄積される大規模データ、業務改善を提案するAI、そしてOSSの分析テクノロジーを活用した新しいチャレンジだ。同社では、自社での取り組みをMyAnalyticsの活用シナリオとして提示し、Office 365の拡販につなげていく。