AMDは、2月21日米カリフォルニア州サンフランシスコ市内において記者発表会を開催し、同社のリサ・スー社長兼CEOが、アーキテクチャを刷新したCPU「RYZEN 7シリーズ」を3月2日より発売するとともに、2月22日より先行予約販売を開始すると発表した。ただし、日本では予約販売は行わず、3月3日0時(すでに一部店舗で告知が始まっている。参考記事:http://ascii.jp/elem/000/001/440/1440534/)に販売が開始となる。
リサ・スー氏は、AMDは4年前からZenアーキテクチャの開発に着手し、そのパフォーマンス目標として、Excavatorコアと比べてIPC性能(クロックあたりの命令処理性能)を40%引き上げるという、ある意味実現不可能なゴールを設定した。しかし、実際には、研究開発の努力により、ZENアーキテクチャを採用する初めてのCPUとなるRYZENでは、52%ものIPC性能の引き上げを実現したと言う。そして、そのRYZENが、いよいよ量産出荷を開始し、自作市場にも登場することになる。
AMDは、RYZENの最初の製品群として、もっとも性能が高い8コア/16スレッドのデスクトップCPUとなる「RYZEN 7シリーズ」を投入。CPUソケットにはSocket AM4を採用し、DDR4メモリー対応を果たす。
その中核モデルとなるRYZEN 7 1700Xは、ベースクロック3.4GHz、Boostクロック最大3.8GHzを95WのTDPで実現。CINEBENCH R15のCPUマルチスレッド性能ベンチマークの結果で比較するならば、その競合となるIntel Core i7-6900Kとほぼ同等ながら+4%のパフォーマンス、Core i7-6800Kとの比較では+39%のパフォーマンスを実現するとアピールした。
さらに、AMDは、RYZEN 7シリーズの最上位モデルとして、ベースクロック3.6GHz、Boostクロック最大4.0GHzを実現するRYZEN 7 1800Xも用意。8コアデスクトップCPUではもっとも高速な製品となるとして、Core i7-6900Kを上回るマルチスレッド性能、そしてシングルスレッド性能では同等のパフォーマンスを発揮すると、ベンチマーク指標を公開した。さらに、同社は下位モデルとしてRYZEN 7 1700もラインナップ。ベースクロック3GHz、Boostクロック3.7GHz動作をTDP 65Wで実現し、同価格帯のライバルとなるCorei i7-7700Kに比べて、大幅なマルチスレッド性能を実現すると言う。
AMDは、実際にCINEBENCHによるマルチスレッドベンチマークのライブデモを実施し、RYZEN 1800Xが、Intel Core i7-6900Kを上回る性能を発揮することをアピール。さらに、ビデオエンコーティングのデモとして、HandBrakeのトランスコード時間を、RYZEN 1700とCore i7-7700Kで比較(Quick Syncは使用せず、CPUのみで処理)し、コンテンツクリエーションでも8コア/16スレッドCPUを使うメリットは大きいと説明した。
また、スー氏は、RYZEN 7シリーズの発売にあわせ、主要マザーボードベンダーから82以上の対応モデルが順次投入されると語った。自社ブランドでPCを展開する19のSIベンダーから第1四半期中に200モデル以上のRYZEN 7シリーズ搭載製品が投入される予定で、大手OEMベンダーからも、今年前半のうちにGAMINGタワーPCが投入される予定になっていることを明らかとし、順調なデザインウィンを勝ち取っている模様だ。
発表会の会場には、詳細なスペックは明らかにされていないが、レノボのゲーミングタワーPC「Lenovo Y720 GAMING TOWER」と、ビジネス向けPCの「Lenovo Ideacenter 720」も参考展示された。
スー氏は、高性能CPU市場動向を分析し、99%のユーザーは500ドル以下のCPUを求める一方で、プロにせまるコンテンツを制作し、SNSなどに投稿したいと考えており、RYZEN 7は、こうしたユーザーに優れたパフォーマンスを提供し、高性能CPU市場の裾野を大きく拡大する価格付けをすると宣言。
同シリーズの米国における市場想定価格を公開した。RYZEN 7 1800Xは、Core i7-6900Kの半額以下となる499ドル、RYZEN 7 1700XはCore i7-6800Kより高性能ながら、若干安い価格となる399ドル、RYZEN 7 1700は、Core i7-7700Kを大きく上回る性能ながら、それよりも安い329ドルで市場投入される予定であることが明らかにされた。なお、日本国内における市場想定価格は、下記のとおりだ。
RYZENシリーズの概要 | |||
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製品モデル | RYZEN 7 1800X | RYZEN 7 1700X | RYZEN 7 1700 |
コア数 | 8 | 8 | 8 |
スレッド数 | 16 | 16 | 16 |
ベースクロック | 3.6GHz | 3.4GHz | 3GHz |
Boostクロック | 4GHz | 3.8GHz | 3.7GHz |
TDP | 95W | 95W | 65W |
価格(米ドル) | 499ドル | 399ドル | 329ドル |
日本における希望小売価格(税抜) | |||
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製品モデル | RYZEN 7 1800X | RYZEN 7 1700X | RYZEN 7 1700 |
価格 | 5万9800円 | 4万6800円 | 3万8800円 |
AMDは、このRYZEN 7シリーズの投入を皮切りに、次世代GPUとなるVegaを今年第2四半期に、サーバー・データセンター向け高性能CPUの“Naples”(ネイプルス、開発コードネーム)も第2四半期中に投入する計画であり、さらに今年後半にはZenアーキテクチャを採用するモバイル向けSoCの“RYZEN Mobile”(これまで、開発コードネーム“Raven Ridge”と呼ばれていた製品)と、深層学習やデータセンター向けGPUのRADEON INSTINCTの投入を控えるなど、アグレッシブな1年の正式スタートを切った形だ。