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確定申告スペシャルインタビュー

電子書籍で2億9000万円 漫画家・佐藤秀峰さんの収支報告

2017年03月01日 13時00分更新

文● 盛田 諒(Ryo Morita)

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4年目……このペースじゃさすがにヤバイ……

【平成26年11月1日
~平成27年10月31日】
売上 53,589,905円
利益▲14,624,143円

── 売上がほとんど変わってない!むしろ微減している!

 そうなんですよね……ただ前年が悪かったので予算も下げておいたんです。なので赤字は1400万円くらいにおさえられているんですけど、4年間で言えば、トータルで4000万円くらいは赤字です。この年はWeb雑誌も始めてるんですよ。そこで漫画『Stand by me 描クえもん』を描きはじめたので、『特攻の島』を描くペースが遅くなり、単行本は年1冊しか出なくなり、雑誌をつくる経費は増えて……

── 大変じゃないですか。

 大変なんですよね。漫画だけ描いてれば、年2冊とか単行本が出て、経費もそんなに使わないし、作画スタッフに給料を支払っていれば問題なく回るんですけど。電子書籍の取次業をはじめたら、毎月作家さんにレポートを送ったり、データをストアに納品したりとか、いろいろ事務的な仕事が増えてくるんですね。そっちのスタッフも増やさないといけなくなって。

 それと取次を始めたと言っても、プロの作家は何だかんだと出版社とのしがらみがあり、すぐにサービスを利用してくれない。取次の中心は同人作家やセミプロの方々で、こう言っては非常に申し訳ないのですが、手間はかかるけど、正直、あんまり手数料は入ってこない。そういう作家の作品を売るノウハウがぼくたちになかった。一方、著作の電子書籍の売上はなだらかに落ちていっていて……

── 新規事業がなかなか軌道にのらない。第2創業期のような時期ですね。

 『ブラックジャックによろしく』二次利用フリー化をきっかけに、「もう紙とは決別しよう、電子書籍で生きていくんだ」と考え、ストアと契約し、電子書籍の取次業を立ちあげ、Web雑誌を発行し、自分たちでもメディアとしてやっていくんだと考え、そのすべてをやりはじめた時期でした。

── 焦りはありましたか。

 それまで貯めてきたぶんがあるので、借金しなければいけないということはなく、すごく焦っているというわけではないんですけど。「このペースじゃヤバイな」というジリジリした感じでしたよね。でもこれはまだ我慢のしどころなんだ、自分の給料を減らしてがんばろうと思っていました。

── 無借金経営なんですか、驚きました。

 借金は1回もしたことがないですね。雪国の生まれなもんで、「冬場はモノを大事にとっておいてちょっとずつ食べる」というのが身についているんですね。

── リスのような経営ですね。そしてドキドキの2016年ですが……

雪国生まれの佐藤さん

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