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前田知洋の“マジックとスペックのある人生” 第35回

家電のクールジャパンなビジネスモデルとは?

2017年01月17日 17時00分更新

文● 前田知洋

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ガビーン!元日に洗濯機が故障…

 新年早々、洗濯機が故障。本当は、3ヶ月くらい前からエラーが出ていて、騙し騙し使ってました(マジシャンだからね…笑)。洗濯機の上に貼られたでかいステッカーによれば、エラーの番号は「ドアが閉まっていない」。ドアはしっかりと閉まっているのにエラーが出るので、おそらくはドアのセンサーが誤動作しているか、最悪、中のコンピューターがおかしくなっているはず。

 サクッとググってみると、同じようなトラブルに遭遇して修理した人もいて、ドアセンサーの交換なら2万円くらい、コンピューター基盤の交換なら3万円ほどらしい。

 量販店で加入した延長保証がちょうど切れた6年目(笑)で少し悔しいけれど、洗濯機が動かないといろんな意味で悲しい…、新年なのにね。そんなわけで、サポートセンターに電話して修理を依頼することにしました。

部品保有期間が過ぎてます…

 元旦からサポートセンターで働く人に敬意を払いつつも、電話口で事情を説明すると「それ、6年前のモデルなので部品の保有期間が過ぎてる。それでも出張費はもらうからね(意訳)」と冷たくいわれました。ガビーン、ガビーン。

 まぁ、こうしたトラブルは電話口でゴネてもどうにかなる問題ではないので、しかたなく修理を頼みました。普段なら数日でくる修理の人も、休みなので1週間後。7日間、洗濯できないのは辛いけど、まぁ、正月だからしかたないかぁ…。

 電話口の言う通り、修理できないことを想定して量販店へ。新春のセールがあるかもしれないし…。悲しいトラブルを明るい物欲に変換するタイプです、はい(笑)

出費が30万円にアップ…

 新春の大売り出しの量販店のカウンターで「洗濯機の詳しい人を」とお願いし、年配のオジさんを想定していたら、若い女性が出てきてビックリ。固定観念にとらわれていて、すまぬ。

 事情を説明して、「多少高くても、壊れにくいメーカーと機種を」と勧めてもらいました。「それなら…」と推薦してもらったのが日立の洗濯機。確かに、国産第一号の5馬力誘導電動機(モーター)や戦時中は航空機のセルモーターを作っていた日製(日立製作所の別名)なら丈夫そう。

 ただ…、容量も大きく、それにともない値段も…。な、なんと30万円前後、ガビーン×3。前に洗濯機を買ったのが6年前なので、相場を忘れてました。そういえば、使っている洗濯機(東芝製)の前のエレクトラックス社(スエーデン)はそれぐらいの価格帯だったような…。でも、まぁ長持ちしそうだし…。物欲番長は楽観主義者でも。修理できなかったら、これにしょうっと。

ダメもとで分解(笑

 帰宅してから、しばらく考え「保証も切れて、部品もない…。それなら洗濯機のパネルをはずして分解してみるかぁ…」と至りました(笑)。じつは私、工業高校(電子科)→電機大学(工学部)というプロフィールなので、家にはテスターくらいはあることを思い出しました。

 そうえいば『いつみても波乱万象』(日本テレビ)に出演したとき、中学時代の恩師が「ハンダゴテの前田とクラスで呼ばれていた」とビデオが流れ、スタジオの椅子から落ちそうになったこともあります(本人は、ぜんぜん記憶にありません)。

 パネルを開けてドアセンサーユニットを取り出し、マグネットスイッチやヒンジレバースイッチなどをチェック。マイクロスイッチが通電せず、お亡くなりになってました。新しいマイクロスイッチを調達するまでとりあえず応急処置。ドアの開閉確認がマグネットスイッチ×1とマイクロスイッチ×2のトリプルチェックになっているので、ひとつを無効にしても大丈夫なはず。我が家にはチャイルドロックが必要な子供もいないし…。

 分解ついでダクトやドラムまわりのフェルト状のゴミも除去して(テニスボール2個分くらいありました)完了。書けば数行ですが、やると3時間くらいかかります。

ビジネスモデルを考え直すタイミング

 洗濯機など、いわゆる白物家電ですが、毎年新しいモデルを発表して1年で製造中止、買い替えというサイクルがすっかり定着。消費者の立場から考えるとバカな話で、技術は進歩したのに製品寿命がどんどん短くなって出費も増えるというビジネスモデルです。ぜんぜんエコじゃありません。

 ふんわり仕上げとかドライコースとか複雑な機能はほどほどにして、長く使えて修理が永続できる製品が登場してもいいのではないでしょうか?ドラム式洗濯乾燥機機などは構造上、メンテナンスが不可欠なのは理解しています。たとえば、ダクトがビス数本で外れて気軽にメンテナンスができる設計にするのは不可能ではないはず。

 機械なので壊れるのは当たり前。ユーザーがメンテナンスするパートとスキルある技術者が有償で修理するパートを再考し、ビジネスモデルを新しくする時代に来ているはず。改良はするけれど部品ユニットの規格は変えない。せめてそんな思想のベンチャーが登場したら、一部でも堅実な消費者のニーズを満たすに違いないと僕は考えている。それこそがクールジャパンでは…。

浮いた修理代で欲しかったdysonのドライヤーを購入…(笑)

前田知洋(まえだ ともひろ)

 東京電機大学卒。卒業論文は人工知能(エキスパートシステム)。少人数の観客に対して至近距離で演じる“クロースアップ・マジシャン”の一人者。プライムタイムの特別番組をはじめ、100以上のテレビ番組やTVCMに出演。LVMH(モエ ヘネシー・ルイヴィトン)グループ企業から、ブランド・アンバサダーに任命されたほか、歴代の総理大臣をはじめ、各国大使、財界人にマジックを披露。海外での出演も多く、英国チャールズ皇太子もメンバーである The Magic Circle Londonのゴールドスターメンバー。

 著書に『知的な距離感』(かんき出版)、『人を動かす秘密のことば』(日本実業出版社)、『芸術を創る脳』(共著、東京大学出版会)、『新入社員に贈る一冊』(共著、日本経団連出版)ほかがある。

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