視界不良でも着陸できるようになったのは
ILSのおかげ!
大空の上から見る滑走路に飛行機を着陸させるのは、針の穴に糸を通すより、1000倍難しい。いやもっとかも? なにせ滑走路のどこに着陸してもいいというわけではなく、滑走路端の中心に着陸しなければならないのだ。
なので霧が出たり大雨や雪で視界が悪くて滑走路が見えなくなると、代替空港に着陸(ダイバード)したり、引き返して欠航ということが一昔前はよくあった。でも最近「視界不良のため欠航」という便が少なくなったのは、これもILSという電波よる誘導で、視界ゼロ(実際には50m)でも安全に着陸できるようになったため。
もちろん羽田や成田などの国際空港には、ILSの電波誘導着陸が可能になっている。それ以外でも霧がよく発生する釧路や青森空港などには、羽田以上の高精度ILSが導入されている。だから欠航便が少なくなったというわけ。その仕組みを示したのが次の図だ。
着陸時は、まず滑走路の中心に進入しなければならないので、左右それぞれ3度の範囲で中央に案内する電波が出ている。これを格好よく言うと「ILSローカライザー」。
対して滑走端までの進入角度(大地に対しておよそ3度の坂道)を電波で示すのが「ILSグライドスロープ(またはグライドパス)」という。
パイロットは管制官にILSを使って着陸することを宣言すると、ILSの電波の範囲内まで誘導してくれる。そして飛行機の計器がこの電波を捉えると、副操縦士は「ILS(ローカライザー)キャプチャー!」とコール。
飛行機の姿勢制御する画面には、十字のマークが表示され画面中央に十字がくるように操縦すれば、視界が悪くても電波で着陸できるというわけだ。
最近の飛行機は、ILSと自動操縦をリンクさせて完全に自動着陸できるまで技術は進歩しているが、万が一のために備えパイロットが操縦かんを握っている。
ILSは先に紹介した着陸ガイドにもしっかり記載されている。
管制官は左下の千葉県富津市のマザー牧場近くにあるマーカー「ARLON(アーロン)」(矢印)経由で北北東337度(実際には下1桁を四捨五入して34)に頭を向けるように指示。向かう先には、先に紹介したHANEDA VOR/DMEがあるのがわかるだろう。
チェックスターはこれらの着陸用ILSの無線設備も厳重にチェックして、あるべき値になっているかを確認している。
万が一ILSが故障してしまったり、飛行機側がILSに対応していない場合用に、ILS導入空港ではPAPIと呼ばれる進入角度指示灯も備えている。似たような装置が、空母の着艦デッキにも備えられてるほど、万が一のときに有効なものだ。
正しい進入角度で降下してくると、白白赤赤のライトが見えるように調整されており、高度が高すぎたり低すぎたりするとパターンが違って見えるようになっている。
チェックスターはこれらの光学系の装置もチェックする。滑走路を横断するように弓形に飛行。機長は、布を糸で縫うように高度を上げ下げして飛行。隣の副操縦士は、PAPIが白白赤々になった瞬間に「マーク!」とコール。これを受けてエンジニアが電波高度計の値を調べ、正しい進入角を示しているかをチェックするのだ。
また空港にはこれ以外にも運航に必要なランプがたくさんあるが、実際に上空から見てキチンと見えるかどうかも確認している。