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盛田 諒の「アスキー家電部」 第67回

これ欲しかったー! シャープ、小さくてかっこいい冷蔵庫

2016年11月29日 11時00分更新

文● 盛田 諒(Ryo Morita)

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シャープ 冷蔵庫 中~小サイズ
137L「SJ-GD14C」6万5000円前後
350L「SJ-GW35C」16万円前後
1月19日発売予定

 今年で33歳、夫婦そろって編集者。東京・杉並の小さなわが家において、冷蔵庫は敷地面積アンド世帯年収に比例してミニサイズだ。新しい冷蔵庫が発表されるたびに新製品いいなあ、欲しいなあと思っても、高すぎて買えないだろ、大きすぎて置けないだろのくりかえしだった。しかし近年国内メーカーがようやく中~小サイズの製品開発に力を入れはじめ、小さくてもデザインと性能に妥協しない、これなら欲しいかな、と思えるモデルがあらわれてきた。

 シャープも29日、デザインと性能にこだわった中~小サイズの冷蔵庫を発表している。容量137Lの小サイズ「SJ-GD14C」、350Lの中サイズ「SJ-GW35C」2製品。想定価格はそれぞれ6万5000円前後、16万円前後。1月19日発売予定。

 よけいなでっぱりがないシンプルな四角形のフォルムでめざしたのは、家具のような冷蔵庫。家にあるだけで空間を高めるデザインを心がけたという。

「SJ-GD14C」ピュアブラック

同 クリアホワイト

同 メタリックベージュ

小サイズ「SJ-GD14C」はこだわりのカッコよさ

 小サイズのSJ-GD14Cには、高級モデルに使われてきたガラスドアを使用。ドアのフレームを限界まで薄くしてシンプルさを際立たせた。ただ薄くするだけでは強度が弱くなってしまうため、接合部のパーツをドアの内側に隠すなど工夫している。ドアは隙間に指を入れて開閉する構造にして、ハンドルも省いた。

 冷凍庫引き出しユニットは1枚の板のよう。下側に指がしっかり引っかかり、たくさん入っていても開閉しやすい。天面はフラットでモノが置きやすくなっている。全体に凹凸が少ないデザインなのでお手入れもラクそうだ。

フレームがとても細い

強度を保つため内側に接合パーツを入れている

庫内は端っこだけに接合部が見えるようにした

ハンドルはなくドアの隙間に直接指を入れる

冷凍庫の引き出しは1枚板のようなデザインに

軽い力で引き出せるように裏側をデザインした

 外だけでなく中もデザインにこだわった。棚板はガラス製、シルバーの装飾パーツをつけて高級感を出した。庫内いちばん奥の壁面は、通常ホワイトやライトブルーにするところをあえてグレーに変えて奥行き感を演出。同じように冷凍室のケースも白系素材ではなく透明素材を使うことで明るさを出している。

 ドアは簡単に外せて左開きと右開きが変えられる「つけかえどっちもドア」。引っ越しなどでキッチンの間取りが変わったとき、食材を取り出しやすい角度に変えられて便利だ。余談ながら、実はうちはシャープ製で「つけかえどっちもドア」がついている冷蔵庫を使っていたのだが、この発表会に出るまで知らなかった。

 本体カラーはクリアホワイト、メタリックベージュ、ピュアブラックの3色。白黒ツートーンのすっきりした塩系インテリアをイメージしたという。

小型サイズなので容量はそこそこ。チルド室なし

庫内いちばん奥がきれいなグレーになっている(食材を入れたら見えないとは思うが)

庫内の棚はガラス製、手前に飾り板をつけて高級感を演出した

天面がフラットなのでモノも乗せやすい。掃除もしやすい

中サイズ「SJ-GW35C」は調味料入れが移動できて便利

 中サイズのSJ-GW35Cは、同社の大型冷蔵庫「メガフリーザー」シリーズとデザインを統一しながら、やはりガラスドアを採用。全体に要素を減らしてすっきりとしたデザインを心がけたという。ドアは左右どちらでも開けられる「どっちもドア」。冷蔵室、野菜室のハンドル部分はシンプルなUの字型にした。スッと指でなぞれるような形をとったことで、やはりお手入れがラクになっているそうだ。

 メガフリーザーに搭載してきた最新機能も付いている。直接冷気を野菜に当てないことで鮮度を保ちやすくする「シャキット野菜室」機能、霜取り運転前に急冷することで冷凍食品の鮮度を保ちやすくする「新鮮冷凍」機能の2つ。野菜室にはペットボトルなどを入れる仕切り用の「うるおいシールボックス」も装備している。

 何気にいちばん感心したのは「どこでもスパイスポケット」。びん入り調味料を入れておくスパイスラックを扉側収納から取りはずせるようにしたもの。袋ものの小物調味料も入れやすくしているとか。便利なので普通に市販してほしい。

 モーター回転数を制御するインバーターコンプレッサーの搭載で省エネ性能も強化。使用状況に応じて運転モードを制御する「節電25」モードも搭載した。本体カラーはピュアホワイトとメタリックブラウンの2色。インテリアとキッチンの売れ筋カラーにあわせて明るめに統一したそうだ。

右側が中サイズのSJ-GW35C。冷蔵庫・冷凍庫・野菜室の3段構造

小さく見えて庫内はけっこう入る

スパイスラックが取りはずせる。アイデア

庫内の好きなところに置いておける。売ってほしい

袋もの製品も入れやすくデザインした

冷凍時に霜がつきづらい「新鮮冷凍」機能を搭載

野菜室は「新鮮シャキット野菜室」機能つき。3日保存したチンゲン菜もしゃっきり(左側は機能なし)

本当に欲しいモノがようやく出てきた

 あらためてなぜ中~小サイズなのか。

 JEMA業界集計によると、国内の冷蔵庫需要は「大型」「中~小型」がほぼ半々。しかし同社が調べたところ、今年日系メーカーが販売していた機種は大型ばかり。350L以下の中~小型は、351L以上の大型68機種に対して18機種とごくわずか。結果売り場の7~8割は大型に占領されてしまい、消費者が中~小型について店員に聞いても選択肢が少なすぎたというのが現状だ。

 ではなぜ日系メーカーは冷蔵庫の大型化に進んだのか?

 消費者側からの理由はいくつか考えられる。たとえば共働き世帯・シニア世帯の増加により、まとめ買い、つくりおきなど「食品の長期保存」がニーズとして持ち上がったため。あるいは台所がシステムキッチン化し、食器棚と一体化したことで収納場所が減り、冷蔵庫が収納家具の役割を担うようになったため。

 だがメーカーとしての意図も大きいだろう。わざわざ単価が安い中~小型を作ってアジア製に対抗するより、単価が高く、市場の5割を狙える大型に力を入れたほうが効率的だからだ。しかし少子高齢化・未婚化・晩婚化が進む中、わが家のような共働き世帯、わたしが巣立って2人暮らしになった両親のような少人数世帯が求める小型~中型製品を出さないのは市場のトレンドに逆行することになる。

 もしアジア勢が小型~中型で高級路線を打ち出した製品を開発してシェアを伸ばしはじめたら、大型のパイまで侵食される流れは想像にかたくない。シャープでは本製品の「ありそうでなかったところが”目のつけどころ”」としていたが、ほかのメーカーもふくめてなぜそこに今まで目をつけようとしなかったのか、業界的にあらためて検討してほしいと思う。「このごろどうも欲しいものがなくなってしまった現象」の根本はこのあたりにあるように感じている。

 なぜか後半ビジネス誌のようにうさんくさくややこしい語り口調になってしまったが、シャープの冷蔵庫は男子心をくすぐるいいモノだった。年明け、売り場に出てきたらほかの小~中サイズと比べてみるのがおすすめ。

このようにウザい顔もできる。ガラスなので磁石がくっつかないがドヤラーには問題ない


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書いた人──盛田 諒(Ryo Morita)

1983年生まれ、家事が趣味のカジメン。来年パパに進化する予定です。Facebookでおたより募集中

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