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米ヴイエムウェアのヤンビン・リー氏に聞く「HCI元年」のユーザー動向

ビジネスクリティカル領域でも採用が相次ぐVirtual SAN

2016年11月11日 10時30分更新

文● 大河原克行 編集●大谷イビサ

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米ヴイエムウェア ストレージ・アベイラビリティ部門上席副社長兼ゼネラルマネージャのヤンビン・リー氏が取材に応じ、同社のストレージ事業に関して言及。「2016年は、HCI(ハイパーコンバージドインフラ)の年になる。そのメインストリームになるのが、Virtual SAN。最新のVirtual SAN 6.5は、真の意味でのエンタープライズレディの製品になる」などと語った。また、「2017年は、Virtual SANのビジネスを現在の2倍にし、顧客数を2倍にしたい」と発言し、2017年には、全世界で約1万社の顧客規模にまで拡大する考えを示した。

米ヴイエムウェア ストレージ・アベイラビリティ部門上席副社長兼ゼネラルマネージャのヤンビン・リー氏

最新の四半期では半分がオールフラッシュの構成

 リー上席副社長は、現在、Virtual SANが、全世界で109カ国で利用されていること、2016年第3四半期までに5500社に導入されていること、米国においては、フォーチュン1000社のうち、40%の企業で導入されていることなどを示しながら、「金融、小売り、サービスなど幅広い業界で利用されている。前年比の受注増加率は200%に達しており、導入は劇的な勢いで加速している」と語り、「2017年もこの勢いを維持し、Virtual SANのビジネスを現在の2倍にし、顧客数を2倍にしたい」と発言。約1万社にまで顧客数を増加させるという。

 現在、Virtual SANを採用した企業の64%がビジネスクリティカルアプリを利用。「これが最大のユースケースになっている」としたほか、94%の顧客が従来型のストレージと同等以上のパフォーマンスを実現しているとした。さらに、TCO削減のためにVirtual SANを選択した企業が25%、サーバーとストレージの統合によってもたらされる管理の簡素化のために選択した企業が15%を占めており、「ITの効率性向上のためにVirtual SANが選ばれている」と語り、「最新四半期では、すでに半分がオールフラッシュによるコンフィグレーションになっている」とした。

 Virtual SANの成長の背景にあるのが、HCIであるとする。

 リー上席副社長は、「いまもっとも成長している領域がHCI。今年はHCIの年であり、ここからイノベーションが起こっている。そのなかで、Virtual SANはHCIのメインストリームになる」と位置づけ、Virtual SANが、HCIのメインストリームになる理由として、「ハードウェアの進化」、「TCOの削減」、「将来に向けた拡張性」という3点をあげながら、「すでにVirtual SANが数多くの企業の数多くのノードで利用されていること、顧客がクリティカルなビジネスで使用しているという実態がある。だからこそ、Virtual SANは、メインストリームになりつつある」と述べた。

 SDS(Software-Defined Storage)の活用が浸透している背景には、ハードウェアの進化が見逃せないという。「低遅延のフラッシュストレージが利用されることで、高密度化による効率性の実現と、堅牢性の実現も同時に達成し、ビジネスクリティカルアプリも、SDS上で稼働するようになった。電気自動車の普及の裏には、バッテリー技術の進化が見逃せない。ストレージも同様にフラッシュという新たな技術への移行が、新たな世界を拓いたといえる」(リー氏)。

 また、多くのアプリケーションがHCIで活用され、TCO削減にも貢献している。「なかにはVirtual SANを利用することで、従来のアーキテクチャーと比較して、コストが50%も削減されたという声もあがっている。そして、HCIを活用することで、将来に向けたスケールアウトが可能になり、容易に管理できる範囲が広がることになる。だからこそ、HCIがこれからの中心となり、そのメインストリームにあるのが、Virtual SANになる」(リー氏)という。

第5世代のVirtual SANでコンテナアプリの展開やiSCSIのサポートも

 リー上席副社長は、最新版である「Virtual SAN 6.5」についても説明した。

 第5世代と位置づけるVirtual SAN 6.5は、PowerCLIのマネジメントを可能にしたことから、自動化とカスタマイズによる即応性の向上を実現。2ノードのROBOにおける直接接続構成サポートにより、ネットワーク機器のコストを削減し、TCOの削減につなげることができるほか、クラウドネイティブのコンテナ化されたアプリを展開できること、iSCSIへの接続を可能にするなど、将来に向けた拡張性も提供しているのが特徴だ。

 「多くの顧客でiSCSIのレガシーワークロードが活用されている。アプリケーションの一部がレガシー環境のなかで動作しているという例は少なくない。これまでのVirtual SANは、仮想化された環境での接続だけをサポートしていたが、仮想化環境以外もサポートしてほしいという要望があり、それに対応した。iSCSIへの接続を可能にしたことで、仮想化されていないワークロードとの接続が実現した。さらに、2つのノードを、直接、クロスオーバーケーブルでつなぐことができるため、ルーターとスイッチが不要になるため、これらのコストを削減。同時に、複雑性も解消できる。ネットワークチームを送り込んで作業をするということも不要になる。ひとつのROBOサイトにつき、最大20%のコスト削減が可能になるという結果も出ている。そして、クラウド管理の柔軟性も高まり、ストレージのパフォーマンス管理やQOSについても、自動管理が可能になる」などとした。

 コンテナとクラウドネイティブアプリのサポートについては、vSphereによって、Docker、Swarm、Kubernetesなどを利用可能にしたほか、Persistent Docker Volume Driverの提供により、Virtual SANを持続性を持ったパーシスタントストレージとして利用できるようになるという。また、vSphere Integrated Containersにより、Docker APIとの互換性を実現。そのほか、Virtual SANで実証済みのストレージサービスをPhotonで利用可能にし、vCenterを活用しなくても、APIによって、すべての管理が可能になるという。 これによって、「次世代のアプリケーションへの準備が可能になる」などとした。

 また、ライセンス体系を変更したことについても説明。これまでは、Virtual SAN AdvanceとEnterpriseで対応していたオールフラッシュハードウェアのサポートを、Virtual SAN Standardでもサポートするほか、Virtual SAN Advanced for ROBOを新たに追加した。

 リー上席副社長は、「Virtual SAN 6.5は、プラベートクラウドだけでなく、パブリッククラウドのストレージソリューションとしても機能できるものであり、さらに、エンタープライズレディの製品に進化している点も特徴である。レプリケーションなどのデータ保護機能や暗号化機能などの追加や、インテリジェント性を持った管理の自動化に加えて、ビッグデータのアプリを含み、さまざまなタイプのワークロードにも対応できる環境も実現していく。NFSのサポートも今後のロードマップのなかに入っている。Virtual SAN 6.2からは、エンタープライズレディという観点での進化を遂げており、顧客からのさまざまな要求を取り入れていく」とした。

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