驚きの低遅延と防水仕様でも損なわない音
比較的高価なBluetoothヘッドフォンでは、音質の点での不満は少なくなっているものの、まだまだ遅延はつきものです。音楽だけを聴くなら問題はなくても、動画の場合は画面と音のほうが遅れて聴こえる。
たとえばゲームなら操作と効果音のタイミングが合わない。映画なら役者の唇の動きとセリフがズレる。音楽ならギターのピッキングのタイミングと無関係にフレーズが鳴っている。このように突如として優れたコンテンツが事故物件に堕ちてしまうわけです。
ところがiBFreeは、この遅延がほとんど感じられない。安価な製品にも関わらず、低遅延なaptXに対応するCSRのBluetoothモジュールを採用しているのがその理由でしょう。
テストに使ったiOS機器(iPhone 5c)はaptXには非対応のはずですが、それでも従来のBluetoothイヤフォンにあったような遅延は感じられませんでした。aptXに対応しているMacBook Airと比べても、遅延が大きいようには感じられません。いずれもミュージックビデオや映画を観る程度なら、まったく問題なし。
個人的に遅延がもっともシビアに影響する利用状態で言えば、ソフトウェアシンセをリアルタイムで操作しても違和感がない程度。ミリ秒単位の精度が問題になるDAWのリアルタイム入力でもなければ、これで十分に思えます。
低遅延という点では、同じBluetoothモジュールを使えば他社でも同じ性能を得られるはずです。が、やはり感心するのは音のバランス。まず、防水仕様のイヤフォンにありがちな、高域の通らない、クリアさを欠いた音にもなっていない。そこに感心しました。
傾向としてはPiston Classicの路線に近いもので、弾力的で飽和感のない低域と、ダイナミック型としては伸びる高域が魅力。若干ミッドローが抑えられている点と、ミッドハイに心持ちレゾナンスを感じるところを除けば、Piston ClassicをそのままBluetooth化したようなイメージです。
Piston Classicは背面に大きなチューニングホールが空いていて、音漏れも少なからずあるのが弱点でしたが、iBFreeは防水仕様のため、チューニングホールがありません。つまり、あからさまな音漏れもない。Piston Classicで音漏れが気になる方は、むしろiBFreeの方がいいかもれません。
ただ、チューニングホールをなくして完全な密閉にすると、負圧が抜けず振動板の動きが規制されるため、低域のレスポンスに影響します。これを回避するためかハウジングの容量は大きく、長く、径も大きいため、装着時にはちょっと目立ちます。