企業のIT投資は伸びていない
「CEOの役割は売り上げを伸ばし、コストを下げ、収益の伸ばし、シェアを伸ばすこと。ラリー(=ラリー・エリソンCTO)はそれを32年間やってきた」としながら、その一方で「企業が成長するためにはIT投資が不可欠だが、多くの企業において、その投資が伸びていない」と指摘する。
全世界のGDP成長は2.5%増と低迷している。その影響もあり、企業のIT投資は横ばいのままが続く。しかもその8割以上を保守、運用に費やしている状況は変わらず、戦略的な領域への投資も少ないままだ。さらに昨今では、セキュリティーに対する投資が増加しており、イノベーションに対する投資は少ないままで、予算減少を余儀なくされている状況を嘆く。
「企業ではアプリケーションを平均して21年間使用し、インフラは5年間利用している」というのが企業のIT活用の実態だと語る。
そして「個人のIT投資は、10年で4倍になっているのにも関わらず、企業の投資は横ばいのまま。企業と個人の格差がさらに広がっている」という点も懸念する。
スマホやタブレットの普及にあわせて、個人のIT投資は増加傾向にあるのは明らかだ。個人ユーザーの情報武装は急速な勢いで進展。それらのデバイスを通じて様々な情報が発信され、消費活動や社会生活において、不可欠なツールとなっている。
個人の積極的なIT活用を企業が追うという構図には、さらに広がりが生まれているというわけだ。
クラウドカンパニーで最も成長したのはオラクル
その状況を打破するために企業はこれまで以上にクラウドを活用する必要があるというのが、ハードCEOの見解だ。
「企業のIT投資は横ばいであるが、クラウド市場は44%増という成長を遂げている。クラウドはコストを削減でき、拡張性を高め、セキュリティーを向上させ、信頼性をあげることができる。さらにイノベーションを増やすことができ、ビジネスモデルの変革につなげることができる」とする。
オラクルの投資もそこにフォーカスしているという。
「オラクルは年間52億ドルを研究開発費として投入している。これは売上高13%にあたる。2010年には32億ドルの投資であったが、増えた20億ドル分はすべてクラウドへの投資だと考えてもらっていい。ここ数年はクラウド移行に投資をしており、すべてのアプリをクラウドへと移行させた。また19のデータセンターを設置しており、ここにも投資をしている。さらに1万人のクラウドエンジニアがおり、クラウドを売るための営業体制も強化している。こうした取り組みは成果につながっており、2017年度第1四半期(2016年6~8月)には、クラウドの売上高を前年同期比で82%増加させた。クラウドカンパニーとして最も成長したのはオラクルである」と語る。
そして、こうも語る。
「オンプレミスの保守の方が利益率は高いかもしれない。だが、顧客がなにをほしがっているのか。利益率の問題ではなく顧客のニーズにあわせて、ビジネスを変えていかなくてはならない。これが大切である」。
それでも最新四半期におけるオラクルのクラウド事業の利益率は62%に達しているという。この数字を見る限り、収益性をともないながら成長を続ける地盤が整ったともいえそうだ。
クラウドは企業の成長のためには不可欠な武器と位置づけるオラクルは、これまで以上にクラウドを重視した体制へとシフトする姿勢を改めて強調したOracle Open World 2016だったといえる。
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