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スペシャルトーク@プログラミング+ 第2回

「”クール IT”でプログラマーのイメージ改善せよ」

Ruby作者まつもとゆきひろ氏2万字インタビュー(後篇)

2016年09月19日 19時00分更新

文● 角川アスキー総研

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“クールジャパン”よりも“クールIT”を!

──言葉は悪いですが、食い散らかし学習法というようなのでよいということでしょうか?

まつもと「全然それで良いと思いますけどね」

──子供のプログラミング教育って、まつもとさんご自身もお子さんに発破かけてやらせているわけではないということですけど、あんまりそこは無理やりやらせないほうがというお考えで?

まつもと「例えば、学校に音楽の時間があるからと言ってミュージシャンになるわけではないですよね? あるいは学校に書道の時間があるから書道家になりましたというわけでもない。つまり、プログラミングを教えたからといってプログラマーが増えるとは僕自身はあまり思っていないんですね。もちろん、大人がお金になるから学ぼうと始めた場合はいいと思うんです。モチベーションも高いですから。でも、小学生や中学生に教えるというのは、子供達のモチベーションが低い状態でやるので、プログラミングが嫌いになってもうやりたくないっていう子も出てきかねないと思います。それはむしろ逆効果だと思います。国策でプログラミング教育の話が出た時も、最終的には、低学年では授業として教えるよりもプログラミングを体験しましょうという形になりましたね。成績はつけず、年に何時間かそういった体験をさせることで、その中で興味を持った子をスクリーニングするという形ができて、部活動みたいな形でそういう子をピックアップして伸ばしていければ理想だなと思います。つまり、育成ではなく発掘ということなんですね。この子は数学ができるからいいプログラマーになるかといったらそうでもないし逆もまた然りなので、とりあえず興味のある子は伸ばし、無ければないでいいですよと。ただ若い子に伸びていくチャンスはあげたいですよね」

──それでは、どうやったら子供達はプログラミングに興味を持ってくれますかね…。プログラマーが主人公のいいアニメとかがあれば増えるんじゃないかな、なんて思ったりするのですが

まつもと「僕もそれは考えていて。IT総合戦略本部でも首相官邸で《クールジャパンをやる前にクールITをやるべきです》と言ったんですよ。たぶん議事録には残っていると思うんですけど(笑)」

──クールITいいですねぇ!

まつもと「なんていうか“IT=ブラック”というイメージが定着しちゃっているじゃないですか」

──7Kですね。

まつもと「そうですね。そういうイメージの影響か、職業としてのプログラマーって格好悪いと思われがちで、それはよくないなと思っているんですよ。人間ってスポットライトの当たる者になりたがりますよね。だから子供たちに将来の夢を聞くと、サッカー選手や野球選手と答える。彼らは収入も高く、成功している上に人々から注目も浴びている。だから、僕は小学生でプログラマーになりたいという子にまだ出会ったことがないんですよ」

──ゲームのプログラマーさえいないんですか?

まつもと「ゲームクリエイターはたまにいますけど、クリエイターはプログラムしませんからね、多くは。まぁだから、ITっていうのはクールだし成功もできるぞっていうイメージを作りたいですね」

──アメリカでは、『NUMB3RS』とか『betas』(ベータス)だとか、ITや数学を取り扱ったドラマが放送されていたりと、IT=クールと言うイメージは定着していますよね。

まつもと「日本もああいったものをやったほうがいいんじゃないのかなと思うわけです。でも、ドラマだとコストがかかるのでまずは漫画でと」

──要するにかっこよくないとやらないよっていうことですよね。キモズム理論っていうのを展開している人がいて、その人曰く、Palmなどそれまでのモバイルガジェットからの連続性を考えれば十分キモい物なのに、世間的にiPhoneがカッコイイ物と認識されている理由は何なのだと考察したそうなんですね。するとどうも女子に答えはあるんじゃないか? ということなんです。それに従うと、女子が憧れることが重要なんじゃないでしょうか? 池澤あやかさんみたいな人を量産するとか(笑)。

まつもと「彼女みたいにプログラミングとかが好きだっていうのがわかる人がいいですね。仕事だからって、無理してやってるのが伝わってしまったら、どうですかね」

──先ほど、まずは漫画だとおっしゃっていましたが、どんな漫画ですか? まずお父様からガジェットをもらうところからですかね。

まつもと「うーん、まずは蔵を開けたら秘密のガジェットがあって、実は主人公には選ばれし血が! とかファンタジーでいいんじゃないかな(笑)。あとは、プログラミングには競技プログラミングっていう世界があるんですよ。その辺をスポーツみたいに真面目に取り上げる漫画があってもいいかなと」

──NHK Eテレでやっているロボコンの収録を去年はじめて見にいったんですが、両国の国技館でやっている生の会場もとても盛り上がっているんですよ。観にきた後輩や家族は、いやでも興味を持ちますよね。

まつもと「そうですね、あの辺を真剣に取り上げてくれるといいんですけどね。やっぱり世の中を広く変えていくためにはまだまだメディアの力は大きいので」

まつもとゆきひろ

 1965年鳥取県米子市生まれ。世界的に使われているプログラミング言語“Ruby”の開発者。

 株式会社ネットワーク応用通信研究所フェロー、楽天株式会社楽天技術研究所フェロー、Rubyアソシエーション理事長、Heroku チーフアーキテクト、島根県松江市名誉市民。本名は松本行弘(読み同じ)。Matzの愛称で親しまれている。

 1984年、筑波大学第三学群情報学類に入学。1995年、fj上で公開したオブジェクト指向スクリプト言語「Ruby」は、2012年4月1日に日本発のプログラム言語で初めてISO/IEC規格として承認。

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