このページの本文へ

麻倉怜士がソニー平井社長をインタビュー

ラスト・ワンインチは、すべてソニーが押さえるべきです

2016年08月12日 09時00分更新

文● 麻倉怜士 編集●ASCII 写真●神田喜和

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

ソニーほどVRの世界を広げられるメーカーはない

 ここで話は話題のVRに。プレイステーションVRが10月に発売される。そもそもゲームとVRはたいへん親和性が高い。もともとゲーム機の中では3Dのリアルタイムレンダリング処理をし、2Dのテレビ画面に映していた。その動きは手許のコントローラーが指示していた。

プレイステーションVR

 ゲームソフトはそもそも3Dデータでつくられている。なので、VR対応にするには、従来のコントローラー操作を頭の動きに読み替えればよいのである。なので、これからどんどんVRゲームが登場する。ゲーム以外のエンターテイメント、旅行案内、家具の配置シミュレーションなどの産業用途も期待だ。その中でソニーが果たす役割は?

平井 社内でもよく話すのですが、最終的にVRが受け入れらえるかどうかはソニーではなく、お客様が決めることです。ただしソニーほど、受け入れられたときにビジネスの可能性を広げられる会社はないはずだ、と。だからこそソニーはプレイステーションという素晴らしいプラットフォームを使って、VRをユーザーにアピールし、受け入れてもらえるよう頑張っていく必要があると思っています。これはVR関係の会議でも常に言っていることです。

麻倉 VRはかなり注力していく分野となるわけですね。VRの展開はいろいろあり得ますが、ゲームから入るというのは一番わかりやすいと私は思います。ゲームはそもそもVR的なものですから、本質的なところがある。VRの良さも悪さもゲームをやれば分かるはずです。そのうえでほかの領域を考えていけばいい。

平井 ゲームの場合はVR度が非常に問われます。気持ちいいVRであるかが問われるのです。どう見えるか、どういう視点でやってもらうかの環境をコントロールできる。プレイステーションVRはそういうところでやっていけるのがいいと思います。プレイステーションというフォーマットの性質上、ゲームコンテンツをサードパーティーに作ってもらう際も、承認するプロセスを経る必要があります。この過程で、“気持ち悪いVR”が市場に出ることを事前に防ぐことができます。つまりお客様にとって、いいVRをより確実に提供できるのですね。このようにしてVRがうまく定着してくれれば、用途も広がっていくでしょう。

麻倉 B2Bの分野でもVRは期待されています。

平井 B2B、B2C問わず、あるとあらゆるところで期待されています。非常に大きい市場が形成されるのではないかと思います。

10年以上の休止期間を経て、いままたロボットへ

麻倉 テレビ事業は二次元=平面の中で続けてきたものです。それを超えたところに新しい映像の可能性があるのではないでしょうか。もうひとつロボット事業への参入にはびっくりしました。過去にソニーさんの本を書いた際、ソニーとロボットの関係についてずいぶんと研究をしました。10年以上の休止期間があって──。

AIBO

AIBOは『2000年代に失敗した電子機器──米cnetが選ぶ30製品』(CNET Japan 2009年12月29日)に選ばれている。「われわれはしばらくペットのAIBOを飼っていたが、その後AIBOは生産終了となった。残念なことに、AIBOもまたクールではあるものの、あまりにも高価すぎるソニーのコンセプトの1つだった。かわいいAIBOがいなくなって寂しく思っている」とのコメントとともに。私も2000年に著した「ソニーの野望」(IDC)で、徹底的に取材したので、思い出深い。その後、AIBO復活を望む声は絶えることはなかった。今後、ソニーはもちろんAIBO的なロボットも手掛けるだろうが、平井さんのビジョンはそれだけに留まらない。

平井 17年ですね。最初のAIBOから考えると。

麻倉 Pepperなど再びロボットが市場を賑わせていますが、ソニーらしいロボットとはどんなものになるのでしょうか?

平井 ロボットというと、AIBOのようなものを想像する方が多いでしょうし、私もそれは否定しません。でもやはり、経営方針として説明したように、産業とか製造の現場、ロジスティックス(物流)、住空間や職場の空間……など、ありとあらゆる場所でロボティクスが活きてくると思っています。一部では、AIBO復活という報道もありますが、それだけではなくて、この時代だからこそできることをやりたいと思っています。

 ソニーが持っているロボティクスの技術とAIとネットワーク、そしてコンテンツを組み合わせることで、新たな市場を創出できると判断したのです。かわいいロボットを作っておしまいではありません。ひとつの例がエアロセンスです。ドローンのビジネスもロボティクスの分野に含まれると思っています。ここもかなり可能性のある分野です。

センサー技術の進化、通信の進化が、新時代のロボットを作る

麻倉 AIBOは相棒というか、愛玩的なコミュニケーションの部分を重視したロボットでした。あれから時間が経過して、ロボットに期待することはすごく広がりました。

平井 広がっていますし、センサー技術が飛躍的に向上し、メカトロニクスの分野でもいろいろな技術が出てきました。あとはネットワークです。AIBOの時代は適した通信の技術がありませんでした。ところが今は、あります。世界中のソニーのロボットがお互いにコミュニケーションを取るとか、プラットフォームビジネスとしてその技術を提供し、他社のロボットとコラボレーションすることもできるでしょう。新しい世界が生まれる可能性が出てきました。当時と比べて進化した技術とインフラ、そして通信を絡めると絶対に面白いことができると思います。商品企画のグループと議論していても、楽しくなってきますね。

麻倉 ロボットはイメージがしやすい。自分を投影できるというか、各人のロボット像があるからディスカッションによって、イメージが広がりやすいですね。

平井 そういうAIBOチックなものをやってみたいと思ったとき、具体的に こうしたいという要望が出てきます。逆にエアロセンスを合弁で作ったZMPと話す時には、どうやってビジネスを広げていくかという、まったく別の視点の議論が始まります。エンターテインメントからビジネス、産業用まで幅広い。だからロードマップを引いて、整理しないといけないと思っています。とてもエキサイティングです。

カテゴリートップへ

最新記事
最新記事

アスキー・ビジネスセレクション

ASCII.jp ビジネスヘッドライン

ピックアップ