7月20日、セールスフォース・ドットコムは「Salesforce Lightning」に関するプレスセッションを実施。2016年を「Lightningの1年」と位置づけ、Salesforce Lightningの機能強化を図る一方、普及を加速する考えを示した。
Lightningを提供する地盤が整った
同社では、2013年からCRMの再構築に取り組んでおり、「Salesforce 1」でモバイル対応を図ったのに続き、2014年には「salesforce 1 Lightning」の提供により、プラットフォームを再構築。さらに、2015年にはLightningをすべての製品に反映して、ユーザーエクスペリエンスをモダン化し、再構築してきた経緯がある。
同社によると、すでにLightningでは10万以上の顧客が利用。65以上のパートナーコンポーネントが提供されているという。
米セールスフォース・ドットコム CRM Apps担当EVPのマイク・ローゼンバウム氏は、「IT産業はつねに大きな変化が訪れる。それにあわせて、我々も変化をしていかなくてはならない。セールスフォース・ドットコムは、3年前にCRMの再構築に取り組み、この3年間を経て、新しいカタチで顧客とつながるLightningを提供する地盤が整った。Lightningによって、新しいエクスペリエンス、新しいビルダー、新しいエコシステムを提供するものになる」とした。
新たなエクスペリエンスとしては、「コンシューマアプリのエッセンスをエンタープライズ領域に持ち込むことができた。つながりがある直感的なユーザー体験をあらゆるデバイスで実現する。すべてのデバイスで一貫したユーザーエクスペリエンスを提供するとともに、だれもが手軽に使えるアプリケーションによって生産性を向上させることができる。そして、アナリティクス機能ともシームレスに連携することで、インテリジェント性を持ったアプリとして利用することができる。今後もインテリジェント化が推進することになるが、これはいまの時点ではまだ最初の一歩に過ぎない」と語る。
コンポーネントの数は現在65で今後も一気に拡大
同社では、「MetaMind」と呼ぶ深層学習機能の提供を開始しているが、今後、これを核としたAI機能の進化が注目される。新たなビルダーとしては、「コンポーネントフレームワーク」と呼ぶLightningの特徴を強調してみせた。「Lightning App Builderによって、コーディングなしでアプリを開発でき、短時間に開発ができるだけでなく、誰でもがアプリ開発者になることができる。ドラッグ&ドロップで変更したり、マウス操作でコンポーネントを配置したりといった使い方も可能であり、コンポーネントも容易に開発できる」とする。
開発されたコンポーネントは、新たなエコシステム環境のなかで、公開したり、販売したりといったことが行なわれる。「標準で用意されているコンポーネントを利用したり、自社あるいは他社が開発したコンポーネントを利用したりすることで、アプリ開発が可能になる。コンポーネントは、Lightning Exchangeを通じて公開されている」とのこと。
現在、65以上のコンポーネントが用意されているが、「Lightning Exchangeに公開する上で、当社による厳しいセキュリティ審査を行なっているコンポーネント、あるいはそれを待っているコンポーネントが数多く存在する。コンポーネントの数は、今後、一気に拡大していくことになる」(セールスフォース・ドットコム マーケティング本部 プロダクトマーケティング シニアディレクターの御代茂樹氏)という。
システムインテグレーターによってもコンポーネントは魅力的
同社では、年3回のアップデートを行なっているが、「Winter 17」のアップデートでは、Lightningコンポーネントから、Salesforceのデータを容易に参照するLightning Data Serviceや、営業、サービス部門が必要とする中核的なコンポーネントをまとめたLightning Core Components、顧客自身が自らのブランドロゴなどを使用することができるLightning Brandingなどの機能を提供していく予定であることも明らかにした。
「Lightningにおいて、コンポーネントが増えれば、システムインテグレーターの仕事がなくなるのではないかとの懸念もあったが、実際には、システムインクデレータ自らがコンポーネントを開発し、これを使うことでアプリ開発の迅速化、効率化につなげている例もある。なかには、200を超えるコンポーネントを独自に有しているシステムイングレータもあり、これまで個別に開発していたアプリを、共通のコンポーネントを活用することで、省力化につなげている。システムインクデレータにとっても、コンポーネントフレームワークの魅力は大きい」(セールスフォース・ドットコムの御代シニアディレクター)という。
さらに、Lightningを導入した企業の成果についても説明。米Mitchellでは、新たなビジネスとして開始したクレーム処理や衝突処理において、Salesforce 1によるモバイルアプリを活用することで、発注処理の効率化を実現。11日間かかっていた作業を、わずか2時間にまで短縮。また、シーゲイトでは、LightningのモダンUIへと変更し、直感的な操作環境と、デスクトップとモバイルのシームレスな環境の実現により、1週間あたり5~10時間の時間短縮を実現したという。
なお、セールスフォース・ドットコムでは、最新のアップデートである「Summer 16」が、50番目の節目のアップデートになったことに触れながら、「今回のアップデートでは、Lightning CPQなどの新たなアプリを提供し、顧客にさらに新たな価値を提案できる。セールスフォース・ドットコムは、創業以来、過去17年間に渡って、顧客の声を聞くことを欠かさなかったことが、15万社以上のユーザー企業に利用されていることにつながっている。ITのアップデートは手間がかかるものというのが常識だが、セールスフォース・ドットコムのアップデートは手間がかからず、それでいて、楽しく、ワクワクするものである。これがクラウドアプリケーションの強みである。我々の企業規模が大きくなればなるほど、提供する価値の規模も大きくなる」(米セールスフォース・ドットコム CRM Apps担当EVPのマイク・ローゼンバウム氏)などと述べた。