今回の「業界に痕跡を残して消えたメーカー」は、前回のGateway 2000の記事にも出てきた、Zeos Internationalを紹介したい。
Gateway 2000と違って、Zeos Internationalは日本には上陸していないので、案外に日本での知名度は低いかもしれないが、その昔にAT互換機を海外通販するなどでPC MagazineやComputer Shoppersを購読していた年配の読者の中には、記憶をお持ちの方もおられよう。
本当は名前をEosにしたかったが
すでに存在していたのでZeosに
Zeos Internationalは、1981年にミネソタ州で創業された。当初の社名はNPC Electronicsで、創業者はGregory E. Herrick氏。創業当時は、アマチュア無線向けのトランシーバーの部品などを通販するという電子部品ショップであった。
ただし、アマチュア無線に混じってマイコンの自作の市場が広がっていったことから、同社もこうした市場に向けたコンポーネントを増やしていく。
最初に有名になった製品はPC Speederと呼ばれるものだったらしい。製品写真を探したのだが、さすがにインターネット上には残っていないようだ。したがって推測になるのだが、同じような製品が他社からも出ていたはずだ。
これは、ISAバスもしくはXTバスに差すカード型クロックジェネレーターであると思われる。当時はCPUと周辺機器が同じクロック信号を利用していたので、これを利用して周波数を変更できる仕組みを備えたカードだったのだろう。
昔見た中には、最大16MHzまでISAバスの動作周波数を上げられるものもあった。286を積んだIBM-PC/ATの場合、CPUへのクロック信号は82284というクロックジェネレーター経由で供給される。
互換機の中にはこの82284互換となるチップが一緒にISAバスのクロックを生成していたからできた芸当ではある。後には原発乗っ取りとか言われるようになるオーバークロック技法の元祖とでもいうべき製品である。
さてこのNPC Electronics社、インテルが1986年に80386を発表したことで、「286ベースのAT互換機に装着できる386プロセッサカード」の開発をもくろむ。この製品にHerrick氏はEosという名前(ギリシャ神話の女神のほうで、某社のカメラとは無関係)を与えた。
問題はこの名前を使う製品を発売している別の会社がすでにミネソタに存在したことだ。さらに悪いことに、これが判明する前にHerrick氏はデザイナーを雇ってロゴやらなにやらのデザインをしてしまっており、判明した時点で3000ドルほど費やしてしまっていた。
これを無駄にしたくなかったHerrick氏、そこでEosの前に(他の名前と被らないように)Zの文字を追加した。これがZeosの名前の由来だ。
かくしてNPC ElectronicsからZeos Internationalに衣替えした同社は、そもそも自社で386のプロセッサカードを設計・製造しようとしたくらいには技術力も生産能力も備えていたため、そのまま386ベースのAT互換機市場に参入することになる。
世界最初の386搭載のAT互換機をリリースしたのはCOMPAQで、COMAQ Deskpro 386/25がその製品であるが、1984年に登場したこの製品の価格は7999ドルである。価格性能比を考えれば当時としては十分安く、競争力のある価格ではあったのだが、絶対的な価格としてはかなり高値だった。
画像の出典は、“computinghistory”
そこで、i386をベースとする互換機を比較的安価で提供できれば勝機はあると判断したのだろう。もちろん最初は286をベースとした製品からの提供となった。これはi386そのものの価格が当初はかなり高かった事に起因する。
やや時期が後になるが、PC Magazineは1988年6月28日号で、"There's a 386 In Your Future"という特集をしており、この号のPC Labsでは11台の386/20MHz搭載PC互換機を集めてレビューをしている。
画像の出典は、“Google Books”
定価は1999~7495ドルと幅が大きいが、テストに利用した構成(Configuration Tested)での価格は5483~1万355ドルとさらに価格が上がっており、価格性能比の判断が難しいところだ。
画像のリストには入っていないのだが、同じ号にZeosは下の画像の広告を出している。必ずしも最安値というわけではないが、それでもCOMPAQなどに比べるとずっと価格競争力は高かった。
画像の出典は、“Google Books”

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