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空の安全を守る空港のドクターイエロー出動!

空港関係者も見たことない!? 羽田空港で激レア特殊車両を取材した!

2016年06月18日 17時00分更新

文● 藤山 哲人 編集●北村/ASCII.jp

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ドライアイスを音速でブラストする超激レア特殊車両
埋込灯器清掃車 激レア度:★★★★★★★★★★★★★

 マニアが見たことないのはもちろん、空港関係者でもまず目にしたことがないほど激レアなのが埋込灯器清掃車。知ってるヒトはディスカバリーチャンネルなどで見て「ははぁ~ん!」かもしれない。羽田にもシッカリ配置されてましたよ! しかも荷台にヒトが乗り込んでるんじゃなくて、ロボットアームによる自動清掃。スゲー!

ベースは工事現場や街中でおなじみの日野の2トン「デュトロ」。なんという親近感

カーゴの航空局の文字がなければ、空港関係のトラックであることすら分からないレア度

ドアを開けると工業用のロボットアームが! それでも何をするのかわからないレア度。公道はハナから走る気がないので、RJTT(羽田の意味)の空港内のナンバーのみ

 空港に夜行くと宝石を撒き散らかしたように、いろんな色のライトが滑走路に埋め込まれている。展望デッキから見ると超キレイで、恋人たちをソノ気にさせちゃう魔法のライト。

 でも色や配置には1つ1つ意味があって、ここでは紹介しきれないが、夜間でも飛行機を安全に離着陸させるのに大切なライトだ。

空港を埋め尽くす埋込灯器。羽田には全部で9000灯あるという

滑走路の端を示す埋込灯器。緑のラインから先が着陸目標で、H字の上側(赤ランプではない箇所)の範囲内でタイヤを接地させなければならない。逸脱した場合は、着陸再履行(ゴーアラウンド)になる。他にもたくさん意味がある

こんな感じで路面に埋め込まれている。写真は滑走路までの誘導路。横方向からはライトが見えないってのがミソ

 でもこのライト、1日辺り780回も離着陸する飛行機に踏まれるので(踏まれないのもあるけど)、とんでもなく汚れる。飛行機飛んでるのに、とんでもないとは、これいかに(寒いっすか?)。ライトが汚れると光が見えなくなって、安全運航にも差し支えるのだ。

汚れた埋込灯器(左)と、きれいな埋込灯器。正面のガラス部分のよごれに注目

汚れは触ると一発でわかるタイヤのゴム。ねとねとで取れる気がしない

ガラス部分にも付着するので、ライトが見えなくなったり、規定の距離から確認できる明るさを確保できなくなる

本題から外れるけど珍しいものなので、埋込灯器のカットモデル。見たところAC100V仕様のハロゲン灯だった。ボディ自体が放熱器になるのかなぁ?

 冒頭で触れたとおり、1灯1灯には意味があるので、たとえ1灯でも見えなくなってはダメ!そんなライトが羽田には約9000灯あるので、これを手作業で掃除するのは無理。そこで登場するのがこの清掃車というワケ。

 実際によごれたライトを触ってみると、タイヤのゴムが付着しているので、雑巾じゃ太刀打ちてきないほどネッチョねちょ。

 車いじったり、工作するヒトはよくご存知のブチルゴム(黒くて柔らかい)の両面テープがくっついている感じで、溶剤ぶっかけなきゃ絶対取れネー!という汚れだった。もし仮に溶剤使っていいから手作業で掃除して!といわれたら、1灯15分はかかるだろう。

 この清掃車が凄いのは、それを20秒でやっちゃうというのと、ドライアイスを吹き付けてキレイにするって裏技。しかも貨物室には生産ラインなどでよく見るロボットアームが設置されていて、運転席からのボタン1発でライト全体を20秒ほどでキレイにしてくれちゃう。

まずは車を転がして埋込灯器に近づける

インパネ上のモニターに後方路面の映像が映るので、緑の枠内に入れる

今度は左のモニターを見て、清掃モードや埋込灯器を指定すると、ロボットが動き出す

実際の清掃はドアを閉めたまま行なう。ロボットアームは、スタートポジション

運転席から清掃開始コマンドを受けると、アームが埋込灯器を認識して、自動的に清掃する

アームの先のホースから高圧ガスが出ているのが分かる

 写真で見ると分かる通り、ロボットアームの先にはホースがあり、高圧ガスを使って汚れを落としているのだが、そこにはトンチみたいなアイディアがあった!

 ヒントになるのは、サビや塗料を落とすのに使う、砂を高圧空気で飛ばしてサンドペーパー掛けをする「サンド・ブラスト」という方法。でもサンドブラストで埋込灯器を清掃すると、滑走路に大量の砂をまき散らすうえ、灯りのガラスが曇りガラスになってしまう。

 そこで砂じゃなくて、砂より柔らかくて滑走路に撒き散らからないものでブラストしよう!というのだ。こうなると、トンチとかなぞなぞの世界。でも答えが見つかった。それがドライアイスだ。

 この車は砂の代わりに細かく砕いたドライアイスを高圧で噴射することで、「ドライアイス・ブラスト」している。

ドライアイスっていうと四角い塊のイメージだが、こういうペレット状のドライアイスがあるという

ホースの先から砂状のドライアイスの粒を、筆者が調べたところによれば、秒速300m(時速1080km)で噴射する。それ音速じゃん!

左のガラスレンズの汚れが、ドライアイスの力で右までクリアになるんだから凄い!

 車両には、直径3mm、長さ1cm程度の特殊な形をしたドライアイスのペレットを積み込む。ロボットアームは、埋込灯器にペレットを砂状に砕いたものを、高圧・高速で噴射して、汚れをこそぎ取るのだ。

 かなり離れて撮影していたのだが、ホースの先がこちらを向くとエアコンの冷気のような冷たい猛烈な風が吹き付けてきた。でもその時点でドライアイスは溶けてしまっているようで、粒があたる感じはまったくない。

 これなら滑走路を濡らさず、汚さず清掃できる。これは筆者の考えだが、おもな汚れは柔らかなゴムなので、ドライアイスの冷気を当てていったん固まらせることで、汚れを取りやすくする意味もあるようだ。洋服についたガムを取るときは、いったん氷水で冷やすと簡単キレイに取れるのと同じしくみってわけ。

がんばれ、空のドクターイエロー! 国土交通省航空局

 たった4台の特殊車両を紹介しただけなのに、この疲労感はなんだろう……。空港関係者でも見たことがない、超激レアな特殊車両を紹介してきた。

 空の旅の主役は飛行機なので、どうしても飛行機やキャリアのサービスや安全性などに目が向いてしまう。でもその安全を支えているのは、空港であり、紹介した激レア特殊車両であり、それをオペレーションする人々の手にかかっている。

 国土交通省なんてスゲー遠い存在だと思ってたけど、今回の取材で安全運航というフェーズから僕らに一番近い存在ということが垣間見られた。

 なにより、もっとお堅い人ばっかりかと思ったら、意外にフレンドリーな人々ばかりで驚かされた。やっぱ、みんな特殊車両が大好きみたい

【関連サイト】

【取材協力】

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