ドライアイスを音速でブラストする超激レア特殊車両
埋込灯器清掃車 激レア度:★★★★★★★★★★★★★
マニアが見たことないのはもちろん、空港関係者でもまず目にしたことがないほど激レアなのが埋込灯器清掃車。知ってるヒトはディスカバリーチャンネルなどで見て「ははぁ~ん!」かもしれない。羽田にもシッカリ配置されてましたよ! しかも荷台にヒトが乗り込んでるんじゃなくて、ロボットアームによる自動清掃。スゲー!
空港に夜行くと宝石を撒き散らかしたように、いろんな色のライトが滑走路に埋め込まれている。展望デッキから見ると超キレイで、恋人たちをソノ気にさせちゃう魔法のライト。
でも色や配置には1つ1つ意味があって、ここでは紹介しきれないが、夜間でも飛行機を安全に離着陸させるのに大切なライトだ。
でもこのライト、1日辺り780回も離着陸する飛行機に踏まれるので(踏まれないのもあるけど)、とんでもなく汚れる。飛行機飛んでるのに、とんでもないとは、これいかに(寒いっすか?)。ライトが汚れると光が見えなくなって、安全運航にも差し支えるのだ。
冒頭で触れたとおり、1灯1灯には意味があるので、たとえ1灯でも見えなくなってはダメ!そんなライトが羽田には約9000灯あるので、これを手作業で掃除するのは無理。そこで登場するのがこの清掃車というワケ。
実際によごれたライトを触ってみると、タイヤのゴムが付着しているので、雑巾じゃ太刀打ちてきないほどネッチョねちょ。
車いじったり、工作するヒトはよくご存知のブチルゴム(黒くて柔らかい)の両面テープがくっついている感じで、溶剤ぶっかけなきゃ絶対取れネー!という汚れだった。もし仮に溶剤使っていいから手作業で掃除して!といわれたら、1灯15分はかかるだろう。
この清掃車が凄いのは、それを20秒でやっちゃうというのと、ドライアイスを吹き付けてキレイにするって裏技。しかも貨物室には生産ラインなどでよく見るロボットアームが設置されていて、運転席からのボタン1発でライト全体を20秒ほどでキレイにしてくれちゃう。
写真で見ると分かる通り、ロボットアームの先にはホースがあり、高圧ガスを使って汚れを落としているのだが、そこにはトンチみたいなアイディアがあった!
ヒントになるのは、サビや塗料を落とすのに使う、砂を高圧空気で飛ばしてサンドペーパー掛けをする「サンド・ブラスト」という方法。でもサンドブラストで埋込灯器を清掃すると、滑走路に大量の砂をまき散らすうえ、灯りのガラスが曇りガラスになってしまう。
そこで砂じゃなくて、砂より柔らかくて滑走路に撒き散らからないものでブラストしよう!というのだ。こうなると、トンチとかなぞなぞの世界。でも答えが見つかった。それがドライアイスだ。
この車は砂の代わりに細かく砕いたドライアイスを高圧で噴射することで、「ドライアイス・ブラスト」している。
車両には、直径3mm、長さ1cm程度の特殊な形をしたドライアイスのペレットを積み込む。ロボットアームは、埋込灯器にペレットを砂状に砕いたものを、高圧・高速で噴射して、汚れをこそぎ取るのだ。
かなり離れて撮影していたのだが、ホースの先がこちらを向くとエアコンの冷気のような冷たい猛烈な風が吹き付けてきた。でもその時点でドライアイスは溶けてしまっているようで、粒があたる感じはまったくない。
これなら滑走路を濡らさず、汚さず清掃できる。これは筆者の考えだが、おもな汚れは柔らかなゴムなので、ドライアイスの冷気を当てていったん固まらせることで、汚れを取りやすくする意味もあるようだ。洋服についたガムを取るときは、いったん氷水で冷やすと簡単キレイに取れるのと同じしくみってわけ。
がんばれ、空のドクターイエロー!
国土交通省航空局
たった4台の特殊車両を紹介しただけなのに、この疲労感はなんだろう……。空港関係者でも見たことがない、超激レアな特殊車両を紹介してきた。
空の旅の主役は飛行機なので、どうしても飛行機やキャリアのサービスや安全性などに目が向いてしまう。でもその安全を支えているのは、空港であり、紹介した激レア特殊車両であり、それをオペレーションする人々の手にかかっている。
国土交通省なんてスゲー遠い存在だと思ってたけど、今回の取材で安全運航というフェーズから僕らに一番近い存在ということが垣間見られた。
なにより、もっとお堅い人ばっかりかと思ったら、意外にフレンドリーな人々ばかりで驚かされた。やっぱ、みんな特殊車両が大好きみたい