空港ではたくさんの特殊車両が活躍する。以前「マニア向け専門誌にも載らない空港用特殊車両をほぼ見てきた!」の記事でお伝えしたのは、荷物を運ぶカーゴトラクターや、トーイングカー、ハイリフトローダーなどだ。ヒトによっては、ヒコーキよりも特殊車両LOVE! なマニアもいるだろう。
前回紹介した特殊車両は、展望デッキや出発ゲートなどでもよく見られるもの。頑張れば一般ピープルでもついてこられる車両だったが、今回紹介するのレア中のレアな車たち。
ボディーカラーは、ほとんどの車両が黄色で統一され、飛行場でも時々見かける程度。ガチ勢でも外観から何の車両かを区別するのは難しいはずだ。
そんな激レア特殊車両は、空港のドクターイエローだ。ほとんど見ることができないけど、絶対に必要で、安全運航の守護神だ。新幹線のドクターイエローと同じで、彼らのミッションは空港の保守管理。
空港で目に見えない安全を整備する、国土交通省航空局管轄の特殊車両。車両の隅々まで徹底的に接写するぜ!
VIPのエスコートはお任せ!の汎用緊急車両
フォローミーカー 激レア度:★★
展望デッキからでも、たまに走っているのを見かける「フォローミーカー」だ。なーんだ、高速道路公団にある「この先事故」って表示する車じゃん!と思ったら大間違い。
たとえばサミットに参加するために羽田に飛んできた、各国首脳を乗せたVIP機。初めて羽田に着陸するパイロットだって多くいる。でも縦横に走る滑走路、第1、2&国際ターミナルなどで、羽田は滑走路に降りてからゲートにたどり着くまでが巨大迷路なのだ。
もちろんパイロットは空港内の地図を持っているし、管制塔から交差点番号を「A21を右」みたいに誘導してくれる。
しかも羽田ぐらい混雑している空港では、各飛行機がどの誘導路(タクシーウェイ)を通っているか? 近くを走行する作業車がいないか? などを、ひと目で把握できるリアルタイム位置確認電子地図(要は羽田空港のマップ上に、たくさんの飛行機や作業車が表示できるカーナビ:コレも国交省管轄)が配備され、進路が交差する航空機や車両があっても、きちんと把握できるようになっている。
「誘導路の交差点に信号つければいいんじゃない?」と思うかも知れないが、数分ごとに離着陸を繰り返すラッシュ時は、信号なんてつけたら大渋滞。コンピューターではさばききれない、人間の予測と感覚とノウハウが必要なのだ。
そんな二重三重の安全策を講じているが、念には念を入れたのがフォローミーカー。羽田に慣れていないVIP機が着陸すると、飛行機の前にフォローミーカーがつく。
車両後ろの電光掲示板には、FOLLOW ME(ついておいで!)と書かれており、管制塔からは「フォローミーカーの誘導に従ってください」の無線連絡。これならどんなに不慣れな飛行機でも、羽田の複雑な迷路をすんなりクリアして、ゲートまでたどり着けるというものだ。
ただ運転上注意しなきゃならないのが、「ブレーキを踏んじゃダメということ」。コクピットからフォローミーカー見るとブレーキランプが点灯するので、急停車する可能性があるため、パイロットも急ブレーキをかけざるを得ない。だからフォローミーカーは、ブレーキを踏まずに徐々に減速するというのがセオリーだという。
少し飛行機に詳しいヒトだと、フォローミーカーって黄色じゃなかったっけ? と思うかも知れない。ソレ大正解!
でも黄色だったのは少し昔の話で、現在は空港用車両でも緊急車両は、「黄緑の塗装をする」という国際的なルールになっている。そんなわけで、羽田のフォローミーカーも黄緑になっているというわけ。
VIP機を誘導するクルマがなんで緊急車両なのか? 実は、普段は滑走路内に異常があったとき、緊急車両として現場に急行するのがメインの仕事なのだ。ゆえに、フォロミーカーは緊急車両にカテゴライズされている。
たとえば滑走路内に鳥の群れが入ってきたときは、空砲を持った担当者がフォローミーカーに乗り込み、群れの近くで発砲して鳥を追い払う。ちなみに緊急車両であっても空港内を自由に走ることはできず、管制塔とやりとりして、許可をもらってから規定ルートを走る。
また、滑走路や誘導路に異常があった場合は、フォローミーカーで点検に行く。しかも毎日早朝(といっても日の出前)に、全滑走路の目視点検を行なっている。
羽田には4台のフォローミーカーが配置され、空港運用中の緊急車両やVIP機誘導として活躍している。見せていただいた車両は、日産のX-Trailだったが、他にも三菱のパジェロなどもあるらしい。ただどれも四駆のようで、滑走路以外の芝の敷地内も走れるようにしているようだ。