300のパートナーを軸に販売を倍に
「ブラザーはA4レーザープリンターおよび複合機市場全体の35%を誇る量販店ルートにおいては高い実績がある。ここでは顧客満足度1位の評価を背景に、50%以上のシェアを目指していく。だが、市場全体の約45%を占めるシステムインテグレータを含む販売店ルート、約20%を占めるメーカー直販ルートでの展開に遅れているという反省がある。ブラザーのA4レーザープリンターおよび複合機のビジネスを成長させるには、販売店ルートの攻略が絶対に必要。拡販の余地はここにあると考えている」とする。
ブラザー販売では2011年にビジネス向けブランドとして「JUSTIO PRO」シリーズの販売を開始したのにあわせて、約30社の販売パートナー体制を構築。これが現在約300社にまで拡大している。これらのルートを活用することで、この分野での販売を2倍規模にまで増やす考えだ。
三島社長は「量販市場での販売を維持しながら、販売パートナーを通じたルートを強化していくことになる。販売パートナーとの関係強化はますます重要になる」と繰り返す。
とくに重点的に取り組むのが、これまで同社が得意としてきた「店舗・販売」、「医療・介護」といった業種向け提案だ。
「店舗においては、バックヤードで利用されることが多く、医療分野においては、ナースステーションにおいて、親和性が高いプリンターとして評価を得てきた。医療分野に強い販売パートナーとのクロスセルを促進し、この分野での存在感を高めたい」とする。
さらにこれ以外にも「学校・教育」、「金融・保険」、「建築・不動産」、「IT・通信」などの業種に対して、積極的な提案を行なっていく姿勢をみせる。
ブラザー販売では2016年4月から、ビジネスソリューション事業部による新体制で、従来のビジネスルートの営業とソリューションとの連携を強化。これらの市場に向けてダイレクトにマーケティング施策を展開することで、販売パートナーを支援する考えだ。「業種別ニーズに応えるなど、情報通信機器事業全体で業種別ソリューションの提案を加速していくことになる」という。
2016年度にはレーザープリンターおよび複合機で約10万台の出荷を目指すことになるが、「シェアの目標はないが、少しでも存在感を高めたい。個人市場、SOHO市場に加えて、中小企業分野にも本格的に踏み出すことでソリューションを強化。プリンティング事業の収益強化を進めたい」と三島社長は語る。
今回の新製品は、製品そのものは地味であるがこれが同社のプリンティング事業の方向転換を色濃く示したものであるのは明らかだ。新製品に込められた意味は極めて重要である。

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