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いま聴きたいオーディオ! 最新ポータブル&ハイエンド事情を知る 第5回

おそらく世界最高峰、ゼンハイザー「HE-1」を聴く

600万円を超すヘッドフォンで垣間見た世界 (1/2)

2016年05月26日 15時00分更新

文● 小林 久 編集●ASCII

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ゼンハイザーロゴが付いた、専用カスタマイズの真空管。チェコJJ Electronic製の真空管の周囲をクオーツガラスで覆っている。

 ゴールデンウィーク直前の4月28日、都内で開催された「HE-1」の試聴会に参加してきた。HE-1は、ドイツのゼンハイザーが現在開発中のフラッグシップヘッドフォンで、年内の発売を目指している。

HE-1は28日のプレス関係者向け試聴会だけでなく、翌日開催の“春のヘッドフォン祭 2016”で抽選のうえ、一般向けにも公開された。

超“究極”を目指したヘッドフォンシステム

 HE-1は知る人ぞ知る、伝説のヘッドフォン「Orpheus」の流れを汲む製品だ。Orpheusは、ゼンハイザーが1991年に300台限定で生産した製品。コストや手間を惜しまず、最上を追究したら何ができるかを具現化したものである。

 そこから25年=四半世紀を経て登場する後継機がHE-1だから、気合いが入るのも当然だろう。ヘッドフォン界における、超“究極”を目指した存在と言える。

伝説のヘッドフォン再生システム「Orpheus」(写真は昨年9月にベルリンの“IFA 2015”の会場で撮影したもの)限定300台、価格2万マルクというド級の静電型ヘッドフォンだった。

 “究極”という言葉はよく使われるが、極限を究めるのは本当に難しいことだ。オーディオの世界ではそういう挑戦をしてくるメーカーがたまにある。ドイツのゼンハイザーが開発した「HE-1」は超ド級のヘッドフォンシステムであり、究極を超える究極を目指した製品と言えるかもしれない。

 ちなみにOrpheusは、約2万マルクで販売されたそうだ。当時のレートで換算すると、およそ250万円程度となる。マルクというのは西ドイツで使われていた通貨。1991年というとまだベルリンの壁が壊れたばかりで、ユーロも当然のように導入前であった。

 筆者は当時高校に入学したばかりで、過ごしてみると25年という時間はあっという間に過ぎた感覚だが、改めて振り返ると、思った以上に時代の落差を感じる。

真空管アンプ(HEV90)とヘッドフォン(HE90)で構成。扇形の本体に金属でシールドされた6本の真空管が差さっている姿は、古代ローマの闘技場をほうふつとさせる。

 そのDNAを受け継ぐHE-1だが、こちらの価格も度肝を抜くものとなっている。欧州での販売価格は約5万ユーロ(約610万円)とのことで、一瞬、桁が“間違っている”と思ってしまうが、そう発表されているので正しいのだろう。

 国内での投入時期や販売価格は未定だが、Orpheusと比較してざっと2.5倍ほどの金額だ。これを見ると、ゼンハイザーがら今年出たばかりのハイエンドヘッドフォン「HD800S」(実売20万円強)も安価に感じてしまうから不思議だ。

 ちなみに新ボクスター(718)の価格は658万円らしいので、同じドイツメーカーのポルシェを新車で買うよりは安価だ。もちろん買った後に、自動車税や自動車保険、ガソリン代もかからない(電気代はかかる)。

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