すべての企業に想像してみてほしい
田澤由利氏に訊く「ふるさとテレワーク」が絶対必要なワケ
2016年04月25日 06時00分更新
「事業継続」の困難な時代に
「ふるさとテレワーク」は、地方にテレワーク拠点を作り、東京の仕事をそのまま地方で行えるようにする取り組みだ。これにより、地方に企業や移住者を誘致し、新しい人の流れを創る。
効果はいくつもあるが、真っ先に思い浮かぶのが「地方創生」である。それこそ神山町のように、サテライトオフィス設立などにより次第に人が集まり、商店街が再生するような例が生まれている。総務省の説明でも「第2・第3の神山町」を創ることは、まさに「ふるさとテレワーク」の狙いの1つ。2020年までに地方から東京圏転入を6万人減らし、東京圏から地方転出を4万人増やす目標も描いている。
一方、企業の視点に立てばどうだろう。筆者はそれこそ近い将来「事業継続性」に大きく関わってくると考えている。「ふるさとテレワーク」のような仕組みがなければ、「事業が立ち行かなくなりますよ」というわけだ。
理由は「人材不足/急な欠員」である。
「人材不足」については、2016年1月に発表されたエン・ジャパンの調査結果にて「84%の企業が人材不足を実感」と報告された。が、おそらくこれは序の口だ。「平成27年(2015年)国勢調査速報値」も発表されているが、人口は1億2711万人、2010年から94万7000人の減少となり、ついに大正9年の調査開始以来「初めての減少」となってしまった。しかも、今後は坂道を転げ落ちる一方と予測されており、企業の人材確保はますます難しくなっていく。
もう1つ、現状のままで「女性の活躍」を推進できるのか。今後の人材不足解消に有力な「女性の活躍」だが、依然として、出産・育児期の30代前半で一時的に労働力率が下がる「女性のM字カーブ問題」が存在し、女性が働き続けられる環境が社会的に整っているとは言いがたい。保育園が決まらず、そのまま離職せざるを得ないケースがあることも、「保育園落ちた」問題で報じられている通りだ。企業においては、女性の「急な欠員」によって業務が停滞するケースも十分考えられる。
男性も「介護離職」の可能性
加えて、今後急増が予想されるのが「介護離職」だ。
「平成27年(2015年)版高齢社会白書(概要版)」をみると、高齢化率は26%に上昇。人口そのものが減少する中、65歳以上の高齢者人口は過去最高の3300万人となった。そして昨今、社会問題となっているのが「認知症高齢者の徘徊問題」である。
厚生労働省の「認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)」では、認知症患者数が2025年には全国で700万人を超えるとされている。65歳以上の高齢者のうち、5人に1人が認知症となる計算だ。それに伴い、「徘徊による行方不明」も増えている。地域で見守るような取り組みも始まってはいるが、政府の方針が「在宅介護重視」なことからも、家族の介護にかかる負担は大きなものとなる。
実際、筆者のおじは高齢でありながら、いとこの世話をする「老老介護」に陥っている。厳密には「健康上の介護」ではなく「奇行への対処」のような状況なのだが、自治体の民生委員や、時には警察も巻き込んだ騒ぎとなっている。そんな身近な例もあって超高齢社会を実感していたりするのだが、こうした状況はもうすぐ珍しいことではなくなっていくだろう。
もう1つ筆者のまわりの例だと、家族の会社では就業規則が厳しく、就業中にちょっと銀行やコンビニに行くことも許されておらず、公的な手続きなどもある程度ためてから、午前休・午後休を取って一気に済ませたりしている。当然、テレワークができる状況とは程遠い。IT業界ばかり見ている筆者には驚くような環境なのだが、こうした企業もあるのだ。
一方で産休制度はしっかりしており、柔軟に休暇を取っているそうだ。が、女性の多い部署では一度に3~4人が休暇に入ることもあり、やはり人材不足には悩まされているという。そこに今後、男性の介護離職が重なったら、果たして事業継続は可能なのだろうか。実際、2015年頃から「人材不足倒産」という言葉も現れ始めているのだ。
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