2016年3月30日から開催されたマイクロソフトの開発者カンファレンス『Build 2016』において、Windows 10 Mobileの存在感が薄かったことが話題になっています。
たしかに基調講演では、2日間を通してWindows 10 Mobileデバイスがあまり登場せず、HoloLensやXbox Oneのほうが目立っていた印象があります。また、Windows 10の開発を統括するテリー・マイヤーソン氏も現段階ではWindows 10 Mobileにフォーカスしていないことを認めたことが報じられ、海外メディアでは「マイクロソフトはWindows Phoneを見捨てたのか」という議論が巻き起こりました。
海外と異なり、Windows 10 Mobile端末がこれまでになく盛り上がっている日本では、温度差があるようです。果たしてこの騒動をどのように受け止めるべきでしょうか。
デバイスではなくアプリ開発にフォーカスしたBuild
マイクロソフト以外のWindows 10 Mobile端末がほとんど登場していない海外では、2016年に入ってから「Windows Phoneは死んだのか」という議論が続いていました。
また、2月のMWC 2016では、マイクロソフトが毎年恒例だった発表イベントを見送っており、その上でBuild 2016の基調講演でも露出が減ったことで、騒動が大きくなったものと考えられます。
BuildでWindows 10 Mobileがあまり強調されなかった理由について、日本マイクロソフトでは「特に理由はない。他にも紹介しきれなかった製品や技術がたくさんある」と回答しています。
たしかに基調講演では、2-in-1型PCやSurface Hubなど、多くのハードウェアの名前が直接は挙げられていません。しかしWindows 10向けのUWPアプリの開発は、Windows 10 Mobileを含む一連のデバイスを広くターゲットにしたものです。
特に、2日間の基調講演を通して話題になったクロスプラットフォーム開発環境「Xamarin」を使えば、Windows上でiOS、Android、UWPアプリをまとめて開発することができます。iOSやAndroidでのモバイル利用を想定したアプリがWindowsストアにもリリースされれば、Windows 10 Mobileの魅力を高めることになるでしょう。
Windows 10 MobileはモバイルOSにおける選択肢のひとつ
このようにマイクロソフトは、Windows 10 Mobileを見捨てたわけではない、といえます。その一方で、iOSやAndroidとの関係も改めて言及されました。
米テックメディアのThe Vergeは、テリー・マイヤーソン氏が「たくさんのスマートフォンユーザーをターゲットにしたいならば、Windows 10 Mobileはそれに適した方法ではない」と発言したと報じています。
すでにマイクロソフトは、Windows 10 Mobileだけでなく、iOSやAndroidにもOfficeアプリを提供しており、Office 365やOneDriveといったクラウドも利用できるようにしています。もしiOSやAndroidがユーザーの利用シナリオに適しているならば、そこからマイクロソフトのサービスを使ってもらえれば良い、ということです。
ではWindows 10 Mobileが不要かといえばそうではなく、Windows環境との親和性の高さは他のOSにはない魅力です。日本で端末メーカーが次々と参入しているのも、コンシューマー市場でiOSやAndroidに真正面から勝負を挑むわけではなく、国内法人ユーザーから一定の需要があると見込んでいるからです。
一方でマイヤーソン氏は、スマートフォンについての新たな試みを準備しているとも語っており、次の展開を示唆しています。根強い噂のある「Surface Phone」や、Atom採用によるWindowsデスクトップアプリ動作の可能性を含め、マイクロソフトのモバイル戦略にはまだ切り札が残っている印象もあります。
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