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「One Yamaha」でコラボレーションし、新市場を開拓

オリジナル製品もあり!ヤマハネットワーク機器の中国進出

2016年03月29日 07時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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2011年から中国進出を進めているヤマハのネットワーク機器。今回は現地法人とパートナーシップを組むヤマハモーターソリューションの担当者に、ヤマハのWeb会議システムでインタビューし、市場動向や中国市場オリジナル製品開発の経緯、現地進出の苦労などを聞いた。

ヤマハのWeb会議システムで中国と結んでのインタビュー

One Yamahaで中国市場に挑むヤマハのネットワーク機器

 長らく国内市場をメインに展開してきたヤマハが、ネットワーク機器の中国展開を始めたのは2011年にさかのぼる。同社の中期経営計画では、新興国への展開を全社で進めるというビジョンが打ち出されており、ネットワーク機器や会議システムなどのエレクトロニクス分野も重要な領域になっている。こうした中、伸び盛りの中国のネットワーク機器市場を開拓し、特にスモールビジネスにおいてシェアを穫っていくのが同社の戦略だったという。

 とはいえ、垂直的な立ち上げは難しかった。2008年頃から足繁く中国に通って、現地のビジネス立ち上げを模索してきたヤマハ 音響営業統括部 SN営業部 国内営業課の小島務氏は、「中国においても『ヤマハ=音の会社』というイメージがあり、ネットワーク機器を展開するイメージがなかった」と語る。

ヤマハ 音響営業統括部 SN営業部 国内営業課の小島務氏

 これに対して、ヤマハは中国で販売チャネルを持っていたヤマハ発動機の情報システム部門子会社の現地法人であるヤマハモーターソリューション(雅馬哈発動機(厦門)信息系統有限公司(YMSLX))と販売代理店契約を締結し、「One Yamaha」として中国市場に挑んでいる。ネットワーク機器の販売を手がけているヤマハモーターソリューション 副総経理 上海分公司 総経理(兼)の申君乔氏は、ヤマハ発動機に入って22年目という生粋の“ヤマハマン”だ。

 申氏は、「まずは自分自身がヤマハの人間ということで、赤いヤマハ(ヤマハ発動機)と青いヤマハで共同して、ビジネスを大きくしたいという思いがありました。すでにヤマハ発動機は販売チャネルを持っているし、ネットワーク機器もハイエンドはシスコが多いが、ローエンドは需要があると考えた」と語る。

オリジナル製品の投入で中国市場のニーズを満たす

 中国では展開する機種も絞った。現在は「RTX1200」やSRT100の中国版である「RTX800」などのルーター、「SWXシリーズ」のスイッチなど6機種を展開しており、2016年4月にはRTX800の後継機にあたる「RTX820」という新機種(RTX810相当)も発売する。「たとえば、全国規模のISPや小規模なISPで、それぞれMTUの設定が異なるため、ソフトウェア面でのローカライズが必要だった」と申氏は語る。

 市場ニーズの違いは、外見的な部分にも現れる。2014年12月から上海に駐在している小野田 充宏氏は、「中国の方は重厚長大なものが好きなんです。その点、プラスチック筐体のヤマハのルーターは、日本では軽くて丈夫というイメージで受け入れられているのですが、中国では値段の割に安っぽいと見られます(笑)」と小野田氏は語る。

上海オフィスから取材に応じてくれたヤマハモーターソリューション 副総経理 上海分公司 総経理(兼)の申君乔氏(左)とヤマハ楽器音響(中国)投資有限公司 網絡会議系統企画室 小野田 充宏氏

 こうした現地のニーズも含め、ヤマハモーターソリューションズの方々に、今の中国だったらこういった商品が受けるという意見をいただいて、中国向けにカスタマイズした製品を展開している」と小島氏は語る。これに対して「同じヤマハの人間として、現地のスタッフとコミュニケーションをとり、不具合や機能向上などのフィードバックを製品に活かすことができる。これが他社との大きな違い」と申氏も応じる。

 驚くことに中国オリジナルとなる製品も展開している。「スマートゲートウェイボックス」を謳う「SGX808」はルーター機能に加え、搭載した小型Linuxの環境を開放。ヤマハの専門サイトに認定アプリケーションを掲載し、ユーザー側のSGX808に導入できる仕組みを導入した。「たとえば、店内用の勤怠管理システムや中国のSNSであるWeixin対応のゲストWi-Fi認証、あるいはIP電話用のSIPサーバーなどが用意されている」(小島氏)とのことで、手堅い法人ニーズの多い日本では考えられない尖った製品だ。

Web会議で利用したUSB接続の「YVC-1000」と中国市場オリジナル製品であるスマートゲートウェイボックス「SGX808」(右)

 これに合わせ、アプリケーションをユーザーが導⼊した際に、開発元のサードパーティに料⾦が⽀払われるシステムも構築した。さらに、電波強度やルーター設定可能なAPIも⽤意し、ユーザー側のシステムとネットワークが連携できるようにした。「中国では店舗でのインターネット活⽤が進みつつある。こうしたニーズに対して、SGX808とRTXシリーズを展開していきたいと思います」と申⽒は語る。

 こうしたシステムのほか、設定のしやすさも鍵。中国ではハイエンドとローエンドの二極化が進んでおり、しかも国家関連の案件には外資企業が関われないため、おのずとローエンド市場をフォーカスすることになる。「とにかく電源を挿せば使える、店員や主婦でも設定できる必要がある」(申氏)というニーズを満たすべく、従来よりも設定のしやすさを意識したという。

 中国市場向けのSGX808を開発した背景について、小島氏は「中国は拠点ごとにニーズが異なり、アプリケーションのニーズが実に多種多様。ネットワークがつながるのは当たり前で、上位のアプリケーションでお客様に貢献できるものづくりができないか考えた」と語る。

とにかくモノが素晴らしいし、頑丈で保守の手間がない

 申氏はヤマハのルーターについて、「とにかくモノが素晴らしい。頑丈で壊れにくいので、保守の手間がない。デザインも美しいと思います」と高く評価する。人件費が高騰化しつつある昨今、壊れない、保守の手間がない、遠隔からメンテナンスできる、といったヤマハのネットワーク機器の特徴は大きなアドバンテージになるという。

 一方で、「モノがいいのはわかるが、正直高すぎる。あとは市場へのレスポンスや納期のスピード。1年で市場のニーズがどんどん変わる中、開発や納品までのスピードはもっと上げて欲しい。これを実現してくれれば、われわれももっと自信をつけられます」と愛のムチも忘れない。これに対して小野田氏は、「価格の面は(新製品の)RTX820で改善します。レスポンスに関しても私のところで改善できるところはどんどんやっていきます」と小野田氏は語る。

 “楽器のヤマハ”との初のコラボレーションとなるヤマハ発動機出身の申氏は、「丁寧な日本語ができないかわりに、私は小野田さんにも、小島さんにも何でも言うし、言える関係。互いに信頼関係があるから、One Yamahaの仕事を継続的にやっていける」と語る。一方の小野田氏は、「日本でもヤマハとヤマハ発動機の区別がない方は多いし、中国ではましてそう。でも、ヤマハ発動機のローカルの人たちは日本人以上にヤマハブランドを意識してくれている」と語る。同じヤマハブランドで直言できる関係が中国進出の原動力となっていきそうだ。

 現状、SGX808は医薬品やアパレル、日常用品の店舗系、RTXシリーズが商社や製造、貿易などの企業で導入されている。しかし、日系企業がほとんどで、中国のユーザーは正直まだまだ少ない。こうした中、今年の抱負を聞くと、申氏は「ラインナップも増やせるので、今まさに使っているYVC/PJPシリーズの会議システムもやりたい。短期的ではなく、継続的にやらせていきたい」と語る。

(提供:ヤマハ)

特設サイトではWebメディア3社座談会も掲載中!

 

ヤマハのネットワーク機器20周年の特設サイトでは、Webメディア3社(ASCII.jp、ImpressWatch、マイナビニュース)によるの記者による座談会「メディアから見たヤマハ」が掲出されている。アスキーからはTECH.ASCII.jpの大谷イビサが参加しているので、ぜひ内容をチェックいただきたい!

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