
今回のことば
「Watsonの原点は、30年前に、日本アイ・ビー・エムの大和研究所で研究を開始したテキストマイニング。今回のWatson日本語版の提供開始は、いわば日本に里帰りしたともいえる」(日本アイ・ビー・エムのポール・与那嶺社長)
ソフトバンクと提携し、日本語版Watsonの提供を早めた
日本アイ・ビー・エムおよびソフトバンクは、コグニティブコンピューティングシステム「IBM Watson日本語版」の提供を開始する。
日本語化されたのは、現時点では 意図や意味を理解し、回答を見つけ出すことができるアプリケーション開発のための「Natural Language Classifier(自然言語分類)」、Watsonとの自然なやりとりを可能にすることができる「Dialog(対話)」、機械学習機能を活用することで、情報検索能力を向上することができる「Retrieve and Rank(検索およびランク付け)」、PDFやWord、HTMLといった各種フォーマットで提供されるコンテンツを、IBM Watsonで使用するフォーマットに変換する「Document Conversion(文書変換)」、日本語による自然言語を理解し、発声する「Speech to Text(音声認識)」と「Text to Speech(音声合成)」だ。
いずれもWatson APIとしては、基本的な機能であり、まずは最低限必要なものが揃ったといえるだろう。
すでに英語版では30種類のAPIがあり、先頃、米ラスベガスで開催されたIBMのプライベートイベント「InterConnect 2016」では、新たに4つのWatson APIを発表してみせた。
新たに発表したのは、言葉の裏にあるトーンを理解する「Tone Analyzer」、表現豊かで、感情を持ったスピーチが可能になり、相手にニュアンスを伝えることができる「EXPRESSIVE TEXT TO SPEECH」、言葉から相手の怒りや嫌悪感、喜びなどをWatsonが理解する「EMOTION ANALYSIS」、静止画、動画を問わず、画像をピクセル単位に分析して、過去の映像と比較して、どんな画像かを判断する「VISUAL RECOGNITION」といったように、より踏み込んだ機能が実現されるものとなる。
だが、自然言語処理が前提となるWatsonだけに、日本語化のハードルは高いのは事実。そこで、日本アイ・ビー・エムは、2015年2月に、Watsonの日本における開発および市場導入に関する戦略的提携をソフトバンクと結び、この1年間、両社のリソースを組み合わせることで、日本語版の開発を急いできた経緯がある。
日本アイ・ビー・エムのポール・与那嶺社長も、「ソフトバンクとの提携によって、短期間で日本語版を提供することができるようになった」と語る。
そして、「米IBM会長であるジニー・ロメッティと、ソフトバンクの孫正義氏との親しい関係がベースにあり、さらに、日本アイ・ビー・エムとソフトバンクのカルチャーにも親和性があることもプラスに働いた。加えて、今後の日本における普及に向けて、パートナー戦略、チャネル戦略が重要になるが、その点でも、ソフトバンクの営業体制を生かすことができる」と、与那嶺社長は期待を寄せる。

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