沖縄の無人リゾート「ナガンヌ島」にソフトバンクは基地局設備を設置し、通話・通信を快適に利用できるよう整備を進めていることを明らかにしました。この「無人島エリア対策プロジェクト」の裏側を見学できるプレスツアーが開催。今回はその模様をレポートします。
一日350人が訪れる無人リゾート「ナガンヌ島」
今回、ソフトバンクが基地局設備を設置したのは、那覇市内から小型船で20分ほどの場所にあるナガンヌ島。夏休みシーズンになると1日約350名が訪れる一大観光スポットです。
いきなり余談ですが、今回島に向かう途中に偶然クジラを見ることができました。普通にホエールウォッチングツアーに参加するとウン千円するので、なんだか得した気分に。
ナガンヌ島は200m×1.7kmの細長いシルエット。両端は県の条例に定められた「特別鳥獣保護区」として指定されているので、立ち入り禁止になっています。そのため、立ち入れるエリアは20分もあれば1周できる本当に小さな島なのです。
早速ドコモ/au/ソフトバンク、それぞれのSIMを挿したスマホを持って島を歩きまわったのですが、実はほとんどの場所で「4G」「LTE」表示です。ただし、これは沖縄本島や近隣の渡嘉敷島からの電波を拾うためです。
しかし、100mほど歩いて島の裏側、メインビーチの方に行くと、通信が不安定になります。海上にポツンと浮かぶナガンヌ島は、色んな場所からの電波をキャッチするために干渉が発生するのです。最初から圏外表示であれば諦めもつくというものですが、「アンテナピクトは問題がないのに通信が安定しない」と言うモヤモヤ状態に陥ります。
そんなわけで今回基地局を設置することになったプロジェクトについて、ソフトバンク西日本モバイルエリア本部の村林さんに色々と話をうかがいました。
――今回はなぜ無人リゾートの電波改善を行おうと思ったのですか?
村林氏(以下同) ビッグデータ解析の結果、西日本でもトップレベルで接続NGログが出ていました。沖縄本島などの人口カバー率を埋める“面”でのエリア構築がある程度進みましたので、今後はこうしたプラスアルファの場所でも快適に使っていただきたいと思い、動くことになりました。
――実際に動き出すまでの期間はどのくらいでしたか?
最初に話が出たのが2年ほど前です。そして、(島を管理する)株式会社とかしきさんや県の協力などもあり、実際に動いたのは半年前からです。
――身も蓋もないことを言ってしまうと、都会の喧騒を離れてゆったりするような無人リゾートに、安定した品質の電波って必要なんでしょうか?
中にはそう思う方もいらっしゃるようですが……。ただ、今の時代ですと、無人リゾートで楽しんでいる様子をすぐSNSにアップしたいという需要もありますし、また災害時の通信手段としての役割も重要だと思います。
――今回はどのような設備を作るのですか?
予算や工事規模の関係から、リピーター(中継機)を使うことにしました。鉄柱を2本立て、1本は本島からの電波を受信。もう1本で電波を増幅して島内に送るのです。
――使う電波の周波数はやはりプラチナバンドの900MHz帯?
はい、電波がよく飛ぶ900MHz帯を使います。3G/4G LTEの両方に対応しています。
――基地局ではなく、リピーターになった理由は?
この島には光回線が来ていないので、基地局を設置する場合は衛星回線を使うことになります。衛星回線は帯域が狭くて速度が出ないですし、また設置する場合も大掛かりな工事が必要になります。実際、本島から電波そのものは届いていたので、今回はリピーターで対応しようと判断しました。
――島は電気もないので発電機を使うようですが、ソーラーパネルなどは使えなかったのですか?
ソーラーパネルで運用する場合、設置スペース取りますし、工事も大掛かりになります。こうした判断で今回は発電機となりました。
――ナガンヌ島は国立公園に指定されているが、鉄柱を立てる際に色々な制限はなかったのですか?
確かに国立公園ではあるのですが、ナガンヌ島は民有地扱いになっているため、島の端の保護区以外は強い制限はありませんでした。ただし、リゾート地ですので景観に配慮して柱は短くしています。
――今後は他の無人リゾートでも電波改善を行なうのか?
今のところ未定ですが、今回のナガンヌ島は条件に恵まれていました。本島からの電波は届くうえに、株式会社とかしきさんには全面協力していただけました。今後も条件さえ揃えば頑張って改善していきたいと思います!
――ありがとうございました!
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現在リピーター設置工事中につき、残念ながら改善後の電波は確認できませんでしたが、島が開かれる4月以降に再チャレンジし、電波の確認とマリンスポーツを楽しみたいと考えています。