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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第345回

スーパーコンピューターの系譜 COMPAQ買収で消えたConvexのExemplar

2016年02月29日 12時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/) 編集●北村/ASCII.jp

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動作周波数あたりの性能が高い
PA-RISCをプロセッサーに採用

 このPA-RISCについては、以前Mercedの回で少し触れただけなので、細かく説明しよう。

 PA-RISCのご先祖様は、HPが1982年に発表したHP 9000/500シリーズというワークステーションに利用されていたFOCUSと呼ばれるプロセッサーである。このFOCUSそのものは純粋にCISCで、Bit Slice方式のStackアーキテクチャーを利用したものである。

 1.5μmプロセスのNMOSで製造され、トランジスタ数は45万、動作周波数は18MHzだったと伝えられている。このFOCUSの性能を上げるべくいろいろ開発していくなかで、RISCを利用して性能を上げよう、という試みが最終的にPA-RISCとなって結実した。ちなみにPAはPrecision Architectureの略である。

 最初に定義されたPA-RISC 1.0は1986年に発表された。これに基づくCPUとしては、TS-1/NS-1/NS-2/PCXの4種類がある。TS-1はある意味本当の試作品のようなもので、8MHz動作、1次キャッシュは128KBという構成で、シングルパイプラインの構成である。

 これをもう少し実用的にすべく作られたのが、動作周波数を30MHzまで上げたNS-1(1987年)と、動作周波数は27.5MHzどまりながら1次キャッシュを1MBに増量し、さらにマルチプロセッサー構成を可能にしたNS-2(1989年)が登場する。

 最終的に1990年にリリースされたPCXは、NS-2に似た構成ながら50MHzまで動作周波数を引き上げる。

 ただこのPA-RISC 1.0に基づくCPUはいろいろ制約が多かった。PA-RISCの命令フォーマットは昔のRISCらしく、主要な命令は1サイクルで実行可能で、マイクロコードは利用せず、命令長は32bit固定。メモリーアクセスはLoad/Store命令のみ、といった具合である。

 レジスターは汎用が32個、シャドウレジスターが7個あり、論理アドレスは48bitとなっている。このあたりは使いやすそうな感じであるが、その一方でメモリー管理ユニットも仮想記憶のサポートもないというのは、本格的なOSを載せるのが極めて困難だった。

 またプロセスの微細化が遅れたこともあり、1次キャッシュやFPUは全部外付けとされている。というわけで、ここまではある意味試作が続いたようなものである。

 このあたりを対策したのが1991年に発表されたPA-RISC 1.1である。大きな違いはメモリー管理ユニットと仮想記憶のサポートだが、この世代からスーパースカラーも実装される。

 1991年に発表されたPA-7000は最初にスーパースカラーに対応した製品で、これはまだパイプラインが1本(動作周波数は66MHz)だが、1992年に登場したPA-7100LC/PA-7150はついに2wayのスーパースカラーが搭載された。といっても、最初はALUとFPUがそれぞれ1本づつの構成であるが。そして、動作周波数も100/125MHzに引き上げられた。

 ちなみにここまでのプロセッサーはいずれも、昔のPentium IIや初代Athlonのようにプロセッサーモジュール上にキャッシュ用SRAMが外付けされている構成である。

 これに続き1994年に登場されたPA-7100LCは低コスト向けということで外付けキャッシュを廃し、その代わりに内部に1KBの1次キャッシュを搭載している(ただし、オプションで外付けキャッシュを利用可能で、これは2次キャッシュ扱いとなる)。

 さらにMAX-1と呼ばれるSIMD拡張命令も追加される。このMAX-1は構成も狙いもx86で言うところのMMXと良く似ており、外部アクセラレーターなしでMPE-1のデコードを可能にするというものだった。

 ただし、MAX-1は1 CPUのワークステーション向けの製品ということで、SMPのサポートは削られているため、SPP 1000は向かないものだった。もっとも開発時期を考えると、1994年登場のPA-7100LCではSPP 1000のリリースには間に合わないのだが。

 さて、これに続いて1995年に登場したのがPA-7200である。こちらは下の画像のように、2本のALUと1本のFPUを持つスーパースカラー構成の製品である。

PA-7200の構造。PA-RISCの場合、パイプラインの詳細などは契約を結んだパートナーにしか公開していないので、この程度のラフな図しか存在しない

 メインとなるキャッシュは相変わらずオフチップ(2次キャッシュ扱い)だが、2KBのアシストキャッシュ(1次キャッシュ扱い)が内蔵されている。

PA-7200のダイ写真。ちなみにダイサイズは14×15mm

 製造プロセスは0.55μmのCMOSプロセスで、およそ126万トランジスタ、動作周波数は最大140MHzだった。このPA-7200の性能を当時の他の製品と比較したのが下の表だ。

PA-7200の性能比較
  SPECint92 SPECfp92
PA-7200 100MHz 141.0 223.9
Alpha 21064 200MHz 138.4 187.6
Pentium Pro 200MHz 366.0 283.2

 ただAlphaはもうこの時期には21164のリリースを予定していたため、ここで大きく性能を引き上げられる予定であった。それでも140MHz動作にすれば、Alphaには拮抗できそうでも、Pentium Proにはまだおよばない感じで、性能不足は明白であった。

 HPはこの後7200のローコスト版として、SMPのサポートを削り、MAX-1を搭載したり(PA-7200にはMAX-1は未搭載)、オンチップキャッシュを128KBまで引き上げたPA-7300LC(最大180MHz)を1996年にリリースした後で、PA-RISC 2.0を発表する。

 PA-RISC 2.0では64bitアドレスがサポートされたほか、ついにアウト・オブ・オーダーの実装を可能にするIRB(Instruction Reorder Buffer)の仕様が追加された。

 またMAX-1はワークステーション用という扱いで、SMPに対応したCPUには未搭載だったが、PA-RISC 2.0ではこれを拡張したMAX-2が標準で入るようになる。これに基づく最初の製品が、やはり1996年に登場したPA-8000である。

 PA-8000は整数演算×4・浮動小数点演算×4・Load/Store×2という10個のパイプラインを持つ4way スーパースカラー/アウト・オブ・オーダーの重厚な構成になった。

PA-8000の構造。64bitのInteger ALU×2とShift/Merge×2が整数演算、FMAC×2とDivide/SQRT×2がどちらも浮動小数点演算となる。相変わらずパイプラインの詳細などは未公開

 プロセスは同社のCMOS-14C(0.5μm CMOS)を利用し、動作周波数は最大180MHzとされた。

PA-8000の概要。ちなみに外部バス(Runway Bus)は120MHz/64bit幅だった

ダイレイアウト。もともとPA-RISCはキャッシュを持たない(メモリーに高速アクセスできればキャッシュは必要ない)ポリシーであり、それもあってチップ上にはキャッシュが存在しない

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