今回のことば
「パナソニックは、テレビ事業において、ソニー型ともいえる手の打ち方をする必要がある。それが黒字化につながる」(パナソニック・津賀一宏社長)
パナソニックが、8年ぶりのテレビ事業の黒字化に向けて、いよいよ最終コーナーを回り始めた。
パナソニック・津賀一宏社長は、2015年度のテレビ事業の黒字化を必達目標に掲げている。テレビ事業は、第2四半期(2015年7~9月)には5億円の黒字となったものの、第1四半期(2015年4~6月)の30億円の赤字が残り、上期累計(2015年4~9月)では約25億円の赤字という状況。2月にも発表が予定されている第3四半期(2015年10~12月)決算と、すでに突入している第4四半期(2016年1~3月)で、どこまで巻き返すことができるかが鍵になる。
だが、黒字体質へと着実に転換してきているのは明らかだ。
4Kテレビのプレミアムモデルが売れている
日本市場向けには、4Kテレビを中心とした事業体制へとシフト。これが成果をあげている。GfK JAPANの調べによると、2015年4月~11月の国内4Kテレビ市場において、パナソニックはトップシェアを獲得。さらに、4Kテレビのプレミアムモデル「CX800シリーズ」の販売台数が、4Kテレビの普及モデルである「CX700シリーズ」の販売台数を上回る結果も出ているという。
パナソニック アプライアンス社テレビ事業部・品田正弘事業部長は、「パナソニックのテレビ事業の主戦場である日本は、どうしても数を追わなくてはならない状況にあった。だが、2015年度は、大胆に高付加価値戦略へとシフトした。販売金額の5割以上が4Kテレビになっている」とする。
さらにアジア市場においては、現地主導型のAPアジアの裁量を増やし、現地での迅速な対応を実現。「現地での決断が遅れ、在庫を増やし、その結果、処分のための費用がかかるといった悪循環がなくなった。アジアでも黒字化している」とする。2016年は、APアジアによって企画されたアジア発の製品も投入する予定であり、これによって、アジア市場における成長戦略に踏み出す予定だ。
そして、欧州市場においては、有機ELテレビ「CZ950」を先行して発売。欧州市場から高い評価を得ているという。
「欧州市場はプラズマテレビ撤退のダメージが一番大きかった市場。それをリカバリーするための製品が有機ELテレビ。CZ950によって、これがパナソニックのテレビのフィロソフィーである、という理解を市場から得ることができた」と品田事業部長は胸を張る。
先頃、米ラスベガスで開催されたCES 2016で発表した液晶テレビのフラッグシップモデル「DX900」は、Ultra HD Premiumに準拠。「液晶テレビでありながら、有機ELテレビに匹敵する画質を実現しており、ここでもパナソニックのテレビ技術を市場に訴求できる」と自信をみせる。DX900は、今年春には、日本および欧州で発売する予定だ。
このように、日本、アジア、欧州という、同社のテレビ事業における重点市場において、この1年で大きな変革が進められたといえよう。「2015年は黒字基調が確立できた。2016年は、これを固める1年になる」(品田事業部長)とする。
だが、最終コーナーを回った2015年度のテレビ事業の黒字化に向けて、津賀社長は手綱を締めることを忘れない。
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